楽天の未来は楽観視できるのか、それとも落胆あるのみか?(中)
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国際未来科学研究所
代表 浜田 和幸モバイル部門の黒字転換を
加えて、「大胆なコスト削減やマーケティング手法も一新する」と社長自らが発表し、赤字決算のマイナスイメージを見事に払しょくしてしまいました。たとえば、楽天モバイルでは全国の郵便局内に設置しているスマホ販売拠点のうち、約7割に相当する200店舗をこの4月末までに閉鎖することを発表。
また、コスト削減のため、自社エリア化されていない地域で利用しているKDDI回線のローミング費用を2023年末までに大幅に削減する計画も明らかにしました。こうしたコスト削減によって本年末までにオペレーション費用を年間1,800億円以上減らすことになると言い切っています。
また、「スペースモバイル計画」と称し、低軌道衛星に搭載したアンテナを通じて衛星とスマートフォンを直接つなぐことで山間部や離島など、先行するNTTドコモ、ソフトバンク、KDDIの3社でもエリア化が困難であった場所が通信可能となるようにし、「全国カバー率100%」を目指すという目標にも言及。これこそ、三木谷氏が尊敬してやまないマスク氏の「スペースX」の最も得意とする分野と重なっているのです。
それと同時に、これまではテレビコマーシャルに頼っていたマーケティングをインターネット中心に切り替えています。楽天グループのサイトやアプリには楽天モバイルのサイトに飛べるリンクが張られ、1日約130万人のアクセスが確保されるようになったとのこと。
そのうえで、2月15日からは顧客紹介キャンペーンを始め、紹介後に契約した新規顧客には7000ポイント、紹介者にも3000ポイントがプレゼントされるというインセンティブが導入されました。三木谷社長曰く「2023年は勝負の年だ。今年中に単月黒字を目指す。モバイルの料金をポイントで支払えば、ほとんどタダになることを口コミで広げたい」。トップによる大号令の効果が期待されているわけです。
先頭に立つ三木谷社長は楽天市場に出店する5万6000店舗を対象にした今年の新春会合でも、参加者に対し同社のスマートフォンへの加入を熱心に要請していました。先行する3社から楽天モバイルへの乗り換えを懇願。この会合には全国から2,500人が来場し、オンラインでの視聴者は3万人を数えた模様です。楽天グループの収益構造を圧迫しているモバイル部門を何とか黒字に転換せねば、という並々ならぬ思いが伝わってきました。
2019年にウクライナ訪問
ところで、ミッキー・ミキタニ氏のビジネス感覚にはイーロン・マスク氏との共通点がこれまで紹介した以外にも多々見られます。たとえば、ウクライナ支援です。ロシアによる軍事侵攻によってウクライナの通信環境は危機的な状況に陥りました。そのときに、救いの手を差し伸べたのはマスク氏で、「スペースX」の持つ通信衛星から電波を受信できる装置を大量にウクライナに提供。その結果、ウクライナはロシアとの戦いにも互角の勝負を演じることができています。
三木谷社長もウクライナ戦争が勃発するや、義援金10億円を在日ウクライナ大使館に届けました。全額、ポケットマネーだと言います。また、人道支援として日本製の発電装置500台をウクライナに送りました。
実は、三木谷社長は2019年、ウクライナを訪問しており、キーウでゼレンスキー大統領と面談したことがあったのです。ウクライナでもさまざまなビジネスを展開しています。具体的には、ウクライナやロシアで広く利用されているチャットアプリのサービスを提供しているのです。日本でもよく使われているラインと似ています。
今回の義援金と発電機の提供について、ウクライナ政府は三木谷社長への感謝を表明しました。ところが、それと同時に、ロシア向けのチャットアプリを停止してほしいと依頼してきたようです。しかし、三木谷社長はこの要望には応じませんでした。なぜなら、このアプリはロシアでも東欧諸国でも人気で、無料かつ安全なコミュニケーション・ツールとして、いわゆるフェークニュースを排除しているからです。ロシアだけを排除するわけにはいかないとの立場を貫いています。
同じようなことがイーロン・マスク氏とウクライナの間でも起きています。先に述べたように、「スペースX」はインターネット・サービスをウクライナに提供しているのですが、ウクライナの軍隊がロシアを攻撃するためにドローン兵器を使用する際にも、この「スペースX」からの電波を使い始めたため、マスク氏は「軍事目的には使ってもらいたくない。双方の民間人の犠牲が増えるからだ」との理由で、ウクライナにNO!を突き付けたのです。
ウクライナを支援するものの、行き過ぎたロシア封じ込めには同意しない、という姿勢において、ミッキー・ミキタニ氏とイーロン・マスク氏には共通するものが感じられます。
(つづく)
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。近著に『イーロン・マスク 次の標的「IoBビジネス」とは何か』、『世界のトップを操る"ディープレディ"たち!』。法人名
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