2024年11月25日( 月 )

ファミマ、PB「お母さん食堂」廃止し、「ファミマル」に刷新~その是非をめぐり、ネットは大炎上(2)

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 (株)ファミリーマートは、自主企画のプライベートブランド(PB)「お母さん食堂」などを廃止し、「ファミマル」に刷新する。その是非をめぐり、ネットは大炎上。テレビはワイドショーで特集を組むほどの騒ぎになった。ファミマブランド再生のためにスカウトされた、足立光最高マーケティング責任者(CMO)にとって、想定外の出来事だったようだ。

ファミマは新設のCMOに足立光氏を起用

 新型コロナウイルスにより、あらゆる企業が大打撃を受けた。アフターコロナ時代を迎え、企業は全体戦略・組織・業務などの見直しを迫られている。マーケターと呼ばれるプロのマーケティング立案者の出番だ。

 (株)ファミリーマートは2020年10月1日、マーケティングを統括するチーフ・マーケティング・オフィサー(CMO)を新設し、日本マクドナルド(株)の業績をV字回復に導いた足立光氏を起用した。CMOは役員級のポストで、CFO(最高財務責任者)などと同様に社長直属となる。商品企画や販売促進の専門知識を持つ人材を招き、ブランドを再構築する。

 CMOを置くのはコンビニ大手では初めて。親会社の伊藤忠商事(株)、ファミマともマーケティングの専門的な知見に乏しい。落ち込みが激しいファミマは、消費者を呼び戻すことをマーケティングのプロに託すことになる。

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 コンビニは阪神淡路大震災や東日本大震災の際に被災地の商品供給を支え、有事に強いと見られていた。コロナ禍では消費行動の変化に翻弄された。消費行動は都心から郊外に移り、都心部に店舗が多いファミマは来店客減少による売り上げ減で苦戦が続く。

 それに危機感を抱いた親会社の伊藤忠商事は20年11月、ファミマを完全子会社した。そして足立光氏をファミマのCMOに招いた。なぜか。

ファミマの最大の課題は旧サークルK・サンクスのFC店をつなぎとめること

 ファミマは16年9月、ユニーグループホールディングス(株)と経営統合。ユニーグループ傘下のコンビニ、(株)サークルK・サンクスを傘下に組み入れた。サークルK・サンクスの店舗が加わり、「万年3位」と呼ばれていたファミマは、店舗数では一挙に2位に浮上した。だが、コンビニの実力を示す1日当たりの1店舗あたりの売上高(日販)は、大手3社のなかで最も低く、首位のセブン-イレブンに大差をつけられている。

 ファミマの最大の問題は、サークルK・サンクスからファミマに変わったフランチャイズ店が21年後半から23年にかけて契約更新時期を迎えること。5,000店舗あり、契約を更新できるかにファミマの命運がかかる。下手すると、(株)セブン-イレブン・ジャパンか(株)ローソンに鞍替えすることもあり得るからだ。

 加盟店をつなぎとめるためには、客を呼び込める魅力的な店にしなければならない。ファミマは、「ファミチキ」を上回るようなヒット商品を生み出せておらず、マーケティングのプロ、足立氏の手腕に期待をかけたのである。

日本マクドナルドをV字回復させた立役者

ハンバーガー イメージ 足立光氏は米国テキサス州オースティン生まれの53歳。1990年に一橋大学商学部を卒業後、米日用品大手プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)の日本法人に入社して、マーケターとしてのキャリアを歩み始めた。

 P&Gはマーケティングの異才を多数輩出させている。「世界に通用するプロを育てるため人材への投資を惜しまない」とする会社の方針から社外に転進して活躍する人材は多い。

 日本マクドナルド(株)を再建に導いた足立光氏や、(同)ユーエスジェイが運営する大赤字のテーマパーク、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)を再建させた森岡毅氏ら著名なマーケターを輩出し、通称「P&Gマフィア」と呼ばれる。

 足立氏は2015年、日本マクドナルドホールディングス(株)のサラ・カサノバ社長にスカウトされ、事業会社の日本マクドナルド(株)上席執行役員に招かれた。商品名を消費者が決める「名前募集バーガー」や、「ポケモンGO」とのコラボなど話題性のあるキャンペーンを次々に打ち出した集客につなげた。

 最大のヒットは「夜マック」。午後5時以降、100円追加するとハンバーガーのパティ(肉)が2倍になる。「夜マック」は、「夜は勝てない」という日本マクドナルドの常識を覆した。どこの店でも来客と売上が圧倒的なのが「ランチ」。劣等生だったディナー帯の伸び率が「夜マック」効果でトップになった。足立氏は異物混入問題で赤字経営に陥った業績をV字回復させた立役者だ。

 「同じ仕事を3年以上続けてはいけない」という自らのポリシーを守って18年退社。直近まで、「ポケモンGO」などゲームを開発・配信する米系ナイアンティック(株)のシニアディレクターを務めていた。

(つづく)

【森村 和男】

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