大幸薬品が巨額の最終赤字 「コロナ特需」読み違える(前)
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新型コロナウイルスの感染拡大を受け、マスク以外にも予防グッズとして食卓用アルコールスプレーやハンドソープの需要が増加。大幸薬品は空間除菌剤「クレベリン」の売上が急増し増産に踏み切ったものの、在庫の山を築いてしまう。「クレベリン」の爆発的な人気が仇となってしまった。
社長自ら見通しの甘さ認める
ラッパマークの胃腸薬「正露丸」で知られる大幸薬品(株)(大阪市、東証一部上場)は2月22日、オンラインで決算説明会を開いた。この模様を普段は経済面片隅のベタ記事扱いにしかしない一般紙が刺激的な見出しで以下のように報じた。
朝日新聞『大幸薬品、クレベリン大量在庫 社長「コロナと戦う夢を抱いたが」』、読売新聞『感染拡大で除菌製品「クレベリン」大増産、ブーム失速して大量売れ残り』、産経新聞『クレベリン増産裏目で赤字、大幸薬品「コロナ需要を読み違えた」』。
空気中の菌やウイルスを減らすとうたい、主力として育てるはずだった「クレベリン」の売れ行きが急減速してしまったのだ。決算会見は、柴田高社長自ら見通しの甘さを認めるという、珍しい展開になった。
大幸薬品の21年12月期の連結決算は売上高が112億円、最終損益は95億円の赤字だった。棚卸資産評価損などクレベリン関連で約61億円の損失を計上。茨木工場の減損損失などを含む特別損失28億円も赤字を膨らませた。
決算期を3月期から12月期に変更した20年12月期は実質9カ月決算で、売上高は175億円、最終損益は38億円の黒字だ。9カ月決算の前期と比べても売上高は激減。過去最高益を更新した前年から、過去最大の最終赤字となった。当期赤字は売上高に匹敵するレベルだ。なぜ、こうした事態に陥ってしまったのか。
コロナ禍で「クレベリン」絶好調
2020年春、新型コロナウイルスが日本列島を襲った。マスク以外の衛生用品などの需要も急増。家電量販店では空気清浄機の販売が伸び、ドラッグストアには食卓用アルコールスプレーやハンドソープを求める客が殺到した。
都心の大型ドラッグストアでは、大幸薬品の空間除菌剤「クレベリン」が1月27日からの1週間で前週比3倍の売れ行きに伸長した、とメディアが報じた。
大幸薬品の20年3月期連結決算は、売上高は前期比44%増の149億円、純利益73%増の24億円となり、いずれも過去最高に。新型コロナウイルスの感染拡大により「クレベリン」特需が起き、業績を押し上げた。
胃腸薬「正露丸」などの医薬品は外出自粛や訪日客の減少が影響し、販売が低調だった。一方、アルコール消毒なども含めた空間除菌剤「クレベリン」関連製品の売上は、全社の売上の8割を占めるまでに爆発的に伸びた。四半期決算で見ると20年は好調を持続した。
工場を新設、最大10倍の増産体制に
大幸薬品は「クレベリン」を主力製品に育てるべく増産体制を敷いた。主力の置き型タイプは、置くと二酸化塩素ガスが出て「空間除菌」ができる効果をうたう。価格は小さいもので1,000円程度、コロナ禍が追い風にとなり需要が伸びた。
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【コロナで明暗企業(1)】ロイヤルHD、資本支援策の衝撃~筆頭株主、双日の持ち分法適用会社に組み込まれ、創業事業の機内食は売却(前)20年11月、増産に向けて約23億円を投資し、大阪府茨木市に工場を新設。置き型タイプの生産能力を年数百万個から最大で10倍の数千万個にする。
21年に入ると、マスクも消毒液も特需が収束した。調査会社の富士経済によると、20年の手指消毒剤の市場規模は19年比7倍強の300億円と急増したが、21年には20年比4割減の180億円ほどに縮小。前期に爆発的に売れたクレベリンの販売が大きく落ち込んだ。前期からの反動は想定をはるかに超えており、クレベリンは在庫の山を築き、21年の四半期決算は赤字に転落した。また、新設したばかりの茨木工場は5カ月後の21年4月から稼働停止に追い込まれた。これが致命傷となった。
(つづく)
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