2024年07月16日( 火 )

波紋が広がっている韓国株価操作事件(後)

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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏

芸能人が関わった投資案件

株価操作 イメージ    今回のように株価が暴落するようになった原因は、レバレッジを利用したなれ合い通牒取引で株価を吊り上げたが、借り入れに必要な証拠金が不足することになり、証券会社が反対売買をし、株価が暴落したのではないかと金融業界では推測している。

 株式操作が疑われている投資会社はH社で、投資家をすくなくとも1,000名以上募り、投資金額も1兆ウォン以上となっているようだ。投資家は芸能人をはじめ、弁護士、医者など高額所得者ばかりである。彼らは金融当局の追跡を交わすため、顧客名義で携帯電話を購入し、それを会社に預け、その携帯電話で株式の売買をしていたという。

 とくに、今回投資会社が利用した商品は、CFD(Contract for Difference)という差金決済取引で、信用取引と似て非なる派生商品である。CFDの場合は投資家が証券会社に証拠金を預けると、証券会社が投資家の代わりに株式を購入し、その後金額の差だけを決済する。

 たとえば、証拠金率が50%の場合には、投資家が10万ウォンを預けると、証券会社は20万ウォン分の株式を購入する。購入した20万ウォン分の株式が値上がりして30万ウォンになると、投資家は、差額の10万ウォンだけを決済されるし、証券会社は手数料を受け取る。CFDの特徴は、投資家が少ない金額で投資でき、リターンは大きいことである。

 今回H社のレバレッジは2.5倍であったと知られている。差額決済取引は少ない金額で大きなリターンが期待できる反面、株価が下がった場合には、その分損失も大きくなるリスクの大きい取引である。たとえば、証拠金10万ウォンを預けて、20万ウォン分の株式を購入したとしよう。

 株価が5万ウォンに下がったら、損失は最初に預けた証拠金10万ウォンより多い15万ウォンとなってしまう。それに信用取引の場合には、反対売買は即座に行われず、二日間の時間の猶予がある。その間株価が上がるか、証拠金を追加で入れると、反対売買はしないが、差金決済取引はリアルタイムで反対売買が行われる。

 さらに、信用取引の場合、投資家はあくまで自分の名義で売買をするが、差金決済取引の場合は発注をする際の名義はあくまでも証券会社である。信用取引と違って満期もないので、長い時間をかけて株価操作を展開する際にも有利である。韓国の差金決済取引の残額は2019年の1兆2,000億ウォンから2020年末には4兆7,000億ウォンに急増している。

 2020年株式市場が上昇を続けていたことを考慮しても、その増加ぶりは異常である。今回金融当局では詳しく調べて対策を講じようとしている。調査の結果次第では、韓国の有名芸能人の名誉に汚点を残すことになりそうだ。事件の波紋が広がっていて、当局も捜査に取りかかった。

 人間の欲望が渦巻く株式市場は、市場の要となっている反面、株式市場にはこのような副作用もつきものである。

(了)

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