「2024年問題」労務環境改善を粘り強く交渉
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九州鉄筋工事業団体連合会 会 長
福岡県鉄筋事業協同組合 理事長
宮村 博良 氏足並みそろわぬ実態調査
──九州鉄筋工事業団体連合会(九鉄連)および(公社)全国鉄筋工事業協会(全鉄筋)としての現在の取り組みをお聞かせください。
宮村 2024年4月から建設業にも適用される時間外労働条件の上限適用は、鉄筋業界だけでなく、建設業界全体の大きな問題です。
今年6月に上部団体の(公社)全国鉄筋工事業協会(全鉄筋)で第12回(通期38回)社員総会が開催され、任期満了にともなう役員改選では、岩田正吾会長と新妻尚祐副会長が再任され、飯島勉氏(愛知鉄筋業協同組合・理事長)と私が新たに副会長を拝命いたしました。
総会の冒頭、岩田会長が「建設業界は大きな転換期を迎えている。我々は職人を雇用し育成していく。価格(受注単価)を下げるブローカー的な行為をやめさせなければならない。また、職人にきちんと賃金を払うことをコミットしなければならない」と、新たな取り組みへの結束を力強く呼びかけました。来賓挨拶では国土交通省の不動産・建設経済局長・長橋和久氏から、単価(労務費)改正が職人の賃金アップにつながる好循環の必要性が語られました。
しかし、残念ながら組合員のなかには、職人の雇用がまったくできないところや、元請と労務単価交渉ができないところもあり、足並みがそろっていないのが現状です。なかには、自分の代で事業を終えてもいい、とあきらめているように感じる企業も少なくないように見受けられました。非常に情けないことです。
今年の初めには、社会保険加入率や日給月給と月給制の割合を調べることを岩田会長に提案し、九鉄連で進めています。22年3月に国交省は公共事業労務費調査結果(21年10月調査)を公表しました。調査によると、鉄筋工における企業の社会保険ほかすべての保険の加入率は100%。労働者の社会保険加入率は94%、雇用保険は95%、健康保険および厚生年金保険は96%という非常に高い数字が示されています。しかし、それは元請や一次下請業者に限られたことで、二次下請、三次下請はそうではないと思います。非加入の会社は労務単価を安く抑えることができ、正常な受注単価競争ができていない状況や一人親方問題にもつながっています。
とくに、所得の面で考えると、週休二日制は大きな問題です。月給制であれば所得に変化はありませんが、日給月給制となると職人の所得が下がります。となると、ほかの現場に行ってでも働こうとするでしょう。福岡県内で見ると比較的月給制の会社が多く見られますが、他県では日給月給制の会社が多いと聞いています。
これらのデータを把握しなければ前には進めないと私は考えていますが、実際にアンケートに答えた企業は、対象先の半分に満たないものです。それは、社会保険などの保険未加入や日給月給制であるために、答えることができないためだと思います。
適正価格受注で、労務環境改善
──「2024年問題」への対応をお聞かせください。
宮村 解決策の1つは、職人を増やすことで各職人の残業時間を抑えることです。しかし、現状の所得水準では入職希望者がいなくても不思議ではありません。そのためにも、適正価格の実現が欠かせないのです。
22年10月、(一社)建設産業専門団体連合会(岩田会長)では建設キャリアアップシステム(CCUS)評価基準に合わせて、会員10団体が建設技能者向けに4段階の最低年収の目安を提示しました。この最低年収を確保するには、いくらで請負契約をしなければならないか、発注者や元請、国民に認識してもらうのが狙いです。最低年収を担保できる請負単価を発注者に納得してもらうのが重要なのです。請負単価の適正価格の実現を目指し、準大手以上のゼネコンの理解を得るため訪問しているところです。
職人不足を解決することは、最終的には元請であるゼネコンのためでもあるのです。若手職人が入らない現状のままでは、ますます職人不足が加速し、現場に職人を送ることができなくなる可能性も出てくるでしょう。放置しても20年後、30年後には労務単価が上がってくると思いますが、どれだけの鉄筋工事業者がそれまで耐えられるでしょうか。
建設業への働き方改革の適用が間近にせまった今こそ、業界内の改革が必要です。なかなか組合員が一枚岩にはなっていませんが、我々があきらめることなく、粘り強く業界全体の労務改善に向けて取り組んでまいります。
【内山 義之】
<プロフィール>
宮村 博良(みやむら・ひろよし)
熊本県生まれ。19歳で鉄筋工業界に入職し、1984年6月、鉄筋工事の請負施工を目的に創業。87年2月、(有)宮村鉄筋工業(現・(株)宮村鉄筋工業)を設立。2019年12月に九州鉄筋工事業団体連合会会長に就任。現在3期目を務める。23年6月には全国鉄筋工事業協会の副会長に就任。月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?
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