2024年11月21日( 木 )

ローカル線の存廃に関する協議会(2)

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運輸評論家 堀内 重人

厳しさが増したローカル線の状況

 国土交通省は、2023年度の政府予算の概算要求に提言の内容を反映させる方針である。ローカル線をめぐっては、JR西日本が同年4月に、「自社単独での維持が困難」とする赤字の17路線30区間の収支を公表しており、自治体に経費負担と協議を求めている。

 JR西日本が公表した線区には、芸備線や山陰本線など、中国地方の在来線の4割強に当たる10路線21区間が含まれ、うち19区間では19年度の輸送密度が1,000人を下回っている。19年度は、コロナ禍前の年度であり、現状はより厳しくなっている。

 ただし輸送密度だけ見て判断するのは、早計である。山陰本線の浜坂~鳥取間は、大阪~鳥取間を結ぶ特急「はまかぜ」が運行されている以外に、同じく山陰本線の益田~小串間は優等列車こそ運転されていないが、JR西日本が誇る超豪華クルーズトレインの「トワイライトエクスプレス瑞風」(写真1)が運行されるなど、輸送密度だけで判断できない部分がある。また、かつて集中豪雨により山陽本線が不通になった際、貨物列車を山陰本線へ迂回して対応した。これなどは、有事の際のリダンダンシーともいえる。

「トワイライトエクスプレス瑞風」(写真1)
写真1(トワイライトエクスプレス瑞風)

 JRグループでは、JR東海を除く5社が輸送密度を公表している。JR東海の場合、鉄道を廃止してバス化が検討されそうな路線は、名松線ぐらいしかなく、東海道新幹線の利益で十分に名松線の損失を、内部補助していた。

 コロナ禍以前の19年度に、輸送密度が1,000人を下回った路線は、その後廃止された路線などを除くと、全国で61路線100区間に上る。そのなかでも、輸送密度が1,000人を下回った線区は、中国地方や北海道、東北、九州南部に集中しており、鉄道の路線廃止が進めば、公共交通の空白地域が拡がることが、懸念される。

 JR九州の管内では、日豊本線の佐伯~延岡間、筑肥線の唐津~伊万里間、筑豊本線の桂川(けいせん)~原田(はるた)間、豊肥本線の宮地~三重町間、肥薩線、吉都線、指宿枕崎線の指宿~枕崎間、日南線の油津~志布志間が該当する。

 この場合、日豊本線の佐伯~延岡間は、特急「にちりん」が通っており、都市間連絡輸送を担っている。

「トランスイート四季島」(写真2)
写真2(トランスイート四季島)
写真3
写真3

    有識者検討会では、平時の乗客が1日当たり50名未満の路線や区間は、バス転換も視野に入れるなど、厳しい見解も示されているが、利用者を増やせる可能性のある線区や、峠越えなどで生活圏が変わるため、極端に輸送人員が少ない区間も存在する。とくに磐越西線や陸羽東線などでは、極端に輸送密度が低い区間が存在するが、これらの線区はJR東日本のフラッグシップトレインである、「トランスイート四季島」(写真2)が運行されており、喜多方や鳴子温泉に立ち寄るなど、ローカル線があるため、地域活性化に貢献しているといえる(写真3)。

 

(つづく)

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