2024年11月27日( 水 )

検察の冒険「日産ゴーン事件」(9)

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青沼隆郎の法律講座 第20回

呆れた検察の逮捕理由

■NHKニュース

 11月29日夜のNHKニュースはゴーンらの逮捕理由について検察の見解として次のように報道した。

(1)有価証券報告書の取締役報酬については将来にわたるものであっても確定した取締役報酬については記載義務があること
(2)ゴーンは一定の範囲内で取締役報酬の決定権限を有していたこと

 以上の事実を根拠に、ゴーンが自己に対する将来の取締役報酬を決定したことは確定した取締役報酬となり、それを記載しなかったから、有価証券報告書虚偽記載罪での逮捕は正当である

検察の見解はゴーン逮捕を正当化する恣意的法令解釈である

 取締役報酬総額は株主総会決議事項である。1年事業期間制でなく、たとえば4半期事業期間決算制をとる会社の場合は、各四半期ごとに取締役報酬総額を決定承認するから、第一四半期の取締役報酬総額のなかから第二四半期以降の事業期間における取締役報酬を決定することは基本の株主総会の決議に違反する。よって、違法無効な取締役報酬となる。まして株主総会の決議の時間的有効範囲は1年間であるから、それを超えて次年度以降の不特定期間(ゴーンの退任時は不特定時期である)に支給する取締役報酬は明らかに違法無効である。確定とは単に金額のみならず、その支給時期も確定されなければならないことは当然である。

 さらに、ゴーンが代表取締役として一定の範囲で取締役報酬の決定権限を委任されていたとしても、自分自身に対する取締役報酬の決定権限はない。それは明らかに会社と取締役との報酬支払契約について双方代理・自己契約を認めるもので、公序良俗に反し、違法無効である。

 本来なら法令順守義務のある公務員たる検察官が、逮捕を正当化するため、法令解釈を恣意的に行ったのであるから、重大な公権力の違法行使として、ゴーンらに国家賠償責任を負うことは明らかである。

(つづく)

<プロフィール>
青沼 隆郎(あおぬま・たかお)

福岡県大牟田市出身。東京大学法学士。長年、医療機関で法務責任者を務め、数多くの医療訴訟を経験。医療関連の法務業務を受託する小六研究所の代表を務める。

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