米中半導体戦争の行方は?(後)
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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏「チップ4」を日本、台湾、韓国に提案
「チップ4」は、半導体のコア技術開発力と設計・製造装置に強みを持つ米国が、メモリ半導体に強い韓国、半導体の委託製造に強い台湾、素材、部品、製造装置に強い日本との協力関係を強化し、中国をけん制するのが狙いだ。4カ国が協力することで、「世界の半導体の安定供給に寄与したい」という大義名分を掲げているが、本音はどうも違うようだ。
分野によって若干の違いはあるものの、4カ国の半導体分野の世界シェアは、7割超だ。米国の提案に対して台湾と日本は「チップ4」に同調的ではあるが、韓国は中国のことも考慮しないといけない状態であり、今後どのような展開になるのかは予測できない。
また、韓国は中国から「チップ4」の参加をけん制されている。半導体の約6割を中国に輸出している韓国としては、中国から反発を買い、その結果、半導体輸出が壊滅状態になるおそれもあるため、米国の提案をすんなり受け入れるわけにもいかない。一方、米国は半導体の先端技術を握っており、米国から設計ソフトウェアや製造装置が供給されないと、半導体の生産に支障を来たすだけでなく、技術の発展も望めない。
韓国の輸出のなかで、半導体は稼ぎ頭で、輸出全体の約4分の1を占めている。その半導体輸出の6割は中国向けなので、中国への販売が激減すると、韓国経済は計り知れない打撃を受けることになる。
このような悩みをもつのは、韓国企業だけではない。米国企業の半導体の最大輸出市場も中国である。アップルのような企業は、中国での生産比重が9割近くになるので、米国も半導体の輸出全面禁止などの措置をとるのは、当面難しいのではないかと観測されている。
このような状況下で、中国の半導体産業の成長を最も警戒しているのは韓国かもしれない。半導体には、大きく分けてメモリ半導体と非メモリ半導体という2つの分野がある。メモリ半導体は非メモリ半導体に比べて、設計がしやすく、大量生産に向いている。
中国はハードルの高い非メモリ半導体よりは、メモリ半導体に狙いを定め、集中投資をしている。国を挙げて莫大な資金を投資した結果、メモリ半導体では韓国との技術格差が0.5年にまで縮まったため、今後中国に市場を奪われる公算もかなりあるというわけだ。
また、人工知能、自律走行などの分野において、韓国は中国に1年以上遅れをとっている。韓国でもこのような状況に危機感を抱き始めており、サムスン電子は莫大な投資を計画している。サムスン電子は平沢キャンパスに10年間で171兆ウォンを投資する計画で、米国・テイラー市に170億ドル規模のファウンドリを建設予定である。サムスングループは半導体分野に今後、約300兆ウォン投資する計画がある。サムスン電子は非メモリ分野で「世界一」という目標を掲げたものの、まだ成果は全く上がっていない。
メモリ分野における中国の追撃が激しいなか、非メモリ分野では進展がないため、このままでは、韓国のメモリ神話は終焉するかもしれない。半導体分野を中心に今後ますます米中対立が過熱していくことは間違いない。
(了)
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