2024年11月24日( 日 )

半導体に次ぐ韓国成長エンジンか、バイオ医薬(後)

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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏

医薬品 イメージ    サムスンの2代目会長は半導体でサムスンが世界的な企業になるように成長させたが、3代目の現会長はバイオ産業に力を入れている。世界最大のバイオシミラーの生産拠点はサムスンバイオロジックスである。

 韓国の製薬会社は新薬開発において世界的な製薬会社と肩を並べるような存在ではなかった。新薬の開発に15年くらいの長い歳月と、数千億円という莫大な資金が必要であるため、韓国の製薬会社のレベルでは、手に負えない状況であった。名称は製薬会社であるものの、韓国の製薬会社は、問屋に毛の生えたような組織であったことも事実であった。

 莫大な資金をかけても、ヒット商品がなかなか生まれない世界的な状況のなか、世界の製薬会社は低分子医薬品からタンパク質を中心としたバイオ医薬品(抗体医薬品)にシフトするようになった。既存の合成医薬品の場合、臨床実験などを経て新薬開発に成功する確率は5%前後である反面、バイオ医薬品は30%くらいの確率なので、これにシフトするのは当然の流れだったかもしれない。韓国もトレンドに乗ったわけだ。

バイオ医薬品の特徴

 バイオ分野は専門知識がないと、内容を理解するのが難しく、一般人にはどのようなリスクが潜んでいるのかを把握するのが難しい。

 新薬開発の成功を夢見て、資金は集められたものの、臨床試験の第3相で挫折するようなケースもあるので、バイオ分野は一筋縄では行かない。製造業の場合には開発に時間がかかると言っても1,2年で成果が確認できるが、バイオの場合には相当な時間の経過が必要なので、早期の判断もできないという難しさもある。

 そのような状況下でも、資源も何もない韓国では、人材を活用して展開できるバイオ産業こそ、韓国の次の成長エンジンだと考えたようだ。それにバイオ産業は装置産業で、半導体産業と似ている側面も多いようだ。アメリカ留学をし、英語も堪能で、アメリカのバイオ革命を目の当たりにした人たちを中心に、韓国バイオベンチャーは育成された。

 ベンチャー企業が技術開発をしたら、ある段階で大手製薬会社がその技術を買収し、それを育てていくのが産業の仕組みである。すでに、韓国のベンチャー企業が技術を売って稼ぐロイヤルティは年間4,000億円を上回っている。

 しかし、日本の経団連でも、日本のバイオ戦略を発表している。遅まきながら日本でもバイオ産業の重要性に気づいたようだ。韓国も現在の成果を出すまでに、10年以上の先行投資があった。バイオ産業は時間をかけて育成する必要のある産業である。

 韓国のバイオベンチャーは米国ばかり目を向けてビジネスをやってきたが、今後日韓が力を合わせることによって展開できる事業も多いだろう。とくに米国の製薬会社を中心に技術の販売をしてきたが、今後バイオ分野において日韓の協力はとても有効かもしれない。韓国の有望な中小企業が開発した技術を日本の大手製薬会社が世界に展開する構図が誕生するかもしれない。

(了)

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