【王毅外相の訪日】約9カ月ぶりの日中政府高官直接会談、習近平の国賓訪日は
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習近平国賓訪日は進展なしか
24日、中国の王毅国務委員(副首相級)兼外相が訪日し、茂木敏充外相との会談、翌25日に菅義偉首相への表敬訪問などを行った。2月に楊潔篪中国共産党政治局委員(外交担当トップ、前外相)が来日して以降、約9カ月ぶりの日中政府高官の直接の会談となった。
王毅の訪日計画については10月に報じられた後、中国の国内のスケジュールの都合などもあってか具体的な日程が発表されないままでいたが、20日ころになって突如24日の訪日が発表された。
この数カ月の間に、中国をとりまく国際環境は厳しくなった。米国との緊張は増しており、インド、オーストラリアなどとも緊張が生じている。対日関係はといえば、習近平中国国家主席の国賓待遇での訪日が事実上棚上げされた状態となっている。中国公船の尖閣諸島の接続海域への入域も頻繁に行われ、85日連続で同諸島周辺海域において中国公船が確認されている(11月30日時点)。
そのようななかで、実現した日中外相会談、希望したのは中国側であったという。中国にとっては、日中関係を従来どおりに発展させていくことはもちろん、米国などとの緊張が緩和されないなか、日本との関係を強化することにより、米国主導の対中国包囲網の形成を阻止したいとの思惑があってのことであろう。
今回の訪日において、中国側にとってもっとも期待していたことの1つは習近平中国国家主席の訪日スケジュールの確定であろう。結論からいうと、両国政府の発表では触れられておらず、具体的な進展はなかったようだ。自民党内での反対意見が根強い案件であり、かつ米国などが懸念を抱く恐れもあるため、就任して間もない菅首相にとってリスクの大きい案件であり、予想通りといえる。
中国は日中間の一致を強調
中国外交部サイトや政府系メディアでは、この訪日で両国が新型コロナ対策、経済復興、オリンピック(東京および北京)などでの協力について意見の一致をみたなどのアピールがなされたほか、尖閣諸島の領有権に対する主張が繰り返されているが、習近平の訪日については特段の記述はなされていない。
習近平は新型コロナにもかかわらず国内の権力基盤を維持し、明確な後継者を据えておらず、2年後の共産党大会での総書記続投(あるいは党主席などのポスト新設)が予想される。日本に国賓として招待されることは習近平自身の拍付けにもつながり、日米間に楔を打つという意味ももつ。今回の外相会談で2021年の開催が決まった日中ハイレベル経済対話(外相・経産相など経済閣僚対話)などを通して実務的な関係を深めつつも、中国側は引き続き習近平の国賓訪日の実現を求めてくるであろう。
日本政府には、両国間の懸案事項を政府間で管理できる体制、たとえば尖閣諸島周辺海域での突発事態発生時の危機管理メカニズムなどについて、世論が納得できるよう整えることが求められる。折しも中国は国会に相当する全人代で海上警備を担う中国海警局に武器使用を認める海警法の制定に取りかかっており、早ければ12月にも採択される。
なお、その訪日に際し、今後の日中関係を規定するとともに、習近平が自身の功績として誇れるような具体的な成果を求めるはずだ。昨年から議論がなされていると報じられていた第5の政治文書がその1つである。今回の外相会談では、従来どおり「4つの政治文書※を踏まえて」と言及されているのみで、それ以上の話し合いがなされたかは不明だ。
※4つの政治文書:1972年の共同声明、78年の平和友好条約、98年の日中共同宣言、現在の戦略的互恵関係を掲げた2008年の共同声明
【茅野 雅弘】
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