2024年12月23日( 月 )

車載電池の有望な材料「リチウム」の争奪戦(前)

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日韓ビジネスコンサルタント
劉明鎬 氏

脱酸素社会の実現に向けてリチウム需要が急増

 「リチウム」は世界で最も軽い金属で、白色であることから“白いダイヤモンド”とも呼ばれている。電池に最適な材料として認知されているリチウムだが、電池が普及する前までは、リチウムは耐熱ガラスやセラミックの材料として主に使われていた。

 ところが、リチウムイオン電池は軽く、大量のエネルギーを取り出せるメリットがあり、車載電池の材料として採用され、その需要が爆発的に伸びている。リチウムイオン電池を世界で最初に量産化したのは日本のソニーで1991年度である。

 その後、リチウムイオン電池は小型・軽量化され、パソコンや携帯電話などに広く活用されるようになった。また、EVが本格的に普及するにつれて、リチウムは電気自動車などの充電式電池の材料として利用が増え、需要が急増している。

 リチウム需要の急増に、メキシコはリチウム鉱山を国有化し、インドネシアも主要鉱物を輸出規制の対象にする措置を発表し、世界各国はリチウムやニッケルなどの鉱物資源を戦略物資化する動きを見せている。

 市場調査機関の予測によると、リチウムの需要は2021年の50万トンから2030年には200万トンに増加するという。リチウム需要の急増で、リチウムの供給が需要に追いつかなくなり、車載電池の価格が高騰するかもしれない。

 リチウム価格は世界的な景気低迷の影響を受けて、現在は価格が下がっているものの、数年前までは価格がずっと高騰していた。そのため、電池の価格高騰がEV普及の足かせになるのではないかと一部の専門家は懸念している。このようにリチウムは現在世界で最も注目を集めている鉱物の1つである。

リチウムはどこに使われるのか

EV自動車 イメージ    今後最も成長が予想されている産業の1つがEVであるが、EVが普及すればするほど、車載電池の需要が急増するのはいうまでもない。そこで、電池のコア材料であるリチウムの確保をめぐって、各国の電池メーカーや自動車メーカーなどが血眼になっている。

 予備知識としてリチウムイオン電池の仕組みについてみてみよう。リチウムイオン電池は充電すると、負極にイオンが貯められる。そのイオンが正極に移動することによって電気が放電され、その電気が利用される。電池の構成要素のなかで、正極材は電池の容量と寿命、安定性を決定するコア材料である。

 リチウムは正極材の混合材料のなかで、割合が一番高い材料である。スマホにもリチウムは入っているが、その量は30g程度に過ぎない。ところが、EVになると、必要とするリチウムの量は30kgから最大で60kgである。車載電池はスマホに比べ、一気に1,000倍ほど多くのリチウムを必要とする。

(つづく)

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