ストが韓国経済に深刻な影響(後)
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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏ストの影響がじわじわと拡大
2万人以上のトラック運転手が参加したとされる今回のストは、12月4日で11日目に突入し、韓国のサプライチェーンの混乱は一段と拡大している。
この混乱を収拾するため、政府は11月29日にセメント業界のトラック運転手に職場復帰を命じている。韓国の法律では輸送に重大な支障をきたす場合、こうした命令を発動して労働者に業務復帰(業務開始命令)を強制することができる。政府が命令を発動すれば、韓国史上初めての事態となる。さらに業務復帰にも応じなかった場合は、ライセンスの停止、取り消しといった強硬手段がとられる。
今回のストの影響が最も大きいのはやはりセメント、生コンなどの建設現場だ。セメントや生コンが出荷できないことにより、全国で行われている公共工事に支障をきたし、釜山では46の公共工事のうち5カ所で日程に遅れが生じている。
とくに現在、建設業界では江原道のデフォルト宣言以来、その波紋が広がり、資金市場が冷え込み、連鎖倒産の恐怖に苛まれている。そのような厳しい状況下で、工期の遅延や原材料不足が起これば会社の存続が危うくなってしまう。
「売り切れ」となってガソリンの販売ができないガソリンスタンドは全国で70カ所以上。筆者が普段利用しているガソリンスタンドも、先日ガソリンの在庫がなくなり、給油できなかった。産業だけでなく、日常生活レベルでも影響が出始めたわけだ。ガソリンスタンドは数日分の在庫しか保有していないようで、ガソリン販売ができないガソリンスタンドが続出するかもしれない。
その他、現代自動車やポスコなどの大企業は、ストライキのために減産を余儀なくされた。また、タイヤ大手のクムホタイヤは貨物連帯のストが長期化しそうなことから、生産調整に入った。加えて、釜山や仁川などの港湾も、貨物連帯の輸送拒否と物流の支障が深刻で、コンテナ蔵置率が80%を超え、港湾の運営が事実上マヒ、国内の物流全体に深刻な打撃を与えている。
今後の展望は
政権が変わり、今まで優遇を受けていた労組は、現政権に対して敵対的である。また現政権も、前政権と癒着していた労組は社会秩序を取り戻す意味でも、妥協してはいけない相手だという認識をもっており、双方の妥協は容易ではない。
しかし、一般市民からすると、現在の労組の主張は贅沢で、なかなか納得できるものではない。労組があるのは大手企業であり、「貴族労組」と呼ばれるくらい、今も良い待遇を受けている。それにもかかわらず時代の流れを無視し、自分たちの要求ばかりを突きつける労組に対し、態度の変化を求められるようになってくるだろう。
韓国経済は課題が山積しており、危機的な状況である。全国民が一丸となって、解決に取り組んでも、解決できるかどうかわからないほどの難局に差しかかっているのにもかかわらず、労組の利己的な行動はいかがなものかと思う。
韓国のトラック会社の場合、会社がトラックを保有するのではなく、個人が自分のトラックで業務に参加していることが多い。従ってトラック運転手は社員というより、個人事業者に近く、厳しい労働条件のもとで仕事をしていることだろう。政府も謙虚にその声に耳を傾け、早期の妥協を図ってほしいものである。
(了)
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