2024年11月21日( 木 )

【どうなる?久留米市】忖度(そんたく)市政からの決別が不可欠 原口しんご・久留米市議

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 来年1月16日告示、23日投開票の久留米市長選挙。現職の大久保勉氏が不出馬を表明したことで、自民系2人を含む複数の候補が並び立つ混戦模様となっている。軸になるとみられるのが、いずれも無所属新人の久留米市議、原口新五(しんご)氏(61)と前県議会副議長の十中大雅氏(68)の2人(※)。十中氏は副議長の職責を「投げ出した」と古巣の県議会から批判されており、一方の原口元市議は、兄が自民党県連会長を務めていることから「久留米市の私物化」と懸念を口にする市民もいる。県内では福岡市の“一強”化が進み、北九州市以上に地盤沈下が進む久留米市。久留米市再建の手立てはあるのか、原口しんご氏に聞いた。
※ほかに医師の細川博司氏(61)と同市出身の作曲家が立候補を表明。

雇用を生む企業誘致を目指す

久留米市長選に出馬する原口しんご氏(61)
久留米市長選に出馬する
原口 しんご氏(61)

    ──久留米市長選に立候補された経緯は。

 原口しんご氏(以下、原口) もともと4年前の市長選に出ようとしていたのですが、当時は市議会がまとまらなかったことと後援会に対する相談の手順が悪かったこともあって実現しませんでした。今回は10月10日に大久保市長が出ないと表明されたので、手順を踏んでいち早く手を挙げた。保守分裂と騒がれていますが、私はむしろ多様な方が出られて政策論争をしたほうが良いと思います。現職が立つのであれば実績を訴えることになりますが、今度の選挙はお互いに新人ですから、市民の方にはぜひ政策をみて決めていただきたいですね。

 ──久留米市の課題は。

 原口 なによりも優先すべき課題は水害対策でしょう。4年間で5度も沈んでいますから、生命と財産を守る対策が第一です。さらに同時並行でコロナ禍対策が必要です。2年近くさまざまなことが停滞していますので、これをどう改善していくのか。市民の皆さんが共存しながら歩んでいけるような道を考えなければなりません。

 市役所も大きく変えたいと思っています。さまざまな専門職をきちんと育て、何度も配置転換するようなことはやめさせます。農業や企業誘致、政策・コミュニティー形成など、専門分野で必要なものはそれぞれ違いますから。市議会議員になって30年間、5人の市長と一緒に仕事をさせていただきましたが、地方議会出身の市長はなかなかいないので、それを明確に皆さんにお示しできるようにやっていきたいと思います。

 ──人口減対策や企業誘致については。

 原口 大企業を誘致することはニュースにはなるでしょうが、地元の雇用を生むような誘致の在り方も考えなければなりません。業種の問題や採用の仕方などに加えて、どれくらいの雇用を生むのかの数字を基にした議論を進めて産業団地をつくりたいと思います。久留米市ではバイオ産業が注目されており、そういった最先端の産業が久留米市全体を牽引してほしいのですが、大きな雇用を生む企業の誘致も同時に考えなければなりません。

大久保市長の「辞める理由」~忖度(そんたく)政治への嫌気?

 ──兄の原口剣生さん(福岡県議)がいることもあって、「原口家の市政私物化」を懸念する市民もいる。

 原口 そういう話は当然、耳に入ってきます。私は市議を30年やってきましたが、これまではそんなことは言われてこなかった。むしろ、兄がいることで県と市のラインがうまくいくのではと期待される方もいます。市の問題を解決するために誰がやるべきなのか、誰が何をやろうとしているのかを市民の方に見てほしいのです。

 4年前に、市議としての私をずっと見てきた方々から、「市長に出てみんか」とおっしゃっていただきました。そのときに、「(兄がいるので)原口家が市政を独占していると批判される」とむしろ私のほうから申し上げた。しかし、「そんなことより私たちの生活を豊かにしてくれ」と説得されました。そのために政治家になったのではないか、と。だからそんな陰口には負けません。

 ──大久保市政に対する評価は。

 原口 久留米市独特のしがらみに負けない、特定の人物や団体の話だけをきかない、ということで頑張ろうとされたと思います。民間出身ですので、これまでは判断できなかった思い切ったことをされたと評価しています。残念なのは、あと1期していただきたかったですね。ご本人も「もう1期」と思われていたはずですが、では、なぜ辞められるのか。それはマスコミの方も含めて市政に携わる方々なら良くご存じなのではないでしょうか。

 ぜひ、「辞める理由」を1月の(退任)記者会見で詳しく話していただきたいですね。もし誰か有力者などとの軋轢(や忖度)が辞める原因であるのならば、次の市長のためにもそのことをきちんと明言すべきではないかと思います。

代理戦争ではなく「市民運動か、しがらみか」の選択選挙

 ──自民系候補が2人立ったことで、鳩山二郎衆院議員と自民党県議団の“代理戦争”という見方もある。

 原口 最初に私が手を上げて、次に十中さんが手を上げ、鳩山事務所が動き出しました。選挙戦が本格化するのはこれからですが、すでに推薦についてある団体にプレッシャーがかかったという話などが入ってきています。新聞では「代理戦争」という言葉も飛び交っていますが、では誰が誰を代理しているのか。私は市民のための市政であり、市民のための選挙だと思っていて、私自身が誰かを代理しているつもりはまったくありません。市民の皆さんには候補者それぞれの政策とこれまでの足跡、さらに推薦者をみて選んでほしいです。

 ──原口氏を評して「仕事はできるが敵も多い」。十中氏は「仕事はそこそこ、敵もいない」と評価する方がいる。

 原口 その噂はよく聞かされます(笑)。私の政治信条は、きちんと人の話を聞いて、決めるべきものを決めるということです。それぞれの業種でそれぞれが飯を食えるようにする、それが政治だと30年間言ってきました。敵が多いというよりも、私の政策を評価していただくかどうかは立場によって違いますからしかたありません。「原口は、できないことはできないとはっきり言うところが良い」と評価していただく方もいますから。

市民の方々に訴えたいのは、今回の選挙は代理戦争というより、「市民運動」を選ぶのか「しがらみ」を選ぶのかという戦いだということです。ぜひ、政策で評価していただきたいと思います。

<プロフィール>
原口新五
(はらぐち・しんご)
 1960年久留米市諏訪野町生まれ。福岡教育大学附属久留米小学校から諏訪中学校を経て柳川商業高校卒業。福岡大学体育学部中退。1989年久留米市議会議員初当選、以降、副議長(1回)と議長(2回)を歴任。12月1日、来年1月の久留米市長選に立候補を表明。兄は、福岡県議で自民党福岡県支部連合会会長の原口剣生氏。

【県政取材班】

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