2024年12月23日( 月 )

愚の骨頂、ウクライナと南シナ海問題を同列視した安倍首相(7)

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副島国家戦略研究所(SNSI)中田 安彦 氏

 かつてもベトナムと中国は軍事衝突を起こしたが日本は専守防衛を堅持し、ソ連の侵略だけを備えて領土防衛に尽力した。このことは実はアメリカからはものすごく評価されているのである。中曽根政権は米国べったりだが、今の安倍政権のような「反知性主義」の政権ではなかった。だから、日本が豪州やフィリピンに巡視艇や潜水艦のエンジン技術を供与し、間接的に中国をけん制することまでは良いが、直接的に一方的に中国を批判するようなことは厳に避けるべきである。

hinomaru1 またこの点で言えば、6月上旬に日本を訪れ国会で演説していった、フィリピンのアキノ大統領が都内のシンポジウムで行った発言で、中国の台頭をナチス・ドイツと同列視していたのも不要な緊張を煽る形になりかねない。日本はインフラ投資でフィリピンを重要視しているので、フィリピンに安保協力もするというスタンスになっているようだが、このアキノ大統領を操っているのは、2006年までしばらく、フィリピンの駐米大使をしていたデルロザリオという同国の外相であり、どうやら同外相が米国の国防関係者とつながっている。CSISではフィリピンイニシアチブと称して、防衛族のウィリアム・コーエン元国防長官とデルロザリオらが対談するイベントも行われていた。

 安倍晋三首相が昨年のダヴォス会議で「日中関係は第一次世界大戦前の英独関係である」ということを述べて、参加者から大きな批判を浴びていることは記憶に新しい。国内における立憲主義を徹底的に無視した安保法制成立への動きなどを合わせて考えると、非常に危険な動きである。

 安倍首相のサミットにおける対中脅威論の長広舌を報道した読売新聞(9日、3面)は、次のように書いている。

 強引な海洋進出を進める中国についての議論は、安倍首相が主導した。議長のメルケル独首相が安倍首相に発言を求める際、「この問題で安倍首相の意見に反対する人はいませんね」と冗談めかしたが、実際に、中国の海洋進出問題は「安倍首相がほぼ一人で発言した」(日本政府関係者)という。

 なんと、この記事は安倍首相に極めて迎合的な読売新聞の記事である。読売をしても、中国脅威論は安倍首相の「一人芝居」だったということを認めざるを得ないということだ。それは各国首脳が南シナ海問題はウクライナ問題とはまったく性質も危機の段階も違っていることを認めているからである。

 安倍首相はまたしても巨大なリスクを日本外交にもたらした。

(了)

<プロフィール>
nakata中田 安彦 (なかた やすひこ)
1976年、新潟県出身。早稲田大学社会科学部卒業後、大手新聞社で記者として勤務。現在は、副島国家戦略研究所(SNSI)で研究員として活動。主な研究テーマは、欧米企業・金融史、主な著書に「ジャパン・ハンドラーズ」「世界を動かす人脈」「プロパガンダ教本:こんなにチョろい大衆の騙し方」などがある。

 
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