日韓関係の火種、日本企業資産現金化をめぐる韓国の動向(前)
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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏
徴用工訴訟問題とは徴用工訴訟問題とは、第二次世界大戦中、日本の統治下にあった朝鮮半島に住む人々が、日本で強制労働させられたとして、日本企業に対して損害賠償を求めた訴訟についての問題を指している。
韓国の最高裁にあたる大法院は2018年、日本企業に対し賠償金の支払いを命じる判決を下した。日本側はこの判決について、1965年の「日韓請求権協定」で賠償は解決済として、支払いを拒否、双方の対立が深まっている。2022年6月現在、この問題で訴訟を提起された日本企業は、三菱重工業、不二越、IHIなど計115社にのぼり、原告数は延べ1,000人超となっている。
そもそもの始まりは12年10月。韓国の元徴用工が日本企業を相手に起こした損害賠償訴訟だ。韓国の最高裁は18年10月、原告1人あたり1億ウォンの支払いを命ずる原告勝訴の判決を出した。この判決に対して、被告の三菱重工業は1965年の「日韓請求権協定」で、この問題は解決済みとし、支払いに応じなかった。
これに業を煮やした原告側は、翌19年3月、韓国内にある同企業の資産の差し押さえを大田地方裁判所に申請。押収命令の効力が発生したのは20年12月末で、三菱重工業は即時抗告した。
その後、21年9月に抗告は棄却され、同地裁は新たに5億ウォン相当の資産売却の執行を認める判決を出したが、三菱重工業は4月にこれに対しても再抗告していた。原告が勝訴判決にたどり着くまでに要した歳月は13年だが、訴訟問題はいよいよ日本企業の資産現金化という段階に差し掛かり、両国の外交問題として急浮上した。もしも、日本企業の資産が実際に現金化されたら、日韓関係に甚大なダメージを与えることが予想されるので、韓国政府による問題解決の動きが慌ただしくなっている。
日韓の立場の違い
日本政府は、1965年の「日韓請求権協定」ですべての賠償は済んでおり、18年10月の韓国最高裁の判決は容認できないという立場をとっている。さらに、このような判決に対して日本側は「韓国は国際ルールを尊重しない国だ」と主張した。日本は元徴用工問題の解決方法として請求権協定の規定に従い、第3国の委員を含めた仲裁委員会を開いて、問題を解決しようと提案していた。ところが、文在寅前大統領は日本の提案を一蹴し、協力に消極的だった。
協定に紛争解決の手順が決まっていた場合、その手順を守ることが常識だが、韓国政府は何を過信していたのか、国際法を無視した態度を貫いたため、韓国は「国際ルールを守らない国」になってしまった。韓国が日本の仲裁提案を断ったことで、国際的な信用が失墜したのは間違いない。
韓国では新政権が誕生し、日本との関係改善に意欲を示している。しかし、日本政府は元徴用工問題の根本的な解決なしには、日韓首脳会脳などに同調できないという厳しい姿勢で臨んでいる。
そんな状況下、韓国政府は日本企業の資産現金化が実行されたら、最悪の事態に陥る可能性があるため、それを防ぐための対応に腐心している。解決策の1つとして現金化しない代わりに、韓国政府が日本企業が支払うべき賠償金を肩代わりし、後でそれを日本企業に請求する、もしくは請求しないで済ませるという案が浮上している。
(つづく)
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