2024年12月22日( 日 )

福岡・北九州両政令市長を押さえた麻生太郎氏(後)

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北福両市長の後ろ盾の麻生太郎氏

福岡市 街並み イメージ    今回の市長選に際して、自民党は、北九州市議会最大会派「自民党・無所属の会」の要請を受け、元国土交通官僚の津森洋介氏を推薦していたが、麻生氏は津森氏への推薦を承認する決裁書類への署名を拒否した。19年の福岡県知事選挙で、現職だった小川洋氏への対抗馬として武内氏を担いだのが他ならぬ麻生氏である。麻生氏は、もともと与野党相乗りに批判的で、15年の北九州市長選では、「独自候補を立てるべき」と檄を飛ばしたほどだ。

 津森氏を応援する側には福岡県政界をめぐって対立する武田良太元総務大臣がおり、それが麻生氏の気に入らなかったと見える。1月14日に予定されていた菅義偉前首相による北九州での津森氏応援演説は、麻生氏に近い自民党県連関係者などの反対で中止となった。

 市長選において麻生氏が直接、武内氏応援の前面に出ることはなかったが、自民党関係者によると「自民党市議団から離脱した2人の市議以外に、麻生氏に近い県議である中村明彦氏などが武内氏を応援していた」という。中村明彦氏といえば、高島市長の最初の選挙の際も、北九州小倉北区選出でありながら、福岡市の高島氏の事務所に常駐し、17年に福岡市議会が、空港出資をめぐって市長と対立した際には、高島市長に議会対策の指南をしたともいわれる。

 造反議員の動きが功を奏したのか、選挙戦前半までは津森氏圧勝とみられていたが、中盤から追い上げた武内氏が大逆転した。選挙後の2月7日には、選挙で津森氏を支援した市議団が、市長選で党方針に従わなかったことなどを「重大な背信行為」であるとして、同会派を離脱して武内氏の応援に回った三原朝利、大石仁人両氏の処分を自民党県連に要請している。党県連推薦の現職は筑紫野市長選でも敗北しており、県連は首長選挙に弱いというイメージが広がりつつある。今回当選した武内氏は、県連常任相談役である麻生氏に近いこともあり、県連幹事長であった松尾統章県議は「処分するよりも、市長選の総括が必要」と語るなど、統一地方選挙への影響を回避するために、あまり騒ぎを大きくしたくないのが本音だろう。

着々と影響力を強める麻生勢力

 19年の知事選で自民党福岡県連のある重鎮OBは「麻生氏に八木山峠は越えさせない」として、自分の息のかかった現職国会議員を動かして、小川洋氏の再選に力を尽くした。

 しかし、いまだ現職である麻生氏は着々と、実業の面から福岡市へ手を伸ばしてきた。麻生グループの麻生巌氏は、麻生太郎氏の甥にあたるが、100社を超えるグループ全体を統括する(株)麻生の社長である。九州・沖縄財界のトップが集う九州経済連合会の前会長で、現、名誉会長で理事の麻生泰氏は、太郎氏の弟であり、巌氏の父である。

 麻生グループは、本拠地飯塚市にとどまらず、(株)麻生情報システムや麻生商事(株)といった企業や(学)麻生塾など多くが福岡市に拠点を置く。今年1月には、麻生太郎氏の長男で麻生商事(福岡市)社長の麻生将豊氏が日本青年会議所(JC)会頭に就任した。麻生太郎氏も1978年にJC会頭を務めており、親子2代での会頭就任となった。将豊氏は、昨年11月の福岡市長選挙の開票報告会に高島氏の当選を祝って駆けつけた。着実に福岡市を固めていっており、相対的に山崎拓氏や太田誠一氏は過去の人になりつつある。

 福岡県議選に目を移してみると、44ある福岡県議会の選挙区のうち、とくに筑後市や八女市・八女郡など県南部地域において、今回は激戦が予想されており、20年ぶりの選挙となる見通しである県政界のドン、蔵内勇夫氏も若手市議とともに、若い世代とのトークイベントを開催するなど足元を守ることに必死である。

 統一地方選挙を控え、自身の選挙のことで頭がいっぱいな地方議員をよそに、麻生氏は北九州、福岡両政令市の首長を事実上掌握し、着々と基盤づくりを進めている。

(了)

【近藤 将勝】

(前)

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