【コロナ禍で明暗分かれるラーメン業界(2)】コロナ禍の店舗型ラーメン店4社 特徴の違いが明暗を分けた
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群雄割拠の福岡ラーメン業界。新店舗が続々とオープンしているが、競争に敗れて閉店に追い込まれる店舗も少なくない。「一風堂」を展開する(株)力の源ホールディングス、「一蘭」を展開する(株)一蘭、「一幸舎」の(株)ウインズジャパン、「龍の家」の(株)アペックスコーポレーションの4社を比較する。また、次回、注目株である新興勢力の「元祖トマトラーメンと辛めんの店 三味(333)」を運営する(株)三味の動向を紹介する。
(1)小商圏をターゲットに出店~力の源HD~
前回取り上げたように、コロナ禍の状況下で力の源HDの軌道修正力が発揮された。今回取り上げる4社のなかで唯一上場しており、第三者割当による増資も行った。この用途にはコロナ禍で悪化した財務基盤の立て直しをはじめ、コロナ禍によって変容した経済環境に合わせた出店、新規事業拡大の可能性の模索が挙げられている。
コロナ禍で都市部店舗がリモートワークや外出自粛の影響を受けたことを踏まえ、今後は郊外などの小商圏をターゲットに出店する方針を示す。国内商品販売事業は、これまでのBtoB事業ではなくBtoC事業に注力。独自のECサイト「MEN’S MARKET 麺ズマーケット」の開始や新商品開発・拡販を行った。
2021年3月期(連結)の売上高は前期比43.2%減の165億3,931万円、営業損益は9億3,931万円の赤字に転落したものの、10~12月期で国内外店舗の営業黒字化を達成。コロナ禍で黒字に到達できたことは、飲食業界で貴重な成功例といえる。
(2)「味集中カウンター」が奏功~一蘭~
コロナ禍によって客足が遠のき、ラーメン店に限らず苦難を強いられている飲食店が多いなかで、一蘭は最終利益を出した。20年12月期の決算は売上高が151億6,000万円、当期利益が6億5,800万円となった。19年と比較すると業績が大きく下がったように見えるが、コロナ禍で同業他社が赤字に陥るなかで黒字を計上したことには驚く。
一蘭といえば、テーブルの席が仕切り壁で区切られ、ラーメンを提供するカウンターはすだれがかけられている「味集中カウンター」で有名。もともとオーダー用紙で注文し、店員や客同士の接触を減らすことでラーメンの味に没入するという目的から始まったが、まさにコロナ禍にうってつけだった。
16年9月13日からは「eGift System」を導入。これは、デジタルギフトチケットを購入して相手に送り、チケットを店頭で商品と交換できるというオンラインのギフト券サービスである。eギフト販売の「giftee」でも取り扱っていて、誕生日などの記念日やお祝い事、御礼品として手軽に送り合うことができる。この店舗への集客を目指したデジタル活用のビジネスモデルが、新規客獲得の一助となっていることは間違いないだろう。
製造工場や同社の歴史に触れられることをアピールポイントとして、14年の開業当時に話題となった「一蘭の森店」は現在も休業中。同社にとって最大の製造拠点であり、もしもコロナ感染者が出た場合は状況によって製造中止となり、全国の店舗運営に影響を与える可能性があるためと説明している。
「味集中カウンター」に見られる独自のスタイルに、コロナ禍が予想外の付加価値を与えた。このスタイルを維持しつつ、以前の業績をいかに取り戻していくかが今後の課題となる。
<COMPANY INFORMATION>
代 表:吉冨 学
所在地:福岡市博多区中洲5-3-2
設 立:1993年5月
資本金:4,000万円
売上高:(20/12)151億6,000万円(3)コロナ禍で拡大路線が頓挫~ウインズジャパン~
「一幸舎」を運営するウインズジャパンは07年6月に設立された。21年3月時点で国内17店舗、海外41店舗を展開。同社も例に漏れず大幅な赤字となっているのだが、コロナ禍による売上減少だけが要因ではない。
18年5月期と19年5月期を比べると、売上高は8,000万円近く増加しているにもかかわらず、営業利益は1,895万円から378万円へと大きく減少している。同時期に、固定資産の建物および付属設備の項目が18年5月期から1億393万円、2億3,175万円、2億8,641万円と推移している。また長期・短期合わせた有利子負債は18年5月期から2億7,753万円、4億8,279万円、7億9,301万円と膨らんでいる。
積極的な拡大路線で数年先の収益増を見込み、借り入れをしてでも拡大を図ったようだが、コロナ禍という想定外の事態発生と長期化により頓挫したかたちだ。
20年5月の売上高は前年比13%減で、ほかの飲食店ほど客足は遠のいていないとみられる。いったん拡大路線を止めて、堅調に取り返していくことが大事だろう。
<COMPANY INFORMATION>
代 表:入沢 元
所在地:福岡市博多区博多駅東2-13-25
設 立:2007年6月
資本金:1,000万円
売上高:(20/5)13億3,359万円(4)オフラインでの集客が前提の事業~アペックスコーポレーション~
アペックスコーポレーションのラーメン事業は、「博多 一風堂 塩原本舗」でラーメン修行を行ったメンバーが1999年5月、久留米市に「ラーメン龍の家(現・上津店)」をオープンさせたことに始まる。その後も久留米市を中心に出店を続け、現在では13店舗(「らーめん息吹」含む)を展開している。2010年に独自の「金色麦龍麺」の製造工場をつくり、こだわりの麺をおいしく、かつ安心安全に提供できる体制を整えた。
現在、同社は3期連続で赤字を計上している。同社が運営するのは「龍の家」だけでなく、「コメダ珈琲店」のFC運営、カラオケ店「カラオケアメリカ」、美容室「Hair Makeアンソメット」と多岐に渡る。
直近5年間の売上高は16年10月期の23億5,235万円をピークに少しずつ下降し、20年10月期は17億5,743万円に。当期損益は3億6,591万円の赤字となった。借入金依存度も58%(17年10月期)から、82%(18年10月期)、90%(19年10月期)、95.6%(20年10月期)と増加しており、他人資本依存型経営に陥っていることがわかる。固定資産を売却し、財務改善を図ったが、赤字はなおも続く。
競争が激化していくなかで会社を存続させるために、ラーメン店以外の分野に注力することも1つの方法だ。しかし、同社が手がける事業はすべてオフラインでの集客を前提としており、コロナの煽りを受ける。人を集客するビジネススタイルはシナジー効果を生むため、極めて合理的かつ効率的であるが、集客できる状況があってこそ成立する。コロナ禍という異例の事態のなかでは思うように作用せず、コロナ禍の収束が先か、限界を迎えるのが先かという我慢比べが始まっている。
<COMPANY INFORMATION>
代 表:梶原 龍太
所在地:福岡県久留米市小頭町136-1
設 立:1989年1月
資本金:5,000万円
売上高:(20/10)17億5,743万円ラーメン店の特徴が致命傷を避ける
コロナ禍の影響は、「四社四様」の結果をもたらした。売上の落ち込みについては、1グループあたりの客が少人数であり、酒類提供に頼らず、ほかの飲食店よりも客の回転が速いというラーメン店の特徴によって致命傷を免れたかたちだ。
しかし、拡大を図ろうとしたり、赤字を解消しきれなかったりなどと、状況次第ではコロナ禍の打撃が致命的となる企業もあった。その一方で、コロナ禍でも黒字を守った一蘭や、業績は下がったものの、対応能力の高さを見せた力の源のように、アフターコロナの世界でさらなる飛躍が期待できる企業もある。
福岡発のラーメン店が今後も日本各地、世界各国で存在感を示し続けることに期待したい。
【杉町 彩紗】
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