2024年11月13日( 水 )

アビスパ、高いJ1の壁に苦杯 福岡1-2名古屋

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 サッカーJ1リーグのアビスパ福岡は2月28日、ホームのベスト電器スタジアムに名古屋グランパスを迎え、シーズン第1節の試合を行った。

 5年かけてたどり着いた待望のトップカテゴリー、J1。対戦相手は2017年のJ1昇格プレーオフでアビスパの前に立ちはだかった名古屋グランパスと、開幕戦としては最高の舞台となった。

 アビスパの先発メンバーには、昨季昇格の立役者となったキャプテンMF前寛之、DFエミル・サロモンソン、DFドウグラス・グローリ、FWフアンマ・デルガドらに加え、J1での戦いを肌で知る新戦力としてDF志知孝明(横浜FCより加入)、FWブルーノ・メンデス(セレッソ大阪から加入)が名を連ねた。「年間勝ち点50以上、順位は10位以上」を目標に掲げる2021年の長谷部アビスパの戦いが、いよいよスタートする。

 しかし、そのアビスパイレブンに強烈な「J1の洗礼」が襲いかかる。前半4分、名古屋FW相馬勇紀が高速ドリブルで左サイドを突破すると、MFマテウスが中央から斜めに走りこんでパスを受け、DFグローリを股抜き、滑り込んできたMF重廣卓也もかわし、最後は詰めてきたGK村上昌謙の両足の間を狙いすましてゴール。J1のスピードに対応しきれないアビスパ守備陣に冷水を浴びせるように、圧倒的な個人技を見せつけたゴールとなった。

 さらに10分、名古屋のコーナーキック。ショートコーナーを受けたMFマテウスがFW相馬につなぎ、相馬は切り返そうとして足を滑らせる。J2であればこのままボールロストとなるところだろうが、相馬は崩れた体勢を立て直す動きで一気にDFサロモンソンを抜き去り、強烈なミドルシュートを放つ。このシュートはGK村上がしっかり弾き出したものの、J2ではプレイが切れていたはずのところから一気にピンチを迎える、J1ならではの怖さを存分に感じる瞬間だった。相馬は18分にもDFからのロングパスを足元に収め、ミドルシュートでアビスパゴールを脅かしている。

 前半のアビスパは43分にFWメンデスがボレーシュートを放つのが精一杯。優勝を狙う名古屋に対し、防戦一方の展開となった。

 さらに試合が動いたのは、後半開始直後の55分。名古屋は左サイドを駆け上がったDF吉田豊がゴール前にクロスボールを入れ、これをFW山崎凌吾がボレー。福岡DFカルロス・グティエレスがこれをブロックするが、クリアボールは力なくゴール付近に転がる。そこにいたのはMFマテウス。冷静にゴール右隅に流し込み、0-2と名古屋の2点リードとなった。

 このままでは終われないアビスパ長谷部監督は交代カードを切る。後半開始からMF杉本太郎、63分にはMF金森健志を投入。杉本は70分に負傷退場となり、昨シーズン後半に大きな存在感を見せたMF田邉草民がピッチに入った。

 そして、試合を動かしたのはMF金森だった。前回のJ1昇格時の中心メンバーで、鹿島アントラーズ・サガン鳥栖を経て開幕直前にアビスパに帰還。2点リードという重苦しい雰囲気を変える役割を託された金森は、大仕事を早速やってのける。

 右サイドに入った金森は、快足を活かして、チャンスをたびたび演出。そして81分、金森はFWメンデスがヘディングで落としたボールを名古屋DF吉田と競り合い、右足を一閃。山なりのボールはGKランゲラックの頭を超えてネットを揺らした。歓喜の表情を見せる金森の復帰第1号ゴール……と思いきや、実際は吉田のオウンゴール。ともあれ、1-2と1点差に詰め寄った。

 終了間際、オープンな展開のなかでアビスパも何度かチャンスを迎えたが、同点弾は生まれず。残念ながら、5年ぶりのJ1緒戦は1-2の敗戦となった。

 厳しい結果を突きつけられるかたちになったアビスパだが、収穫もあった。左サイドバックの位置に入ったDF志知は、90分通して素早い攻守の切り替えと判断スピードの速さを見せ、J1レベルのクオリティを証明した。次戦以降、DF陣はこの試合でのDF志知のプレイを基準にしていく必要があるだろう。

 敗れこそしたものの、ここから学んだことも多いはず。長いリーグ戦はまだ始まったばかりだ。

 次のホームゲームは、3月3日(水)のルヴァンカップ・コンサドーレ札幌戦。札幌は横浜FC相手に5点を奪う快勝を演じたばかり。早速J1基準の守備が要求される、厳しい一戦になりそうだ。

【深水 央】

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