2024年07月16日( 火 )

原発の輸出再開に動き出した韓国(後)

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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏

米国企業からのけん制も

電気 送電 イメージ    ウエスチングハウスは10月21日、「APR1400」の輸出中止を求める知識財産権訴訟を米国連邦地裁に提起した。韓国がポーランドと原発輸出のための意向書(LOI)を交わした直後のことだ。

 同社は「APR1400」のコア技術は、自社の技術を用いてつくられたもので、韓国水力原子力は知的財産権を侵害したと主張している。従って、ポーランドに原発を設置する前に、同社の同意を得る必要があるとしている。また、この案件を推進するためには、米政府の許可が必要になるということも付け加えている。

 「APR1400」に使われている技術は、連邦法により海外への無断での移転が禁じられており、アメリカ政府の許可なしに、韓国企業が第3国に輸出することはできないとされている。

 ウエスチングハウスが韓国水力原子力を相手に、特許問題で訴訟まで起こしたのは初めてのことである。これによって、ポーランド、チェコ、サウジアラビアの新規原発プロジェクトの受注にも影響が出るのではないかと業界では懸念する声が挙がっている。

 一方、韓国水力原子力では訴訟に対して慎重に対応していくとしつつも、ウエスチングハウスによる提訴は、ポーランドプロジェクトで韓国をけん制する目的があるのではないかと分析している。

 UAEの原発を受注した際にはたしかに、ウエスチングハウスの技術を取り入れていたが、技術料を支払っているし、その後、技術を開発し、米国に105件の特許申請もしているので、それほど動揺することはないとしている。なお、その後、韓国水力原子力は、バルブ、系統、制御棒、冷却システム、鋼板、出口ノズルなど多分野における技術を獲得しているという。

 韓国の原発はコストが安く、安全性も高いことが証明されている。今回の訴訟は、今後韓国が米国のライバルとなる可能性が高いので、出鼻をくじく狙いがあるのではないかとの意見が多い。また、訴訟が長引くようだと、何らかのかたちで受注に影響が出かねないと危惧する専門家もいる。

 環境問題とエネルギー問題を同時に解決する切り札として原発が注目されているなか、韓国は今後、原発分野において、どれほどの競争力を発揮できるようになるのか関心が集まっている。

 「原発は安全」と言っても、一度「暴走」すると、手に負えない大きな事故につながりかねない。何よりも安全性を重視した原発開発に取り組んでくれることを願っている。

(了)

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