原発の輸出再開に動き出した韓国(前)
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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏見直されている原発
一時期、原発の危険性がクローズアップされ、脱原発政策を掲げる国もあったが、原油高のなか、石炭や石油に代わるエネルギーとして原子力発電が見直され、世界各国で原発の新設が計画されている。
米国の調査会社によると、世界の原発市場規模は、約100兆円近くになるという。このような状況下で、韓国は原発を半導体や造船などに次ぐ新たな輸出産業に位置付け、原発産業育成と輸出再開に向けて、国を挙げて注力する方向に舵を切った。
韓国は国土が狭く、日照量も少なく、風の方向も一定ではない。そのため太陽光発電や風力発電は期待するほどの結果が出ず、あまり向いていないことがわかっている。天然ガス価格の高騰で、エネルギー政策の転換が求められる現在、ベース電源としての原発が再注目されている。
原発輸出に関する最近の動き
韓国は、2009年にUAE(アラブ首長国連邦)から原発2基を400億ドルで受注し、世界を驚かせた。しかし、その後、これと言った原発輸出の実績はない。さらに文前大統領政権が脱原発政策を掲げていたことから、韓国の原発産業は崩壊の危機に瀕していた。ところが、政権が変わって、尹大統領が就任してからは、脱原発政策を放棄し、原発産業を育成していくという方針に転換。韓国の原発産業は久しぶりに活気を取り戻している。
とくに、ポーランドに出力1,400MW規模の原発を2~4基建設する予定だというニュースが流れたことで、2009年にアラブ首長国連邦(UAE)のバラカ原発を受注して以来、13年ぶりに輸出を再開ができるのではないかとの期待が高まっている。このほかにもチェコ、エジプト、サウジアラビアなど複数の案件が予定されている。チェコ政府は8兆ウォン(約8,280億円)規模で、ドコバニに原発1基を建設する事業を推進しており、ポーランドと同様、韓国・米国・フランスが競合している。優先交渉対象者は24年に選定され、工事は29年に着工する。
韓国原発の実力
韓国はエネルギーの自立を目指して1958年に原子力法を制定し、米国から原子力技術を受け入れた。まず、核燃料の設計技術を確保する必要があったが、82年に達成。その後、原発の系統設計技術も確保できるようになり、原発の建設、運営ができる数少ない国の1つとなった。
2010年には韓国型の原発である「APR1400」の商業運転を開始した。また、韓国は米国よりも先に小型原発を開発した。「APR1400」は原発の「元祖」で、世界で一番厳しい米国の原子力規制機関から設計認証書を受けるなど、技術力と安全性が認められている。認証を受けたのは、ウエスチングハウスとGEなど5件のみで、外国の企業がこの認証を受けたのは初めてだという。
「APR1400」は1992年から10年間、韓国水力原子力などが2,300億ウォン(約240億円)をかけて開発した次世代原発モデル。発電容量は1400MW、設計寿命は60年、発電原価は従来モデル(OPR1000)より10%以上削減。2011年に福島原発で発生した事故を予防できる多重安全装置を備えているというのが大きな特徴となっている。なお、フランスのアレバと日本の三菱重工業も認証を申請したが、承認されなかった。
韓国では現在、国内で24基の原発が稼動しており、稼働率が高い。稼働率が高いということは故障が少ないことを意味している。古里原発の運転開始は1978年、このような稼働実績も、原発を受注する際の重要な評価になるようだ。韓国の今回のポーランド受注が順調に進めば、そのほかの輸出プロジェクトにも弾みがつきそうだ。
(つづく)
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