アビスパ、6位に浮上 福岡1-0柏
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サッカーJ1リーグのアビスパ福岡は5月9日、ホームのベスト電器スタジアムで柏レイソルと第13節の試合を行った。
リーグ戦では、前節までFC東京・サンフレッチェ広島・浦和レッズとリーグ戦3連勝を飾っているアビスパ福岡。勝利すればチーム史上最高のJ1リーグ戦4連勝となるこの試合は、アビスパにとっては4月から続く11連戦の締めくくりでもある。選手の疲労も蓄積されているはずであるが、この日のアビスパ選手らの動きはそれを一切感じさせない。
この日の対戦相手である柏レイソルは、相手の出足を刈り取って仕留めるプレイスタイル。ソリッドな守備から素早い攻撃を仕掛けるアビスパとは、いわば似たもの同士の対決となった。また、柏レイソルのメンバーには、DF上島拓巳(2020年在籍)、DF古賀太陽(18年在籍)とかつてアビスパで活躍した顔ぶれが並ぶ。試合前のメンバー紹介では、ベスト電器スタジアムDJ・信川竜太氏の粋な計らいで上島・古賀の両名にはアビスパ時代同様の熱いコールが送られ、アビスパサポーターからも暖かい拍手が沸き起こった。
試合は序盤から激しく動く。8分、柏はショートコーナーからMF仲間隼斗が地を這う強烈なミドルシュート。アビスパGK村上昌謙はこれを身を挺してセーブ。こぼれ球にFW呉屋大翔が詰めるが、ここも村上がガッチリと止めた。シーズン初頭はやや迷いのあるプレイで失点することもあったGK村上であるが、この連戦での活躍は素晴らしく、ペナルティエリア内シュートセーブ率は74.3 %でJ1リーグ4位とトップクラスの成績を残している。
前半、両チームはそれぞれの強みを生かしてゴールに迫り激しい肉弾戦を繰り広げるが、決定機を迎えるには至らない。前半終了前にはアビスパMFジョルディ・クルークスが負傷退場となるアクシデントも起こった。
アビスパに歓喜の瞬間が訪れたのは後半開始の直後だ。この時間帯、アビスパは攻勢を強め、柏はコーナーキックに逃れる。DFエミル・サロモンソンが送る鋭いボールを柏DF陣が何とかクリアし、「三度目の正直」となった48分のコーナーキック。DFサロモンソンが放ったボールはファーサイドで待ち構えていたDF志知孝明にドンピシャリ。ヘディングシュートは横っ飛びする柏GKキム・スンギュの手をすり抜けてネットに突き刺さった。
1-0での逃げ切りは、昨年J2時代からのアビスパのお家芸だ。それを察した柏レイソル・ネルシーニョ監督は61分、それまで鋭いスピードでサイド攻撃を牽引していたMF北爪健吾を下げ、FWアンジェロッティを投入して4-4-2のフォーメーションに変更。前線に攻撃の起点を増やそうという意図であるが、この作戦変更は功を奏しない。ボールをもたされ、ディフェンスラインでのパス交換の時間ばかりが増えることになった。
アビスパはボールをもった柏プレイヤーにプレッシャーをかけ、自由にボールを回させない。64分には右サイドからDFサロモンソンが鋭いシュートを放って見せる。抜群の運動量で走り回ったFW渡大生に代わってピッチに入ったFWフアンマ・デルガドは、味方が奪ったボールをしっかりキープしてシュートを狙うことで、常に危険な香りを漂わせて柏の萎縮を誘う。フアンマは88分には独力でGKと1対1に持ち込みシュートを放つが、これは惜しくもゴールマウスを捉えられない。
長谷部監督は81分に5人目のDF・宮大樹をピッチに送り込み、チームに「このまま勝ち切れ」と明確なメッセージを送る。その宮の果敢なヘディングクリアなどもあり、ゲームは1-0でアビスパ福岡の勝利に終わった。終わってみればシュート9本は柏の7本を上回り、アビスパのゲームプランどおりの試合となった。
この試合で目立ったのはMF金森健志。アビスパに復帰した今シーズン、サポーターからの愛情をいっぱいに受ける金森はこの試合では両チームトップとなる34回のスプリント(時速24km以上のダッシュ)を記録。アタッカーとしてゴールに迫るスプリントも多かったが、守備の場面でもまったく手を抜かない金森のプレイには、スタンドから何度も大きな拍手が贈られた。
MFクルークスの負傷退場で急遽出場となったMF杉本太郎も改めて評価を上げたといっていいだろう。攻守ともに手を抜かないのはもちろん、多彩なアイデアとテクニックで攻撃にアクセントを加えていた。
最終ラインで目立ったのはDF奈良竜樹。もともと日本代表クラスの実力をもち、対人プレイでは無類の強さを誇る奈良であるが、この試合のハイライトは試合終了直前。同点ゴールを求めて前がかりになる柏攻撃陣の後ろに転がったボールをGKスンギュが押さえようとするが、奈良がこれを猛追。ゴールラインを割るまで追い続け、「楽にはやらせない」というチーム全体の意思を強く見せつけた。
さて、この試合を終えたアビスパは勝ち点を22とし、暫定ながら6位に浮上した。今期は新型コロナウイルス感染症の影響で試合消化数にバラつきがあるものの、セレッソ大阪、浦和レッズ、鹿島アントラーズなど並みいる名門クラブを抑えて順位表の「上半分」にアビスパ福岡の名前があるという事実には胸が熱くなる。
11連戦を最高のかたちで終えたアビスパは、久しぶりに試合のない1週間のインターバルを得た。連戦の疲れ、怪我の治療など、しっかりコンディションを整えてほしい。
次の試合は、5月15日のアウェー仙台戦。現地まで赴くのは難しいご時世であるが、DAZN(ダゾーン)でアビスパの戦いを見守ろう。
【深水 央】
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