2024年11月18日( 月 )

TATERU改ざん問題の本質を探る(後)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

冬ごもり準備か、販売ゼロでも資金潤沢

 TATERUは今年5月、公募増資により130億円以上を調達していた。これにより中間決算時点で188億円の現預金を計上。問題発覚後の9月10日には、証券会社を通じた市場外での取引で、TATERUが所有していた(株)GAテクノロジーの株式すべてをSBI証券へ売却。23億4,000万円の売却益を得た(不動産業のGAテクノロジーは、今年7月に東証マザーズ市場へ上場しており、SBI証券は両社の主幹事だった)。

 5月の公募増資、9月の売却益によりTATERUのキャッシュは潤沢だ。借入金も少なく、在庫がすべて売れずともすぐに資金繰りが行き詰まることは考えにくい。さらに、在庫は自社所有のアパートとすることができるほか、一部はクラウドファンディングにより小口で売却することも可能とみられる。しかし、ここまで大きく「改ざん」が報じられ、同社もそれを認めたことから、これまでのようなアパート販売の復活は困難を極めるだろう。
 木造アパートは一般的に新築から年数を経るごとに収益力が低下する。目安として10年を越えると賃料とともに入居率が下がる。立地に競争力がなければなおさらだ。「高い入居率」を標榜する新規アパート業者も業歴を重ねていくうちに同じ謳い文句で売ることが難しくなってくる。長期間にわたって右肩上がりの業績を維持するためにはアパート販売だけでは困難なのだ。

 TATERUも例外ではなく、クラウドファンディングやIoT、民泊事業に着手し、アパート販売に頼らないビジネスモデルへの転換を図っていた。実際に、18年12月期の中間決算ではこれらの収益を前年同期比で大きく伸ばし、事業の柱としつつある。しかし、いずれも「アパート」を中心に据えたものであり、どこかで再転換が必要になっていただろう。

いまだ会見予定なし、どう出る古木社長

▲古木 大咲 社長

 「IT×不動産」とはいったものの、単身者向けアパートという商品自体は伝統的な木造アパートとほとんど変わらない。同社の事業を「詐欺的スキーム」とまで断罪するのは難しいだろう。投資家は自ら融資に必要な書類を用意し、「銀行に融資を依頼」した結果、願いは叶い融資が承認されたのだ。しかし、その過程(ここでは残高の改ざん)を知った投資家はそれをよしとしなかったというだけだ。

 事業体としてのTATERUとかぼちゃの馬車の違いは、事業の継続を前提としていたか否か。かぼちゃの馬車は短期間で逃げ切る戦法だったが、TATERUは曲がりなりにも東証一部上場企業だ。当然、事業の継続を前提にしている。
 イチ営業マンの独断にして、組織ぐるみではなかったと逃れるのは無理筋だ。対症療法的な再発防止策は発表したものの、依然として古木社長による会見は開催されるかさえ明らかにされていない。
 TATERUの件が、かぼちゃの馬車の件と大きく異なるのは、今のところ改ざんで直接的に「損した者がいない」というところであり、下げすぎた株価を調整するように、18日からTATERUの株価は上昇傾向で推移してきた。しかし、事業を継続し、「改ざん」のイメージを払拭するためには、古木社長自ら株主や取引先、顧客に対してしっかりと説明する必要がある。

※クリックで拡大

(了)
【永上 隼人】

(中)

関連キーワード

関連記事