2024年12月22日( 日 )

【IR福岡誘致特別連載22】IR長崎、香港ジャンケット投資企業と米国Moheganが提携か?

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 長崎県行政におけるハウステンボスにIRを誘致開発するためのRFP(提案依頼書)公開入札の申請締切日であった28日を機に、各マスコミが、香港中華系ジャンケット投資企業Oshidori International Development(金融不動産開発企業)と米国ゲーミングオペレーター企業Mohegan Gaming&Entertainmentの提携を報道した。

 Oshidoriはこの日に自社でプレス発表を行い、Moheganもこれに追随して、自社のホームページで同日に発表を行った。

 今回は、この報道の経緯と内容を詳しく解説する。ぜひとも、当該地である長崎県行政やその関係者も参考にしていただきたい。

 結論からいうと、この提携の話は事実であるが、実際には香港中華系のOsidoriが主導権をもっており、この報道は公平で均衡を保ったプロジェクト提携を装うという演出である。そのため、実際は限られた一部のオペレーションのみを米国企業のMoheganが担当するという、極めて偏ったIRプロジェクト提携話である。

 よく知られているように、MoheganはIR和歌山や北海道苫小牧市のIRにも参加したが、それらすべてから撤退している。IR福岡関係者とも面識がある。また、世界的な新型コロナウイルス感染拡大により、韓国・仁川で現在進行中のインスパイア・プロジェクトが大打撃を受けている。その再開の目途は不透明であり、米国本社を含めて財政難にある。

 IR長崎の誘致開発事業については、安倍・トランプ密約により米中覇権争いの問題は避けて通れず、加えてファーウェイ問題に代表される「安全保障問題」を抜きにしては考えられない。

 トランプ元大統領からバイデン新大統領の政権になっても、米中の覇権争いはますます過激になっている。そのため、習近平国家主席に近い香港中華系企業がIR長崎の主導権をもつと表明すると、安全保障問題の観点からも、菅政権、国からの了承をまず得られない可能性があることを懸念して、米国企業との提携を報道したと考えられる。

 もし反対に米国企業Moheganが主導権をもつプロジェクトであれば、まだ可能性はあるが、Moheganにその資金的な余裕は一切ない。失敗に失敗を重ねた末に、見境なく判断した結果としての中華系企業に相乗りする提携話なのだ。そのため、国内の本件関係者は、この事情を熟知している。

 さらに、IR長崎でもっとも肝心なことは、今回の RFPにおける将来のIR長崎事業母体であるコンソーシアムの構成、設立条件である。国は、主たる海外投資企業と国内大手デベロッパー、地元財界企業の共同事業体を設立することと指導している。具体的には、大規模な施設開発における巨額なエクイティ(株主資本)を、上記の3社で公平かつ均衡に保有、負担することとして指導している。これがIR開発の基本的条件として、とても重要なのである。

 しかし、これがいまだに表に出てきていない。ましてや、九州経済(連)および七社会をはじめとする福岡財界関係者などへの事前協力依頼はしているものの、事実上は、J R九州相談役の石原進氏以外は、誰もが表向きだけの協力姿勢だ。過去のハウステンボスの歴史も十分熟知しているため、IR長崎が本当に実現するとは一切考えておらず、地元財界も、いったいどの国内メジャー企業が参加するのかと見ているだけである。ほぼ間違いなく、参加企業は今後も出てはこないだろう。

 すでに、説明しているように、日本では、IR大阪におけるオリックス(株)宮内義彦氏の如くIR開発事業の主たる国内企業の“錦の御旗”がなければ、いずれの行政もIR開発は実現できないのである。長崎・佐世保のIR開発には、この“錦の御旗”がない。地元企業の(株)ジャパネットホールディングスも、ハウステンボスの既存のオーナーであるHISも参加していない。中華系のOsidoriが1社で主導権をもつ体制では信頼性がおけず、参加する国内企業は皆無である。

 今後は、候補地としてIR大阪に民間で先行するIR福岡が、どのような“錦の御旗”を挙げられるかにかかっている。結論として、コロナ収束後の観光客に頼ることのない各種の条件(後背地人口や既設インフラ設備の充実度など)が揃わなければ、この2つの候補地以外には、いずれの自治体もIR誘致開発の可能性はないと断言できる。

 最後に、HISに支払うハウステンボス隣接地の土地購入費約200億円や、新たなインフラ整備費用140億円の負担増などに関して、長崎県と佐世保市行政の関係者は錯覚しているが、コロナ禍の海外投資企業にその資金を負担する余裕は一切ない。

【青木 義彦】

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