2024年12月23日( 月 )

【福岡市長選】福岡市民の皆さん!投票へ行こう

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

福岡市役所 イメージ    11月15日、福岡市の恒例の大売り出しである「福博せいもん払い」が始まった。福岡市内の百貨店や商店街などが参加している。博多下川端で漬物商を営んでいた、八尋金山堂の八尋利兵衛氏の発案で始まった大売出しで、今年で144年となる。今年は新型コロナウイルス感染症による行動制限が撤廃され、多くの買い物客でにぎわうことが期待されているが、せいもん払い最終日の20日は、福岡市長選挙の投開票日でもある。

 今回は、現職に対し新人2人が挑む構図であり、3期12年にわたる現職の市政運営に対する評価が問われる。いずれも無所属で、現職の高島宗一郎氏(48)、新人の熊丸英治氏(53)、前市議で新人の田中慎介氏(44)=立民、国民、社民推薦の3候補によって選挙戦が繰り広げられている。1972年に福岡市が政令市となって以来初めて、共産党を含めた非自民勢力が統一候補を支援しており、その点でも注目に値する。ただ、現職の選挙公約の発表が告示直前になったこともあり、今一つ盛り上がっていないのが現実だ。

 福岡市民の反応を聞いてみると、「今回も(現職で)決まりでしょう」という冷ややかな反応が少なくない。国政に対する失望やあきらめの思いは、そのまま身近な自治体のトップを決める選挙に対する反応にも直結しているようだ。

 「一緒に福岡の未来へ種をまこう」と題する高島氏の選挙公約は、子育てしやすいまちづくりを掲げ、子どもが多い世帯の負担軽減や困難を抱える子どもの支援などを進めることや、経済対策としては、スタートアップ支援や国際金融機能の誘致を掲げ、厳しい状況が続く商店街や中小企業への支援も盛り込んだ。子どもの自己負担医療費を1医療機関につき月額500円とした実績を強調している。

 福岡市役所の15階にのぼって街並みを眺めると、以前見えていた、屋上に天神の“T”を中心に両サイドに横顔が描かれた特徴的なマークの看板があった天神コアをはじめ、イムズや福岡ビルなどの姿は、天神ビッグバンで変貌している。

 ビルの新築によって、市税収入が増え、そこから子育て支援などの財源に充てる。そうした都市の成長路線を重視する高島市長は、安倍晋三総理(当時)に最も近い自治体首長といわれた。安倍氏の路線と高島氏の路線は、成長重視という点で共通していた。今回の立候補に際しても、「時計の針を12年前に戻すわけにはいかない」と語っている。

 対する田中氏は、告示日、天神ツインビル前での出発式で、「見せかけだけの成長に固執している」と高島氏の取り組みを批判していた。お互いに意識した発言といえよう。田中氏の「新時代の扉を開こう」と銘打った政策集は、福岡市の成長路線に対して、市民生活の実情を訴えている。1人あたりの市民所得の増減率が、北九州市や仙台市、名古屋市などと比較して、低迷した状況にあるとするグラフを載せ、福岡市民ひとりひとりの生活は豊かになっていないと主張する。公約に学校給食の無償化とともに、地産地消、安全な地元産の農水産物を取り入れ、オーガニック給食を進めることで、子どもたちの健康づくりと地元の農業生産者も支援することを掲げる。このあたりは子育て中で、教育への関心が高い母親層の支持をつかむだろう。

 両候補の動きを追っていくと、それぞれに課題もみえてきた。

 前述したようにこれまで高島氏の強力な後ろ盾であった安倍元総理が7月の参院選の最中、凶弾に倒れた。安倍氏在任中、高島氏は自身に対する選挙戦支持を、自民党市議団を飛び越えて直接、官邸に要請してきた。自民党市議団とは、対立もしばしば。2017年、福岡空港の出資問題では議会が深夜におよぶこともあった。それが新型コロナウイルス感染症対策から、両者に歩み寄りがみられるようになり、市政4会派に事前に根回しが行われ円滑なコミュニケーションが図られるまで関係は修復した。今月14日には、自民党市議団幹部の事務所前で、高島氏の街頭演説会も行われた。前回の余裕とくらべて、今回、危機感をもっているようにも感じる。

 11月15日夜、西鉄ホールで開かれた田中氏の個人演説会が開催された。主催は「福岡市から政治をかえる会」。福岡市民クラブや共産党市議団など野党会派の代表に加え、社民党党首の福島瑞穂参院議員、共産党の穀田恵二国会対策委員長、れいわ新選組の辻恵元衆院議員も出席した。国民民主党はメッセージを寄せたが、出席はなかった。首長選挙に国政を持ち込むことが支持を得ることにつながるのかどうか。

 選挙の状況は以上のような課題をもちながら、展開されているが、肝心の投票率はどうなるだろうか。

 福岡市選挙管理委員会が公表している選挙人名簿の登録者は、129万9,665人。約130万人の有権者がいるが、前日までに投票を済ませる人は、組織的な呼びかけで行く人や、もともと政治に関心があり、選挙に行くコアな層と見るべきだろう。

 福岡市長選挙の投票率は、1990年に初めて40%を下回った。過去最低投票率は1994年11月の31.67%。その際も、現職と新人の一騎打ちの構図だった。期日前投票者数は、告示から10日目となる11月16日時点で、109,049と、前回の同時期の72,227よりも1.5倍増えている。

 ある与党会派の福岡市議は「期日前がかなり伸びているとのことですが、現職にかなり強く出ているようです。個人的な肌感覚ですが、当日の投票率は少し下がり、トータルで2~4ポイントアップすると予想しています」と語った。

 現職の姿勢の変化は、ある意味福岡市を変えるチャンスと捉えたい。160万市民の声はやはり重い。市民にとってどういう行政、トップは誰がよいのか、いずれの候補者も方法論の違いはあるが、市民生活をより良いものにする思いは共通する。地方の首長選では、高齢の現職のみしか出ず、無投票で決まってしまうところも少なくないだけに、自分の思いに近い人を、重視する政策で選べるのは、かなりありがたい。

 皆さんの1票が、福岡市政を変える。投開票日まで今日を含めあと4日。ぜひ、投票に行っていただきたい。

【近藤 将勝】

関連キーワード

関連記事