2024年11月24日( 日 )

【凡学一生の優しい法律学】憲法改正の基礎知識(前)

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予感

 総理大臣が憲法改正論者の安倍晋三氏から菅義偉氏に交替した今となっては、憲法改正について、基礎知識全般を声高に解説する必要はないかもしれない。しかし、日本がますます無法国家にならないよう、警鐘を鳴らす必要がある。

1 法律改正と憲法改正

 同じ国家規範でありながら、法律と憲法との違いの1つは改正手続きにある。日本国憲法は改正が困難な条件にしてあり、硬性憲法に分類される。つまり、憲法自身に改正手続が規定されており、それは各議院の国会議員の総数の3分の2の賛成を得て、発議し、国民投票に付し、過半数の賛成を得なければならない。法律は国会、とくに衆議院の過半数で基本的に成立する。

2 憲法の制定と改正は本質が異なる場合がある

 法律も憲法も国家を支配する権力者によって制定される。これは国家規範の制定を政治学的視点で述べたもので、正統的法律解釈学には存在しない視座である。

 日本は敗戦によって戦勝国(その代表者GHQ)によって明治憲法が廃止され日本国憲法が制定された。ただし、法技術的には明治憲法の定める改正手続に則った形式であるため、GHQが全面にでることはなかった。憲法施行後半世紀以上の時が経過した現在、事実上の憲法改正権者は国会(衆議院)の過半数を制する政党(現在は自民党)にある。GHQは消滅した。つまり、制定権者と改正権者に同一性はない。これも日本の特殊な憲法事情である。

3 憲法改正に関する2つの主張論の系譜

 東京大学法学部教授らいわゆる権威と称される学者群によって構築された憲法解釈学の系譜と、主に政治家や評論家らによって構築された実践的憲法解釈論―主として日本国憲法がGHQの主導により明治憲法を換骨奪胎して成立した経緯を問題だとするいわゆる「外国製憲法」論である。前者の権威主義学説は当然ながら憲法条文全体について考察するが、後者の論者は主として憲法第9条の改正のみを議論する、際立った特徴の差異がある。

 現在の政治状況としては、外国製憲法論者が多数を占める政治家(自民党)主導の憲法改正運動である。国民は最初から最後まで「蚊帳の外」におかれた憲法改正議論である。その最大の原因は国民がまともな憲法教育を受けていないからである。この憲法について完全に無知な国民に○×のみの応答をさせる憲法改正手続が議論されてきた。その例が最高裁判所裁判官(信任)投票(国民審査)であり、改正主張政治家らは幾度も成功体験を味わってきており、国会の発議にまで至れば事実上の改正が達成されると考えている。

 ここにも日本の民主主義の否定・不存在が垣間見える。

4 改正論の選択

 本来なら日本国憲法全般にわたり必要な改正論を展開するのが正道であるが、憲法の知識や素養が不足している一般国民が大多数という現実を直視するなら、最初に論点となっている第9条改正に関する基本知識を学ぶのがよいだろう。

(つづく)

(後)

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