【濵田酒造】What is“Shochu”? 海外に「國酒・焼酎」を売り込め
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濵田酒造(株)
コロナ禍では飲食店が感染拡大の温床と名指しされ、時短営業などのさまざまな規制に苦しめられてきた。飲食店に卸す酒類の販売量も激減し、酒類メーカーも家庭向け商品の開発など対応に迫られている。そんな逆風をむしろ好機ととらえるのが、焼酎王国・鹿児島県のリーディングカンパニー・濵田酒造だ。自社商品への大いなる自信を胸に、海外需要に目を向ける。
ライチのような香りの本格芋焼酎~女性需要の開拓
濵田酒造(株)は2018年、創業150周年を記念して開発した新商品「だいやめ~DAIYAME~」を発売した。最大の特長はその芳醇な香りだ。素材にはサツマイモしか使っていないにもかかわらず、封を切った瞬間にライチのようなフルーティーな香りや柑橘系のさわやかな甘さが立ち昇り、それまでの焼酎主要飲酒層以外の層に受け入れられた。
これまでの芋焼酎とは一線を画す味と香りを実現できたことは、「一度飲んでもらえばわかるはず」という自信にもつながり、首都圏、中部、関西などの都市部を中心に全国各地での試飲会やコロナ禍ではオンラインでの試飲イベント、SNSを活用したキャンペーンを繰り返すなどしてマーケットを広げてきた。こうした戦略はぴたりと当たり、これまで中高年男性が主な飲み手だった焼酎業界では珍しく若い女性にも受け入れられる商品に成長し、コロナ禍の影響で家飲み需要が増えたこともあって前年比150%増のヒット商品になった。
「DAIYAME 40」~世界三大コンペで入賞
ヒット商品「だいやめ」の度数を40度まで高めた「DAIYAME 40」は、主に海外市場を視野に入れた同社の戦略的商品ともいえる。海外では、度数の高い蒸留酒は主にカクテルベースとして用いられることが多い。日本の代表的蒸留酒である焼酎をカクテルに使ってもらうにはどうしたらいいのか。同社が海外の有名バーテンダーやミクソロジスト(素材を重視したカクテルをつくる専門家)などに助言を求めたところ、「だいやめ」のフルーティーな香りに対する評価が非常に高かった一方で、アルコール度数の低さ(国内流通焼酎の一般的度数である25度)からボディ(強度)についての要望を受けた。それならばと、新たに度数を40度まで上げた新商品の開発に乗り出した。
商品のまさに「顔」となるボトルデザインは、DAIYAMEブランドの目指す〈さらなる高みと深み〉を具現化すべく、ロックグラスのような重厚感とラグジュアリーさを兼ね備えたスタイルを目指した。一目でそれとわかるボトルカラーは黒。これは、島津氏17代当主・島津義弘公の黒鎧や薩摩で焼酎を飲む際に用いる酒器「黒千代香」、さらに、だいやめブランドに使われる黒麹からイメージした。ボトルデザインには法隆寺の金堂などで用いられた日本古来の「大和比」を採用し、ボトルの円筒形部分は「上部:下部=1:1.414」で構成。バーニッシュカット(Burnish Cut)と名付けたボトルシルエットは磨き抜かれた繊細なカット調のラインを表現して、独特の光沢感や高級感・重厚感を演出した。専用サイトでは「DAIYAME 40」を用いたカクテルレシピを公開して、焼酎=「Shochu」の新たな可能性を提言している。
今年に入ってから、「DAIYAME 40」は海外の各種コンペで高い評価を受けるようになっている。3月に「International Wine & Spirit Competition 2022」で金賞、4月に「San Francisco World Spirits Competition 2022」でダブルゴールド、6月には「International Spirits Challenge 2022」でもゴールドを受賞し、世界三大酒類コンテストのすべてで入賞をはたすという結果を出した。
本格焼酎を真の國酒へ
コロナ禍では濵田酒造も同業他社と同様に、大きな影響を受けた。しかし、その影響は売上額の変動というよりはむしろ商品構成の変化にこそ現れたという。飲食店の時短営業、営業自粛などの影響で業務用飲料の需要は激減したものの、いわゆる「家飲み」需要が新たに生まれたことにより基幹商品である「海童」や「隠し蔵」などのパック商品の売上が伸び、結果的に業務用途の下落分を吸収したかたちだ。
海外展開はコロナ禍の影響というよりはむしろ、「本格焼酎を真の國酒へ、更には世界に冠たる酒へ」という同社の計画を実現する意味合いの方が強い。これまでもこの計画に基づき輸出事業自体は継続してきたが、国内人口の急減、さらには人口構成が変わることによる飲酒人口減というマーケット構造の変化が、コロナ禍も重なりさらなる海外展開への機運を後押しした。
現状で海外販売実績は総売上の1割程度だが、中期計画ではこれを倍近くまで育てていく方針だ。最も大きな海外マーケットは中国で、シンガポール、インドネシア、マレーシア、タイなどが続く。こうしたアジア地域で販売実績を伸ばして経験や実績を積んだうえで、将来的にはより発信力の高い本場・北米地域やヨーロッパでの展開を視野に入れる。
国内需要の縮小に危機感を募らせているのは焼酎業界だけではない。ビール業界2強のアサヒグループホールディングスとキリンホールディングスは、国内ビール市場の大幅な縮小を受けて積極的にM&Aを展開しており、海外の大手酒類メーカーを買収しながら海外に活路を見出し始めた。
濵田酒造は現地時間の7月4日~5日、イギリスで開催される酒類専門展示会に出品する。これは国税庁と連携したもので、国が輸出強化品目として焼酎や日本酒をリストアップしていることから、今後は展示会にジャパンパビリオンなどを出展する計画があるという。さらに、世界的に健康志向が強まるなかで酒類の好みにも変化が生まれている。カクテルはこれまでアルコール度数の強いベースが主流だったものの、度数が軽いものも好まれるようになった。本格焼酎は、「糖質」や「プリン体」がゼロということもあって、健康ブームに乗る可能性もある。
日本人はどちらかといえば内向き志向とされるが、そのなかにあって鹿児島(薩摩)は地理的・歴史的特性から海外進出を厭わない珍しい県民性をもつとされる。明治維新などで遺憾なく発揮されたその進取の気性を焼酎に込めて、果てしなく広がる海原(マーケット)に船出する。
【データ・マックス編集部】
<COMPANY INFORMATION>
代 表:濵田 雄一郎
所在地:鹿児島県いちき串木野市湊町4-1
創 業:1868(明治元)年
設 立:1951年
資本金:3,000万円
売上高:(21/6)約137億5,000万円
URL:https://www.hamadasyuzou.co.jp/法人名
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