「仕事も遊びも人生はロマン」各自のドラマが社会の未来に貢献する
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(一社)九州賢人会議所
副会長兼会長代行 芦塚 日出美 氏打ち込める趣味との出会いが拓く新たな道
総人口の4分の1以上が65歳以上となったいま、経験と知恵の宝庫たる「高齢者という人的資産」の活用は、地域を活性化させ持続可能な社会を構築するための鍵を握る――(一社)九州賢人会議所は、こうした意識に基づき福岡の企業経営者OBたちが2014年に設立、以来各方面でさまざまな活動に取り組んでいる団体である。現在同所の副会長兼会長代行を務める芦塚日出美氏自身、現役時代に培ったビジネスの手腕もさることながら、偶然の導きで出会った趣味によっても思いがけない道が拓かれた1人だ。
九州大学卒業後に九州電力(株)に入社し、九州はもちろんフランスなど海外でも活躍した。2003年に同社副社長に就任し、07年にはグループ傘下の通信事業者(株)QTnetの社長となる。こうして長年仕事に打ち込みキャリアを積み重ねていった芦塚氏だが、プライベートではゴルフを軽く嗜む程度で、夢中になれるものは長らくなかったという。転機は58歳の時、知人に誘われて本木寿以家元の小唄会「高砂会」へ入会したことだった。小唄とは三味線に合わせ歌を詠じる日本の伝統芸能だが、その奥深さにすっかり魅了されてしまった同氏。5年目には踊りにも挑戦、表現の幅をますます広げていった。
08年の夏、博多座で催された「チャリティー歌舞伎」の前座として、パフォーマンスを披露する機会を得た。翌09年には同イベントの『勧進帳』で富樫左衛門を演じる。稽古が始まる直前に仕事で日本を長期間離れなければならなくなるというピンチもあったが、出張先でも自主練習を続け、無事に舞台をこなすことができた。演技指導を担当していた尾上菊五郎氏からも「感動のあまり身震いした」と絶賛されたこの舞台は、生涯最大の「ときめき」となって、今も力と励ましを与え続ける。
各自の歩み=「ロマン」が社会の支えに
この半年後、福岡市から突然、「博多座の社長になってほしい」という申し入れがあった。当時の博多座は経営悪化の状況にあり、引き受ければ「マイナスからの立て直し」という困難な使命を課されることを意味する。その時芦塚氏は70歳。困惑したものの、松下幸之助の名言「行動なくして成果なし」が氏の心を動かした。ただちに「演劇興行会社になる」「経営計画・管理を行う」など、立て直しのための目標を打ち出し、その実現へ向けて大胆な改革を押し進める。若手の意見の取り入れや自社演目の制作、原価やコスト削減への意識醸成なども奏功し、12年度は4,900万円の純利益を計上、博多座を見事再生させたのだった。
芦塚氏のモットーは「仕事も遊びもロマン。そのロマンは人生舞台にあり」。ドラマチックかつ一期一会の演劇の世界を経験した氏ならではの言葉だが、高齢者はまさに、各々が唯一無二のドラマを紡ぎ上げてきた存在である。その過程で積み上げた経験と知恵を社会に還元し、若い世代とともに日本の未来を切り拓けるはずであり、それこそまさに、九州賢人会議所が活動を通じて発するメッセージなのだ。
<プロフィール>
芦塚 日出美(あしづか ひでみ)
1939年長崎県諫早市生まれ。九州大学工学部卒業後、九州電力(株)に入社。同社副社長、(株)QTnet社長、(株)博多座社長、福岡経済同友会代表幹事を歴任し、現在、(一社)九州賢人会議所副会長兼会長代行を務める。関連キーワード
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