2024年12月22日( 日 )

コンビニ市場、成長に陰り~コロナ禍で問われる真の実力(前)

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 小売業界のなかで数少ない成長業態、コンビニエンスストアに変調の兆しが表れている。2019年、国内店舗数が減少に転じたのである。成長を牽引してきた(株)セブン-イレブン・ジャパン、(株)ファミリーマート、(株)ローソンの大手3社の出店抑制と閉店加速がその要因だ。コンビニは昨年、人手不足による24時間営業をめぐる本部と加盟店の問題が表面化した。足元では新型コロナウイルスが直撃する。コンビニは真価を発揮できるのか。 

外出自粛、在宅勤務で3、4月は既存店が苦戦

 新型コロナがコンビニを直撃している。既存店の状況をみると一目瞭然だ。既存店とは開店して1年以上経過した店舗のこと。その売上伸び率は成長力の物差しの1つで、収益にも直結する。新型コロナ感染が拡大していった今年3月、4月の大手3社の既存店売上は前年同月比マイナス成長となった。

 セブン-イレブンは昨年10月からプラス成長をキープしていたが、3月96.8%、4月95.0%と落ち込んだ。ファミリーマートとローソンの落ち込みはそれよりも大きく、ファミリーマートが3月92.4%、4月85.2%、ローソンが3月94.8%、4月88.5%と、4月はかつてない減少となった。

 落ち込みの原因はオフィス街や行楽地などにある店舗の売上減少だ。「生活必需品を中心にそろえるコンビニは非常時に影響の小さい業態だが、オフィス立地や行楽立地の店舗を中心に客数が減少している。一方、住宅立地の店舗売上は伸長している」(セブン-イレブン・井阪隆一社長)。オフィス街や行楽地にある店舗で客足が鈍っているのは、ファミリーマートやローソンでも同様だ。

 コンビニはオフィス街に多くの店舗を構える。緊急事態宣言が4月7日に7都道府県に出され、その後対象地域が全国に拡大された。外出自粛や在宅勤務が拡大し、都心部の昼間人口が減少したため客数が減少し、売上に影響を受けることになったのである。

 ちなみに、同じ食品を扱うスーパーマーケットは、外出自粛による内食需要の高まりで販売好調だ。大手の既存店売上高前期比をみると、(株)ライフコーポレーションが3月106.9%、4月115%、(株)ヤオコーが3月112.9%、4月118.8%、ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(株)が3月107.9%、4月111.3%と、どこも前年同月を大きく上回る数値を残している。食品や日用品などを扱い、同じ生活インフラであるコンビニとスーパーだが、明暗がわかれた。

 コンビニのビジネスは危機に強いと見られてきた。東日本大震災時には、自前のサプライチェーンの強みを生かして、消費者の需要を満たす商品を提供し、好業績につなげた。しかしコロナ禍という危機を前にその強さを発揮できていない。

出店抑制と閉店加速で昨年は国内店舗数が減少

 このように足元では新型コロナの影響を受けるコンビニだが、実は昨年から変調の兆しが表れている。コンビニはこれまで国内小売業のなかで数少ない成長業態だったが、その成長に陰りが見え始めているのだ。

 大手スーパーなどが加盟する日本チェーンストア協会会員企業の全店売上高はこの10年間、13兆円前後で横ばいを続けている。百貨店に至ってはここ数年6兆円割れが続き、市場規模は1991年のピーク時から4割縮小した(〈一社〉日本百貨店協会)。これに対して、右肩上がりで店舗売上高と店舗数を伸ばしてきたのがコンビニであった。

 とくに成長が加速しているのが2011年以降だ。それまで年間の店舗増加数は1,000店舗に満たなかったが、11年に初めて1,000店舗を超えた。12年から14年までは毎年2,500店舗前後の増加が続いた(〈一社〉日本フランチャイズチェーン協会)。

 店舗数の増加にともない店舗売上高も伸びていく。11年の年間増加額は6,000億円超。その後も3,000億円から4,000億円超の年間増加額を続けていった。店舗数は14年に5万店舗を超え、店舗売上高は15年に大台の10兆円に乗せた。

 その後も店舗数、店舗売上高ともに伸びていくが、勢いは鈍化していった。そして19年、店舗数が前年よりも減少した。店舗数が減少に転じたのは、05年に現行の統計を取り始めて以降、初めてのことだ。店舗数は5万5620店舗、店舗売上高は11兆1,607億円。店舗数は18年に比べて123店舗減少。店舗売上高は18年に比べて約2,000億円の増加にとどまった。

 こうしたコンビニ市場に影響をおよぼすのがセブン-イレブン、ファミリーマート、ローソンの大手3社だ。コンビニ市場はこれら3社の寡占化状態にあり、11兆円市場の9割がこの3社で占められる。この3社がどう動くかで市場が変わるのだ。

 19年に店舗数が減少したのは、3社の出店を抑制し不採算店舗の閉店を増やしたためだ。各社の19年度の出店数をみると、セブン-イレブンは743店舗を出店し703店舗を閉店、ファミリーマートは448店舗を出店し275店舗を閉店、ローソンは554店舗を出店し769店舗を閉店した。セブン-イレブン40店舗増、ファミリーマート173店舗増、ローソン 215店舗減となり3社計で2店舗の減少となった。

 これがいかに異例の水準なのかを示すのが、それまでの出店数である。

 セブン-イレブンをみてみよう。同社は群を抜く大量出店を続けてきた。とくに出店のアクセルを踏み込んだのが11年度からである。それまでの年間出店数は800~900店舗だったが、11年度は約1200店舗に達する。それ以後は、1500~1600店舗へとさらに増え、純増数だけで1000店舗を超えた。しかし、16年度から閉店数が増え、純増数は減少していく。16、17年度の純増数は800店舗強、そして18年度は600店舗強に減少した。

 ファミリーマートは、セブン-イレブンが出店を加速した時期に後れをとるまいと1,000店舗規模の出店を続けた。しかし、16年9月に同業の(株)サークルKサンクスとの統合以降は出店を抑制。統合で店舗数が1万店舗強から1万7,000店舗ほどに増えたものの、不採算店舗の閉店を進めたことで19年度の店舗数は1万5,000店舗強にまで減少した。ローソンの出店数も16、17、18年度1,000店舗を超えていたが、19年度に半減し、閉店数も増えたため店舗数が純減となった。

 大手3社が牽引し右肩上がりで市場成長を遂げてきたコンビニは今、曲がり角に差しかかっている。

(つづく)

【本城 優作】

(中)

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