熾烈になっている最先端半導体の受託競争(後)
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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏3ナノ半導体ではサムスンが一番乗り
半導体を構成するトランジスタは、電流が流れるチャンネルと、チャンネルを制御するゲートで成り立っている。サムスン電子が3ナノメートルプロセスで導入したGAAという技術は、電流が流れるチャンネル4面をゲート(Gate)で囲む技術である。チャンネル3面を囲むこれまでのFinFET技術と比べて、チップ面積を削減でき、消費電力も抑えられるメリットがある。サムスンによると、今回量産を開始したGAAによる3ナノ半導体は、同社のFinFETベースの5ナノ半導体と比べて、電力消費は45%削減でき、性能は23%向上、チップ面積は16%縮小されているという。2023年に予定している第2世代のGAAにおいては、電力消費を50%削減、性能は30%向上、チップ面積は35%まで縮小できるという。
サムスンは3ナノ半導体の量産に6月に成功し、7月には出荷を開始した。2024年には第2世代のGAAによる3ナノ半導体を導入予定だ。従来の技術である立体構造トランジスタ(FinFET)技術を使わずに、新しい技術GAAで性能アップを実現している。一方、TSMCの3ナノ半導体は立体構造トランジスタ(FinFET)技術を採用している。しかし、GAAは新しい技術なだけに、サムスンは歩留まりの確保に苦労しているようだ。
今後、サムスンがGAAによる3ナノ半導体の良品率を改善できない場合は、QualcommやMediaTekといったファブレス企業は、サムスンに半導体製造を委託せず、高くついてもTSMCに委託するようになるだろう。しかし、サムスンが良品率の改善に成功すれば、逆にTSMCの顧客を奪うことも可能になるだろう。
今後の展望は?
現在ファウンドリ市場でTSMCは、サムスンの3倍近くのシェアでリードしているが、最新3ナノ半導体での競争は振り出しに戻っての再スタートになるため、現在のシェアは大きな意味はないと指摘する専門家もいる。サムスンが大きくリードされている分野は、ファウンドリのなかでもプロセスが大きい旧型半導体の製造についてであるようだ。7ナノメートル以下の最先端プロセスでのシェアの差は、もっと小さくなるという。現在7ナノメートル以下の最先端プロセスでの比率は、全体の31.9%となっている。今後このシェアは伸びていくので、最先端プロセスでの対決が大事になる。
サムスンが最先端プロセス半導体の良品率の改善に成功すれば、TSMCと良い勝負になるのではないかという予測もある。半導体の最先端化が進むなか、実際に最先端半導体をつくれるのは、この2社しかないので、今後どのような展開になるのか、世界から注目されている。3ナノメートルプロセスで新しい技術を先に導入し、ゲームを変えようとするサムスンと、それを迎え撃つTSMCの対決には興味津々である。
(了)
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