LNGの価格高騰と需要ひっ迫の原因は?(前)
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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏LNGとは何か
LNGは「Liquefied Natural Gas(液化天然ガス)」の略で、メタンを主成分とした液体の天然ガスを指す。
天然ガスを輸送、保管するため、気体の天然ガスを、マイナス162℃に冷却すると、体積は約600分の1となり、液化天然ガスとなる。日本や韓国のように周囲を海に囲まれた国では、パイプラインを引くことができないため、天然ガスを輸送する際には体積を小さくして、輸送や保管の効率アップを図っている。しかし、ヨーロッパのようにロシアと陸地でつながっている国々では、通常、天然ガスはパイプラインで気体のまま供給されることが多い。しかし、パイプラインの敷設ができない状況では、天然ガスはいったん液化され、船によって運ばれる。船で運ばれてきたLNGは、タンクに備蓄され、利用される際に海水で常温に温めて気化させることで、燃料として利用される。
LNGを運ぶLNGタンカーの建造技術は、今のところ韓国の造船会社の独壇場で、LNGタンカーの注文が殺到している状況となっており、すでに今後5年間の建造予約が入っているという。
ロシアがウクライナ戦争をきっかけに、今までパイプラインを通して欧州に供給していたガスの供給を減らしたことで、世界各国ではエネルギー確保が喫緊の課題となり、エネルギー市場に混乱が生じている。LNGの消費国として、日本は世界1位の座をキープしていたが、中国が冬季オリンピックを控え、青空政策をとることで、中国のLNG需要が急激に伸びて世界1位の消費国となった。LNGは火力発電燃料のなかで、燃焼時のCO2排出量が最も少ない。石炭火力が電力発電の60%以上を占めている中国では、二酸化炭素の排出をできるだけ抑えるため、石炭発電を減らす代わりにLNGの利用を増やしている。
価格高騰の背景は
ロシアが欧州の経済制裁に対抗するため、既存のパイプラインでのガス供給を絞り込んだ結果、そのしわ寄せがアジアのLNG市場に及んでいる。ロシアは実際、ノルドストリームというパイプラインを使ったヨーロッパへのガス供給を先月末に全面中止した。パイプラインの供給量がほぼストップに追い込まれた欧州は、その対策としてLNGに目を向け始めている。その結果、ヨーロッパの国々とアジアの国々がLNGを奪い合うような状況になった。
もし今年の冬が寒くなった場合、来年2月には欧州の天然ガスの在庫が底をつくかもしれない。ロシアがパイプラインの供給をストップしたことも価格高騰の1つの要因であるが、LNG市場に中国という巨大な買い手が現れたことも、価格高騰の大きな要因となっている。
それに加えて、米国テキサス州フリーポートのLNG液化基地で6月に発生した火災事故も、LNG需給ひっ迫の要因となっている。このターミナルは米国LNG輸出の17%を占めているが、今年末まで稼働中止を余儀なくされそうだ。
このような状況下、今年の夏は高温だったため、電力需要まで増加し、欧州とアジアの国々との間で、LNG争奪戦が起こり、価格が高騰している。しかし、エネルギー需要は夏場より冬場の方が、約3倍多くなるので、各国は冬に備え、エネルギー確保に必死となっている。
(つづく)
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