2024年10月05日( 土 )

半導体製造に欠かせない希少なガス(前)

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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏

「希少なガス」(希ガス)とは

半導体 イメージ    希ガスはアルゴンを除いて地球の大気中にPPM(100万分の1)レベルでしか存在しない。そのため空気中から希ガスを取り出すのは大変難しく、人工的につくり出すことも不可能なので、希ガスまたはレアガスと呼ばれている。希ガスの代表的なものにはヘリウム(He)、 ネオン(Ne)、 クリプトン(Kr)、 キセノン(Xe)、 などがある。半導体集積回路におけるパターンを加工するには「エキシマレーザー」というのが使われるが、そのレーザー光を出すためには、内部にガスを入れる必要がある。ネオンはその際に使われるガスの1つで、空気中に0.00182%しか含まれていない。ネオンはヘリウムと混合されてレーザーに使われているが、混合気体に放電すると励起したヘリウムがネオンに衝突し、連鎖衝突によってネオンから強い紫外領域の光が発生する。プレゼンする際のレーザーポインター、その他に医療用、光学ディスクなどにレーザーは利用されている。また、キセノンとクリプトンは3D NANDフラッシュのエッチング工程で使われていて、3D NANDの技術が高度化されるにつれて、その需要は爆発的に増えている。

 もともと希ガスは10数年前までは、電球、医療、宇宙航空などの特定分野にしか使われておらず、関連市場はそれほど大きくなかった。ところが、希ガスはほかの物質となかなか反応しない性質をもっていて、その性質を活かせる半導体産業などの最先端産業を中心に、需要が急速に伸びている状況である。希ガスは空気中に極微量で存在するため取り出すのが極めて難しく、生産効率が悪く、莫大なコストがかかる。希ガスを取り出す方法としては、空気中に含まれる極微量の成分を分留する方法を取るが、空気から成分を取り出す際に規模の大きなASU(空気分離装置)がなければ、十分な希ガスを製造することできない。その結果、希ガスの製造拠点は実質一部の国に限られている。そのため、希ガスはASUによってまず酸素や窒素を除去され、その副産物から希ガスは生産される。ASUの生産能力は1日1,500t以上でなければ、希ガスはそれほど生産できず、採算が合わないという。

 また、その製造拠点がロシアやウクライナに多くあるのは歴史が関連している。ロシアはミサイルや衛星からの攻撃を防衛するのに有用なレーザー兵器をつくるために、希ガスの需要があると見込んで、すべてのASUでネオンやクリプトン、キセノンを分離できるようにし、分離したこれらのガスを精製する設備もいくつか保有していた。それがロシアに希ガスの設備が集中している理由である。トレンドフォースによると、希ガスの世界市場規模は2027年まで126億2,000万ドルになることが予想され、年平均7.6%の成長が見込まれている。

(つづく)

(後)

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