2024年11月22日( 金 )

コンビニ市場、成長に陰り~コロナ禍で問われる真の実力(後)

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 小売業界のなかで数少ない成長業態、コンビニエンスストアに変調の兆しが表れている。2019年、国内店舗数が減少に転じたのである。成長を牽引してきた(株)セブン-イレブン・ジャパン、(株)ファミリーマート、(株)ローソンの大手3社の出店抑制と閉店加速がその要因だ。コンビニは昨年、人手不足による24時間営業をめぐる本部と加盟店の問題が表面化した。足元では新型コロナウイルスが直撃する。コンビニは真価を発揮できるのか。 

大手3社そろって加盟店支援を強化

 では、コロナ禍が直撃する今年度(20年度)はどうか。
 出店計画については3社とも公表していないが、19年度の出店抑制が続く可能性が高い。セブン-イレブンは昨年来、自社の出店基準を厳格化しており、不採算店舗をつくらないように出店を絞り込むとともに、不採算店舗の閉店を加速する方向だ。ファミリーマートもローソンも積極的な出店施策をとることはないだろう。19年に続いて20年の国内コンビニ店舗数が減少してもおかしくはない。

 各社が出店抑制に向かうなか重点をおくのが、昨年来、力を入れている加盟店支援だ。

 セブン-イレブンは加盟店支援策として、冷凍食品や弁当・総菜の売り場を拡張した新しい売り場レイアウトへの改装スピードを上げる。新レイアウトによる売上増が見込めるため今年度末までに1万5,000店舗で改装を完了させる予定だ。弁当・総菜などの廃棄ロスについては5月中旬から、販売期限が近づいた商品に5%分のナナコポイントを提供するエシカルプロジェクトを全国で開始した。食品ロスを減らすとともに、店舗の主要経費の1つである廃棄ロスを削減するのが狙いだ。先行していた北海道、九州では日販(1日1店あたりの売上)約2,000円増、廃棄ロス約2,000円減という効果が表れたという。また、昨年発表していた加盟店利益が年間約50万円増となるインセンティブ・チャージ見直しを今年度から開始している。

 ファミリーマートは、新たな加盟店支援策として今年度110億円を充てる。内訳は、複数店奨励金および再契約奨励金制度の拡充で60億円、24時間営業分担金(現行の10万3,000円から12万円に増額)で30億円、廃棄ロス分担金制度の改定で20億円だ。また、時短営業については昨年620店舗で実験した結果を加盟店に説明し、今年6月から開始する予定だ。
 収益力強化策として取り組むのが、低収益店舗の再生、再フランチャイズ化だ。16年のサークルKサンクスとの統合以降、不振店舗の閉店を進めてきたが、まだ残っている不振店舗を直営化してテコ入れし、再加盟店化していく計画だ。テコ入れの専門組織として加藤利夫副社長直轄の「店舗再生本部」(東日本・西日本)を3月に立ち上げており、300~500店舗の再加盟店化に取り組むとしている。

 ファミリーマートは人員適正化のため、今年2月希望退職を募集した。募集人数約800人を上回る1,111人から応募があったが、最終的に1,025人(全社員の約15%)が退職した。16年のサークルKサンクスとの統合以降、不採算店舗の閉店を進めてきたため、加盟店の経営指導にあたるスーパーバイザーに余剰感があった。20年度以降、年間約80億円の経費減につながるとしており、これを加盟店の支援に充てる。

 ローソンは加盟店利益の拡大に昨年から取り組んできた。その1つが、朝・昼の売上につながる前日夕夜間(17~24時)の品ぞろえ強化だ。一方で人件費、水道光熱費、廃棄ロスを引き下げ、店舗の利益拡大を図ってきた。19年度は既存店売上高がプラス成長となり、廃棄高を前年度比10%減するなどして店舗の利益拡大につなげた。今年度は新たな施策として、加盟店利益を本部の評価指標にした。全社員の賞与を決めるにあたって、加盟店利益という定量指標に基づいて評価するという。
 不祥事が相次いだセブン、新しい姿を示せるか

 昨年、最大手のセブン-イレブンは相次ぐ不祥事に揺れた。
 7月に開始したQRコード決済サービス「セブン・ペイ」で、一部のアカウントが第三者に不正アクセスされる被害が発覚した。運営会社の(株)セブン・ペイが謝罪会見。9月にサービス終了に追い込まれた。  11月には、本部社員が加盟店でおでんを無断発注していたとして、加盟店指導員2人を懲戒処分とした。本部と加盟店は独立した経営主体であるため、発注権限をもつのは加盟店だ。そのため本部社員による発注は社内規定で禁止されていた。
 12月には、加盟店で働くパート・アルバイトに対して、残業代の一部が支払われていなかったと発表し、セブン-イレブン・永松文彦社長が謝罪した。対象は約8,000店舗の約3万人。未払い額は4.9億円に上る。

 16年、セブン-イレブンを育てた鈴木敏文氏が電撃退任した後、セブン-イレブンはそれまでの鈴木独裁といわれた中央集権的な経営体質からどう転換するか方向感が定まっていない。相次ぐ不祥事はその表れか。最大手セブン-イレブンの一挙手一投足は、良くも悪くもコンビニ業界全体のイメージを左右する。数々のイノベーションを起こしてきたセブン-イレブンは、今こそ新しい姿を見せる必要があるだろう。

(了)

【本城 優作】

(中)

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