とどまることのない変化に直面する水産業 消費者のニーズに合わせて挑戦し続ける
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KOGAホールディングス(株)
先が見通せない水産業でどう生きるか
変化は企業の種類、規模、時代を問わず訪れる。コロナ禍、脱炭素化の推進、ウクライナ戦争などもあり、先行きは不透明感を増す。そんななか、水産関連事業でその積極経営が注目されるのがKOGAグループだ。父が鮮魚商をしていた古賀善敏代表取締役社長は幼いころから活気あふれる魚市場の雰囲気が好きで、ごく自然に後を継いだ。KOGAコーポレーション(旧・古賀鮮魚店)は1971年に仲卸権を取得、以後スーパーマーケット、ディスカウントチェーンを中心に複数の店舗展開を始めた。
古賀代表は2011年に就任後、新規事業に積極的に取り組んでいる。背景には鮮魚販売への危機意識がある。20世紀後半から食の洋風化が進み、1980年前後を境に魚離れが始まった。総務省家計支出調査によると2006年には魚の年間消費量は肉のそれが下回るようになる。同年の一世帯あたりの年間の魚の消費量は32.8kgで、現在は23kgを割り込もうかとしている。消費額が並行して低下しているわけではないにせよ、漁獲量の減少、価格上昇や若い世代の魚離れなど、将来は明るいとはいえない。
20年6月から施行された卸売市場法による流通形態の変化も危機の1つだ。生産―卸―仲買という流通業の役割分担に関する規制が大きく緩和され、産地と消費が卸を通さず近づくようになった。古賀代表は「かつての掟破りが普通になった」という。規制緩和により、品質、鮮度、価格をめぐる競争が格段に厳しくなった。産地開拓と物流がキーポイントとなる。
出店余地の減少により出店先の確保も厳しく、大型小売店舗は都心・地方を問わず苦慮している。少子化と高齢化が進行し、オーバーストアも加わる厳しい商環境では、個人の工夫と頑張りだけでは解決できない。企業の売上高・利益は伸び悩み、競争力も低下する。求められるのは新たな挑戦だが、資金計画と先見性が必要だ。古賀代表は「チャンスの女神にはつかめる後ろ髪がない」という想いのもと、社内で粘り強く説得し、金融機関に新規事業計画を提示して融資を取り付けてきた。今後も成長のための新規事業やM&Aに積極的に取り組む。
人財に対する思い
小売・飲食業は雰囲気、味やサービスレベルがお客に直接伝わる業種であり、その評価がリピーターという常得意づくりにつながる。しかし、若い世代には人と濃密に接触する仕事を嫌う人も多いとされ、飲食、小売業の経営者にとって、人材確保は大きな頭痛の種だ。
古賀代表はサービス業で顧客満足を実行するには、親切心と笑顔という資質が必要だと強調する。加えてトラブルから逃げずに取り組む誠意もいる。現在注目しているのが流暢な日本語を話し、やる気に満ちたハングリー精神をもつパキスタンやネパールなどアジアの若者だ。彼らはサービス業に必要な資質を色濃くもっており、何より仕事に対する姿勢が前向きだと感じており、単なる人手と考えず、管理職へ登用することが今後の事業展開には欠かせないという。
グランピングで新たな需要に対応
飲食、小売のインバウンド需要も注目される。個人旅行客はSNSをフルに利用し旅行計画を立てる傾向があり、意外な場所や滞在スタイルなどが注目されることもある。また、消費の中心がモノからコトへといわれるようになって久しい。そうした流れを取り組むことも飲食、小売業が取り組むべきテーマだ。
古賀代表は自然をより身近にするグランピングというキャンプスタイルのトキ消費レジャーに取り組んでいる。テント、食材や調理用具の準備が不要で手軽に自然を満喫できる。BBQやアウトドア体験など非日常をグループで楽しみ、絆を深めるグランピングは友人同士や家族連れに人気だが、企業の福利厚生として社員旅行のトレンドになることが大いに期待できる。
グランピング経営の利点は、日本の国土が四方を海に囲まれ、豊かな山と四季に恵まれていることだ。古賀代表は、立地はいくらでもあり、有望だと意気込む。
東上作戦と物流、調達にも挑戦
コロナは2つの教訓を古賀代表に残した。第1にリスクヘッジ、第2に祖業をより強くサポートするための調達および物流を充実させることの重要性だ。本業に専心するのはもちろん重要だが、それのみに傾注するのはベストな選択ではないという。本業に執着するあまり新たな事業に本格的に注力しなかった大手総合スーパーは姿を消した。生き残ったイオンとセブン&アイも祖業での利益は微々たるものだ。
今回の新型コロナの飲食部門への影響は古賀代表の予想を超えた。カバーしたのが祖業のテナント事業だ。ただ従来型の経営では安泰とはいえない。顧客により良い品質提供を考えるとさらなる調達と物流のレベルアップが欠かせない。そのための関連事業M&Aに加えて関東に複数の拠点をつくった。東西南北、国の内外を見ながら今後の食の提供を幅広い視点で考えるということだ。
先代から受け継いだときには年商6億円であったが、約10年という短期間で60億円にまで伸ばし、その中身も大きく変えた。現在は祖業が売上高に占める割合は約70%だ。周辺事業の拡大はあくまで本業を補うためという原則は変わらない。いくら魚の消費環境が変わるといっても、その重要性は不変だ。
最近、上海や北京の高質飲食店では活魚を使った刺身が提供されるようになっている。同時にシンガポールやタイなど海鮮料理店では活締めと呼ばれる方法で死後硬直が始まる時間を遅らせた鮮魚を日本から輸入する店が増えているという。これも観光での来日経験とSNSの影響の結果だろう。時代は大きく変わりつつある。常に現場を注視していないと大変化の兆しは把握できないと古賀代表は考え、現場および現物観察も欠かせない。
時々視察するニューヨークには観光客で賑わうシーフードレストランがある。サンフランシスコのフィッシャーマンズ・ワーフも同じだ。そこにあるような活気に満ちた楽しいシーフードレストランに着眼し、そんなスタイルにも思いを馳せる古賀代表の夢は大きい。
<COMPANY INFORMATION>
代 表:古賀 善敏
所在地:福岡県行橋市宮市町5-24
ハイライフサクセス1F
設 立:1986年3月((株)古賀商店)
2016年9月
(KOGAホールディングス(株))
資本金:1,000万円
TEL:0930-22-0303
URL:https://koga-group.jp<RECRUIT>
募集職種:鮮魚加工
飲食ホールキッチンスタッフ
応募資格:未経験者・経験者優遇
採用実績:2022年度/4人
採用予定:5人
問合せ先:0930-22-0303
ks_jinji@koga-group.jp
採用担当:人事課 入江
URL :https://www.baitoru.com/op470607/
<プロフィール>
古賀 善敏(こが・よしとし)
1964年9月、福岡県生まれ。福岡県立行橋高等学校卒。大手DS鮮魚部を経て、父親の経営する古賀商店の跡を継ぐ。2011年に代表取締役就任。主力の鮮魚小売で19店舗のSM出店、飲食では磯丸水産FCを5店舗運営中。21年にグランドーム福岡ふくつをオープンしグランピング事業を開始するなど、新規事業にも意欲を燃やす。法人名
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