2024年11月18日( 月 )

宮崎太陽銀行の増資内容から見えるもの

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ
法人情報へ

 筆者は『Fukuoka 200 leaders サステナブル社会への一歩』(3月発刊)に、「これから本格化する九州地銀の金融再編」(文末に全文)を掲載し、そのなかで次のように述べた (一部抜粋)。

 「大分県は第一地銀の大分銀行と豊和銀行の2行。ともに単独行。宮崎県は第一地銀の宮崎銀行と宮崎太陽銀行の2行。ともに単独行。大分県においては佐賀県と同様に、大分銀行と豊和銀行が合併。その後、経済圏が北部九州と密接な関係にあるふくおかFGと経営統合すると予測される」。

 「宮崎県も宮崎銀行と宮崎太陽銀行が合併し1県1行となり、経済圏の関係から九州FGと経営統合するものと予想される」。

 【表】は、宮崎太陽銀行の2021年9月(増資前)時点の大株主名簿である。同行は3月31日に増資を実施。以下の通り、「第1回B種優先株式の払込完了に関するお知らせ」を発表した。

(1)払込期日:2022年3月31日
(2)発行株式数:60万株
(3)発行価額:1株につき1万円    
(4)発行価額の総額:60億円
(5)増加する資本金の額:30億円
    増加する資本準備金の額:30億円
(6)割当先、割当株数:宮崎銀行ほか35社、60万株(同社の払込に関するお知らせを参照)

【表】宮崎太陽銀行の大株主名簿

▼おすすめ記事
九州地銀の2022年 第3四半期(12月期)決算を検証する (1)

 宮崎太陽銀行は60億円の増資を完了した。最も多く引受したのは、宮崎県内の競争相手で第一地銀の宮崎銀行。引受株数は10万株で10億円。2位の西日本シティ銀行は引受していないため、保有株式は18万8,000株のまま。宮崎銀行はすでに10万6,400株を保有し10位の株主。今回の増資引き受けにより20万6,400株となり、1位の自社従業員持ち株会の23万6,000株に次ぐ第2位の株主に躍り出たことになる。

 筆者が予想したように、宮崎銀行と宮崎太陽銀行は合併しやすい状況になったことは間違いないようだ。

これから本格化する九州地銀の金融再編

浜崎経営研究所 浜崎 裕治 所長

九州地銀の今を読み解く

    全国の地方銀行は2022年2月1日現在、第一地銀62行、第二地銀(旧・相互銀行)37行の計99行となっている。全国で地銀は8金融グループ。傘下の第一地銀は14行。第二地銀は4行で、金融再編は第一地銀が主導しているということが読み取れる。九州には地銀が17行ある。県別に内訳を見ていただきたい。

 福岡県は5行。第一地銀4行のうち3行(福岡銀行・西日本シティ銀行・北九州銀行)は金融グループ傘下行で、筑邦銀行だけが単独行。第二地銀は1行(福岡中央銀行)であるが、ふくおかFGから頭取を迎えており、ふくおかFGに属している。佐賀県は第一地銀の佐賀銀行と第二地銀の佐賀共栄銀行の2行。ともに単独行。長崎県は第一地銀の十八親和銀行(ふくおかFG)と長崎銀行(西日本FH)の2行。熊本県は第一地銀の肥後銀行(九州FG)と熊本銀行(ふくおかFG)の2行。大分県は第一地銀の大分銀行と豊和銀行の2行。ともに単独行。宮崎県は第一地銀の宮崎銀行と宮崎太陽銀行の2行。ともに単独行。鹿児島県は第一地銀の鹿児島銀行(九州FG)と南日本銀行(単独行)の2行。以上が九州地銀の現状である。

九州地銀の金融再編を大胆予測

 では今後の九州地銀がどうなっていくのか、予測していきたい。福岡県の単独行は筑邦銀行1行となっており、九州FGと経営統合するものと推測する。その理由はふくおかFGや西日本FHと経営統合する場合、店舗閉鎖などデメリットが大きいからだ。佐賀県においては佐賀銀行と佐賀共栄銀行が合併し1県1行となり、その後店舗の重複が少ない九州FGと経営統合するものと推測する。長崎県は2行とも金融グループ傘下行であり、現況を維持すると見られる。大分県においては佐賀県と同様に、大分銀行と豊和銀行が合併。その後経済圏が北部九州と密接な関係にあるふくおかFGと経営統合すると予測される。宮崎県も宮崎銀行と宮崎太陽銀行が合併し1県1行となり、経済圏の関係から九州FGと経営統合するものと予想される。鹿児島県においては鹿児島銀行と競合する南日本銀行は、西日本FHと経営統合するものと予測される。

一刻も早く合併・統合を進めるべき

 九州では、ふくおかFG・西日本FH・九州FGの3金融グループにより、金融再編が進むものと推測される。コロナ禍で地域経済は疲弊していると言わざるを得ない現在、金融グループに属していない銀行は、今は一刻も早く合併および金融統合を進める時季(とき)ではないだろうか。

<プロフィール>
1945年生まれ、下関市出身。同志社大学法学部卒業後、70年山口銀行本店営業部入行。博多駅東・大分・大阪支店勤務を経て、綾羅木・新宿・大阪・北九州支店長を歴任。2001年6月、取締役宇部支店長就任。05年6月に退任後、数社の取締役を歴任。取締役宇部支店長在任期間中の04年5月21日に開催された臨時取締役会で頭取交代劇に遭遇。それを題材に14年10月15日、『実録 頭取交替』(講談社)を発刊。現在、(株)データ・マックス顧問。 

【(株)データ・マックス顧問 浜崎 裕治】 

関連記事