セブン&アイHDの井阪隆一社長はシタタカ(前)
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解任騒動を2度切り抜けたつわもの
流通大手セブン&アイ・ホールディングス(HD)の株主総会が5月25日、東京都内の本社で開かれ、井阪隆一社長ら会社が提案した全15人の取締役選任案が賛成多数で可決された。井阪氏は経営方針をめぐる考え方の違いから「物言う株主(アクティビスト)」の米投資会社バリューアクト・キャピタルから退任を迫られていたが、株主の信任を得て続投が決まった。解任を切り抜けたのは2回目だ。
大幅に下がると見られていた
井阪社長の賛成率は76%と高かった井阪隆一社長の再任にどのくらいの票が集まるかが焦点だった。総会後にセブン&アイが公表した「臨時報告書」によると、井阪氏の取締役選任の賛成率は76.36%(前年は94.36%)。井阪氏とともに退任を求められていた後藤克弘副社長は74.89%(同96.10%)、会社提案の社外取締役3人は60%台。他の10人の賛成率は、いずれも97~98%だった。
「物言う株主」のバリューアクトは井阪氏らに代わる取締役として独自に弁護士ら4人の選任案の株主提案を行ったが、賛成率は25~34%にとどまり否決された。
バリューアクトの「隠し球」は
創業家の伊藤専務の暫定社長バリューアクトは「隠し球」を用意していた。バリューアクトのパートナーで日本投資責任者、デイビッド・ロバート・ヘイル氏は産経新聞(5月23日付)などメディアとのインタビューに応じ、株主提案が成功した場合、後任の暫定社長として創業家出身の伊藤順朗専務執行役員を推す考えを明らかにした。創業家を表に出すことで、バリューアクトへの反発を和らげる狙いがある。伊藤順朗氏の賛成率は97.60%と高かった。
セブン&アイの株式は23年2月期末時点で、ファンドなど海外投資家が33.0%を保有。今回は米議決権行使助言会社2社がバリューアクトの提案に賛成を推奨し、井阪氏らの賛成率は大幅に下がると予想されていた。
だが、予測は大幅に外れた。ほかの保有比率は、日本の金融機関が32.7%、証券会社など金融商品取引業者が8.6%、その他の企業が14.7%、個人らが11.0%。井阪氏らの取締役選任が得た数をみると、これらのほとんどが賛成票を投じたことになる。
日本の株主は井阪氏の経営手腕に不満はあっても、「物言う株主」に経営を壟断された東芝の二の舞になることを避けるために消極的な賛成をしたのだろう。井阪氏はバリューアクトによる追い落としから逃げ切った。
井坂氏は突き付けられた解任を2回乗り切った
井阪氏が突き付けられた解任を乗り切ったのは、今回で2度目だ。井阪氏は1957年10月4日、東京生まれの65歳。父親・井阪健一氏は、野村證券副社長、東京証券取引所副理事長を務めた証券界の重鎮。
都立駒場高校、青山学院大学法学部を卒業。80年、コンビニの生みの親、鈴木敏文氏が率いるセブン-イレブン・ジャパンに入社。商品開発部門を歩き、2009年5月に社長執行責任者(COO)に昇格した。そして、カリスマ経営者の鈴木敏文氏(現・名誉顧問)との対立を経て、16年5月、グループトップのセブン&アイHDの社長の座を射止めた。
セブン-イレブン社長・井阪氏を
退任させる人事案が否決16年4月7日はセブン&アイ会長だった鈴木敏文氏にとって、長い1日となった。東京・四谷の本社9階会議室で始まった取締役会で、鈴木氏の意を受けた社長・村田紀敏氏が、中核のコンビニ、セブン-イレブン社長・井阪氏を退任させ、後任に鈴木氏の側近の副社長、古屋一樹氏を昇格させる人事案を提案した。
賛成7票、反対6票、白票2票──。過半の賛成を得ることが成立の条件であるため、否決された。鈴木氏はグループの全役職を退くことを決めた。その後に開かれた退任会見で、鈴木氏は「社内の役員から反対票が出るようだったら、私はもう信任されていないと考えていた」と述べた。
(つづく)
【森村 和男】
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