2024年11月13日( 水 )

世界史に名を刻むチャンスをフイにした安倍首相・戦後70年談話(4)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

副島国家戦略研究所(SNSI)中田 安彦 氏

fukei_tokai いずれにしても談話は確定してしまった。安倍首相は談話を「ことば」だけに終わらせないためにも、「ワルシャワの跪き」に匹敵するような行動を示すべきだ。「今更謝罪して何になる」と考える向きもあるだろうが、そういう時だからこそ「相手の懐に飛び込む」ということも重要だ。何もそういう誠意を示したからといって、いきなり賠償を求められるわけではあるまい。これまでの日本政府の謝罪が東アジアの政府当局者に誠意を持って受け取られなかったのは、それが上辺だけのものではないかと受け取られていたからだ。

 日本が先の大戦で「侵略」をしたかどうかという問題でも、一人の閣僚が「侵略を認めた」あと、別の保守派の閣僚が「それでも日本は良いこともした」というふうにちゃぶ台をひっくり返す発言をしてしまうので、台無しになってしまったりしたことが以前もよく起きた。

 今度の談話が出たあとでも、安倍首相のお気に入りである稲田朋美自民党政調会長(英語ではpolicy chief)が、15日に靖国神社で「極東国際軍事裁判(東京裁判)を検証する組織を党内に設置する意向を示した」という。これは稲田氏の持論なのだろうが、よりによって靖国神社でそういうことを口にするのは、前向きな安倍談話を台無しにする動きだろう。東京裁判が「勝者の裁き」であったことは論をまたないが、だからといって政治家がそれを蒸し返して何になるのか。稲田政調会長は「ポスト安倍」の候補と言われているが、こういう見当違いの政治家が、自民党の中枢に残り続ける限り、「歴史認識」の問題はまだまだ中国や韓国の指導者にとって、便利な政治カードで在り続けるに違いない。

 歴史認識問題を中韓が利用しているのはそのとおりである。それを封じるのは安倍首相が岸信介元首相に言及し、A級戦犯を含めた過去の政治指導者から「決別」することを明瞭にステートメントすることだった。そうすれば、安倍晋三首相は、「世界史に名前を残す政治家」になれたのに。今回の談話は「アメリカの評価」は高いが、それ以上ではない。安倍首相は本当に千載一遇のチャンスを逃したのである。

(了)

<プロフィール>
nakata中田 安彦 (なかた やすひこ)
1976年、新潟県出身。早稲田大学社会科学部卒業後、大手新聞社で記者として勤務。現在は、副島国家戦略研究所(SNSI)で研究員として活動。主な研究テーマは、欧米企業・金融史、主な著書に「ジャパン・ハンドラーズ」「世界を動かす人脈」「プロパガンダ教本:こんなにチョろい大衆の騙し方」などが

 
(3)

関連キーワード

関連記事