アフターコロナ・インバウンド再開で観光業はどう変わるか(前)
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(株)ホテルオークラ
福岡相談役 水嶋 修三 氏
(株)西日本日中旅行社
代表取締役 治田 敏 氏コロナ禍の影響で長らくストップしていたインバウンドが、ついに再開した。10月11日、政府は観光目的の個人旅行による入国を再開することを決定。1日当たりの入国者数上限も撤廃され、いよいよ外国人観光客が戻ってくる。10月19日に日本政府観光局(JNTO)が発表した9月の訪日外国人数は20万6,500人。コロナ禍以前の2019年9月は227万3,000人だったことと比較すればまだまだ少ないが、福岡の市街地でも外国人観光客の姿を見る機会も増えてきた。
この現状をどう見るのか。また、今後の観光業界はどう変わっていくのか。長年福岡の観光・旅行業界に携わってきた(株)ホテルオークラ福岡相談役・水嶋修三氏、(株)西日本日中旅行社代表取締役・治田敏氏にお話をうかがいながら、今後の展望を紐解いていく。
東南アジア観光客が存在感を増す
──いよいよ海外からの観光客が戻ってきました。西日本日中旅行社では、コロナ前は中国人の団体旅行を多数扱っていらっしゃいましたが、コロナ後の状況はいかがでしょうか。
治田 まだまだ本格的なインバウンド復活はこれからというところですが、いくつか目立って変わっていることもあります。東南アジアからの団体旅行が増えました。インドネシア、マレーシア、ベトナム。円安ということもありますが、東南アジア諸国の経済的な伸びは目覚ましいですね。安い労働力としての技能実習生や留学生の送り出し国だと思っていたら大間違い。いわゆる「ビッグマック指数」(※)で見ても、東南アジア諸国は日本とほとんど変わらない。タイやシンガポール、ベトナムは日本より高いくらいです。
──とくに急速な円安が進んでいる現在、海外から見た日本は旅行に行きやすい国になっています。
治田 インドネシアは2億7,000万、ベトナムは9,800万、タイは7,000万、マレーシアで3,200万の人口があります。これだけの人たちが、これから豊かになって日本に旅行に来る。そして、中国が海外旅行を再開したら、またものすごい人数が来ることになります。日本の観光地で、さまざまな国の言葉が飛び交うようになるでしょう。すると、またオーバーツーリズムの問題が出てきますね。
旅行支援策は本当に正しかったか
──コロナ禍で打撃を受けた旅行業を支援するために、国は2020年にはGoToトラベル事業、そして今年スタートした全国旅行支援事業を行いました。旅行業を支援しようという政府の動きは、現場から見てどうでしょうか。
治田 同業者の話を聞いていると、「本当にその事業は必要ですか?」という声も多いです。零細の旅行業者や宿泊施設からすると、補助金を受け取るための手続きや事務局とのやり取りが本当に煩雑で、大きな負担になります。お客さまは安く泊まって食べたり飲んだりできるんだからうれしいと思いますが、我々としてはこの事務コストがバカにならない。
──なるほど。たとえば一件あたり1,000円の補助金を受け取るために、社員の方が残業することになったとしたら、まったく計算に合わないですね。
治田 もちろん旅行に出かける需要を喚起するという意味はあると思いますが、税金を使ってまでやる意味があるのかどうか。そもそも、皆さん旅行に行きたいという気持ちは十分あるんですから、行動制限を緩くすれば、「待ってました!」と自然に出かけて行くでしょう。
※ビッグマック指数:マクドナルドの主力商品・ビッグマックの価格を通じてその国の経済力を測る指標。日本は2.83ドル(税別390円)に対し、シンガポール4.24ドル、タイ3.5ドル、ベトナム2.95ドル、マレーシア2.45ドル、インドネシア2.34ドル(8月5日現在)。 ^
(つづく)
【文・構成:深水 央】
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