リスクヘッジ時代、キーワードは「withコロナ」~模索する新しい働き方(中)
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新型コロナウイルスの感染拡大で自宅勤務やテレワーク化が急速に進み、この数カ月で働き方は大きな変化を遂げた。人口減や少子化、労働力減少などの余波で崩れかけていた従来の終身雇用型の労働モデルは、コロナ禍でさらに崩壊のスピードを加速している。働き方は今後どう変化していくのか。企業の動向や新しい動きに着目しながら考察する。
ウィズコロナ時代の新しい動向
全国的に発令されていた緊急事態宣言が解除された後、働き方は企業の判断に委ねられることになった。平常時の勤務形態に戻した企業もあれば、テレワークや時差出勤などのコロナ禍のスタイルをそのまま、あるいは一部継続する企業もある。
東京都渋谷区に本社を構え、福岡にも支社を置くIT企業・GMOインターネットグループのGMOペパボは、緊急事態宣言が解除された後もテレワーク化を推進した企業の1つだ。同社は6月1日から全従業員を対象に、テレワークを基本とした勤務体制へ移行すると発表し、働き手の多様な働き方を実現するために制度の充実や仕組みの構築を実施するとした。
こうした動きが全国的に見られるなか、空室利活用サービスを推進する福岡市のベンチャー企業・tsumugが発起人となって4月16日に「New Norm Consortium(ニューノーム・コンソーシアム)」が発足した。withコロナ時代到来を契機に、働き方や暮らし方を新たな視点で調査、研究開発、社会実装することを目的とした新しい動きだ。賛同者であるシャープや電通、CAMPFIREなど28社6名の企業と個人が連携し、新しい働き方と暮らし方へのガイドライン策定に臨む。
4月28日には、同団体が主催するイベントとして、YouTube Liveを使った「New Norm Meeting Vol.1」を開催。オフィスや働き方、キャリア、大学など多様な領域での「新しい当たり前」についてセッションを行い、これからの働き方や社会の在り方にアプローチした。
セッション内では、「働き方のニューノーマルに関する大きな動きは、コミュニティーとキャリアの在り方の変容だ」と指摘された。コミュニティーは所属組織の肩書をベースとした「フォルダ型」から、プロジェクトベースの「ハッシュタグ型」へ。キャリアについては、組織に所属する従来の「メンバーシップ型」から、プロジェクトにコミットして働く「ジョブ型」への移行が加速するという。
「組織の立ち上げ自体すべてオンラインで実施され、わずか10日で完了したことも驚きでした。再生回数1,700回、同時再生人数500人以上という大規模なイベントになりましたが、運用人数はわずか4名だけ。本来ならば倍以上の時間や人手を要するはずですが、その前提さえももはや崩れるのかもしれません」と、tsumugの代表取締役・牧田恵里さんは話す。
「登壇者も参加者も移動などの拘束時間が少ないため、オフラインのイベントより気軽に参加できたという声をいただきました。第2回目までの開催時点で会社員、経営者、学生と参加者の属性・年齢はさまざまですが、『これからの働き方』というテーマがそれぞれにとって〈自分ゴト〉として捉えられている実感がありました」と実施の実感を述べるのは、tsumugの広報担当で、同コンソーシアム事務局にも籍を置く古田和歌子さんだ。「New Norm Meeting」は、今後もオンラインで月に1度開催される予定だ。
分散型オフィスの増加、働く場所はより多様に
ウイルスとの共存が前提となった今でも、人々の考えや社会の潮流は絶えず変化し続けている。その変化に合わせて、働き方や働く場所も急速に進化して当然だろう。
tsumugが昨年10月から全国で展開する小規模ワークスペース「TiNK Desk」は、多機能型のユニットスペースを用途によってカスタマイズできる空間提供サービスだ。今年4月からは、法人専用のワークスペース「TiNK VPO」を展開する。
「コロナ禍の影響で、不特定多数とスペースをシェアするオフィスのニーズは、分散型あるいはサテライト型など、人の出入りが管理できて無人で運用できる形態へ変わりつつあります。当社が展開するようなサービスが拡充し、働く場所の選択肢が増える一方で、オフィスの機能や会議の目的など、より本質的な議論が活発になると考えられます」と、牧田さんは今後の動向を予測する。
同社は地場デベロッパー大手の福岡地所と協業し、ホテルやマンションの一部をテレワーク用に改装して貸し出す新規事業に乗り出すと5月末に発表した。第1号として、福岡市早良区内で同社グループが運営する「ザ・レジデンシャルスイート・福岡」をオフィス仕様に改装して7月から運用をスタート。福岡市内のホテルやマンションなど、本年度中に合わせて100室の開設を目指す。宿泊客の減少に悩むホテル事業者の課題と働く場所のニーズがマッチすれば、双方にとってメリットがある事業だ。
こうした動きは、新型コロナ禍が新ビジネスの発芽を促しているようにも見える。働く場所の選択肢が増えれば、それにともない住む場所の選択肢も多様化する。これまでは通勤をベースに住む場所を選んでいたが、出社せずに仕事ができるようになれば、利便性の高い都市圏よりも自然が豊かでゆったりと暮らせる地方を選ぶ人が増えるはずだ。地方への移住増加で地方の都市開発が進めば、これまで都市圏に集中していた本社機能をいかに分散させ、効率化するかの仕組みづくりも求められる。
(つづく)
【構成・文:チカラ・安永 真由】
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