2024年12月23日( 月 )

「国際卓越研究大学」に10大学が応募

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文部科学省 イメージ    文部科学省は4日、「国際卓越研究大学」制度への応募があった10大学を公表した。

 同制度は、世界トップレベルの研究の展開が見込まれる大学を「国際卓越研究大学」として認定し、政府がつくった10兆円規模の大学ファンドの運用益を活用してその研究活動を支援するもの。認定された大学は、年に数百億円の予算支援が最長25年間にわたり受けられる。

 昨年5月18日に国会で成立した「国際卓越研究大学の研究及び研究成果の活用のための体制の強化に関する法律」(国際卓越研究大学法)に基づく制度である。政府が科学技術・イノベーション計画に則り策定した「基本方針」に合わせ、昨年12月23日に第1回目の公募を開始、今年3月31日に締め切っていた。

 応募したのは、早稲田大学、東京科学大学(仮称、統合する東京医科歯科大学と東京工業大学による共同申請)、名古屋大学、京都大学、東京大学、東京理科大学、筑波大学、九州大学、東北大学、大阪大学(申請順)の計10校。今後、文科省内に設置された有識者会議が半年ほどかけて審査・選定を行う。助成開始は2024年度(令和6年度)以降が予定されている。

 日本の国際競争力の低下が叫ばれるようになって久しい。つい先日(4月2日)もNHKスペシャルがこの問題を取り上げ、日本はついにマレーシアやタイにも追い抜かれ34位に転落したことを報じていた。その背景に日本の大学の研究力低下があると指摘されてきたが、「国際卓越研究大学」制度は、はたして政府の目論見どおり、この状況を一挙に打開するものになり得るだろうか。

本当に大学の研究振興につながるか?

 日本科学者会議は、この制度は「ごく少数(6校程度)の大学の『研究及び研究成果の活用のための体制』を強化し『世界トップクラス』の大学を急造しようとする」ものにすぎず、「学術・高等教育全体を振興するのではな」いと警鐘を鳴らしている(22年6月8日声明)。政権の意向に叶った「『稼げる大学』とそうでない大学との格差、『稼げる分野』とそうでない分野との格差が拡大する。金銭的な価値基準による学問分野の選別、序列化が進行することは避けられ」ず、これが日本の研究を貧しくする、と。

 首尾よく「国際卓越研究大学」に認定されても、「大学に対する助成は株式の運用益が一定額を超えた場合に限られるため確実ではない」。さらに「年3%の事業成長」の目標が課されるのであるから、「大学は『稼ぐため』に、授業料の値上げ、収入増につながらない分野の切り捨て、他大学との統合を含めた組織再編、果ては軍事研究への応募など手段を選ばなくなる」というわけだ。

 そもそも、いまの日本の大学が、人参をぶらさげられただけで「世界トップレベルの研究」をひねり出せるとは、筆者には到底思えない。小泉政権以来、一般企業と同じように「稼ぐ」ことを要請されコストカットに血眼になった日本の大学は、若手研究者の新規採用を極力絞ってきた。これが優秀な人材の離脱や海外流出を加速させるに加え、すでにポストを得ている年長者は定年を延長するというダブルスタンダードがまかり通ったために、日本のアカデミアは、構成員も研究の内容も、すっかり「高齢化」してしまっている。人口ボーナスで若々しい頭脳に満ち溢れたアジア諸国の研究力に、わが研究者たちがどこまで対峙できるか、はなはだ疑わしい。

 「国際卓越研究大学」の認定を勝ち取り巨額の資金を得るために、二番煎じの研究、あるいは、政府にウケるのみで実現不可能な研究などをふりかざしているだけの可能性もある。この制度が貴重な公的資金を無駄遣いして終わることにならねばよいが・・・。

【黒川 晶】

法人名

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