熾烈になっている最先端半導体の受託競争(前)
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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏半導体の製造市場
AI、自動運転、データセンターなど、半導体を必要としている新しい産業が規模を拡大させつつある。そのような状況を受けて、半導体は一国の産業の競争力を左右するカギとなりつつあり、半導体を製造する能力がその国にあるかどうかという事が、現在、かつてない重大事となっている。
しかし、最先端半導体を製造しようとすると莫大な投資が必要になるため、よほどの資金力がない限り半導体を自社で製造するのは難しい。よって通常、半導体の製造は、製造を専門にする会社に外注するのが常識となった。
ファウンドリとは、半導体を設計する企業であるファブレスから製造委託を受けて、半導体チップの製造を行う、製造専門の企業のことである。とくに、製造技術の微細化が進むにつれて投資額は増大する一方なので、半導体の設計は自社でしても、製造は外部に委託することが業界に定着している。
ファウンドリ事業において世界をリードしているのは台湾企業であるTSMCである。同社は世界の半導体製造全体の半分以上のシェアを維持し、独走を続けている。2位のサムスン(韓国)とはシェアで3倍くらいの差がある。しかし、サムスンは3ナノ半導体の製造においてTSMCより先に量産に取り組んでおり、業界では、最先端半導体の製造においてサムスンが業界の順位がひっくり返すのではないかと期待されている。
今回は半導体製造のなかでも、最先端半導体の製造市場について取り上げよう。
TSMCの独走が止まらない
製造専門企業にまず求められるのは技術力である。TSMCは今まで業界最大手に相応しい技術力で顧客を引き寄せてきた。半導体業界の技術力を評価する1つの指標として、歩留まり率がある。生産されたチップのなかで、良品がどれほどを占めているかという比率である。TSMCは技術力でサムスンに1~1.5年先行していると言われている。
また、技術力に劣らず製造専門企業に重要なことは、顧客を確保しているかどうかである。巨額な投資をしているなかで、もし顧客が確保できないと、大変なことになるからだ。TSMCの創業者は今のような時代が到来することを予見したうえで会社を設立し、ファウンドリという事業を開拓しただけあって、IC設計分野で500社以上の上顧客を確保している。多くの顧客を確保しているということは仕事が多く、現場で経験が蓄積され、改良を重ねるチャンスがあることを意味する。それが結果となってTSMCの独走が続いているわけだ。
ところが、天下のTSMCも、3ナノ半導体の歩留まり確保には難航しているのではないかという憶測が飛び交っている。TSMCは3ナノメートルプロセスの製品を7月に量産する計画であったが、それが9月末に延期され、今度また12月末に延期された。3ナノメートルプロセスの場合、前世代の5ナノメートルプロセスに比べると、集積素子の密度は50%も上がるので、さらに高いコストと技術難易度が要求される。
一方、ライバルであるサムスンが3ナノメートルプロセスに採用したGAAという技術は、既存の技術より電流の制御に有利で、量産技術が確立されれば、最先端半導体の製造においてサムスンはTSMCを追い抜くかもしれない。ところが、GAAは新しい技術なだけに、まだ品質検証が完了したわけではなく、顧客企業はサムスンの推移を見守っている。TSMCも同技術を2ナノメートルプロセスから導入予定である。市場調査会社オムディアによると、2024年から3ナノ半導体(16.1%)は前世代の5ナノ半導体(15.9%)より市場シェアが大きくなるという。
(つづく)
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