【特集 建設業界と労働災害】福岡の死亡災害発生数は減少 重要度を増す作業員間の相互扶助
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建設業は一般的に「きつい」「汚い」「危険」の、いわゆる“3K”のイメージで語られることが少なくないが、近年、建設現場における安全対策への意識は高まっている。それだけに、死亡者を出した建設現場は、否応なしに目立ってしまう。
危険予測はどこまで可能なのか
福岡市博多区板付3丁目の「令和4年度市営板付住宅新築工事」現場において、3月2日、現場作業中だった会社員・田中義夫氏(34)が鉄製資材の下敷きになり死亡した。死因は失血。
第一報では、2日午前10時48分ごろ、クレーンで吊り上げられた鉄製の荷が落下、その下敷きになり、死亡したとされていた。その後、福岡県警察と労働基準監督署の調査が進められるなかで、当時の状況が少しずつ浮き彫りになってきた。同工事の発注元である福岡市・住宅都市局によれば、山留め工事で使用されるシートパイルのトラックへの積み込み作業中に荷崩れが起き、当該男性はその下敷きなったとのこと。前項の話にもあった、業界内で共有された内容とも符合することから、何らかの原因で崩れてきたシートパイルの下敷きになった点に関しては間違いない。
残念ながら、建設現場で死亡者が出てしまうケースは少なくない。2022年7月には、福岡県久留米市の建築工事現場で、油圧ショベルのバケット部分に社員を乗せ昇降させるなど、本来の用途から外れた使用によって、搭乗していた社員が墜落死する事故が発生。当該工事を担当していた(株)アイエム特基は、労働安全衛生法違反の疑いで書類送検された。
建設業の労働災害死亡者数推移
厚生労働省労が公表した「令和3年労働災害発生状況の分析等」によると、17年以降減少傾向にあった建設業の労働災害による死亡者数は、21年に増加に転じ、288人(前年比+30人)となっている。全業種の約3割が建設業となっており、労働災害減少に向けたさらなる取り組みが必要不可欠となっている。
また、九州地方整備局が公表した、16~20年度における時間帯別の事故発生率を見ると、事故発生のピークは午前11時ごろで、次いで午後2時ごろとなっている。
さらに作業進捗度別で見ると、作業初期段階における事故発生件数が全体の4分の1以上を占めており、現場への入場期間別では、入場後1週間内で全体の3分の1の事故が発生している。とくに現場初日での事故発生が突出して多くなっている。
こうした傾向が見られるなかで、発生した事故の8割強が下請によるものとなっているが、元請も安全配慮義務を負っている以上、何の責任もないでは済まされない。
一方で、福岡労働局公表「死亡災害発生状況」によると、22年の建設業における死亡者数は9人で、前年比で減少した。しかし、17年以降の推移で見ると、件数は増減を繰り返している状況で安定していないことがわかる。
建設現場における安全対策への意識は昔とは比較できないほどに高まっている。だからこそ、「そんなことするはずがない」と思われる危険な行動を実際に起こされてしまうと、現場監督は監視員としての活動に時間を割かねばならず、結果として、円滑な工事施工に支障をきたすことになってしまう。
個人の資質・道徳観に依るところも少なからずある、建設現場の安全衛生管理。危険予測にも限界があるのだ。だからこそ、常に安全確保のために作業員同士の注意喚起、相互扶助が重要となる。
【代 源太朗】
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