2024年12月23日( 月 )

車載電池の有望な材料「リチウム」の争奪戦(後)

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日韓ビジネスコンサルタント
劉明鎬 氏

リチウムはどのように生産されるのか

EV自動車 イメージ    リチウムは鉱石から伝統的な採掘方法によって採掘される(hard rock)生産方法と、塩湖の地下で採掘する2種類の方法がある。リチウム鉱石のリチウム含量は1~2%に過ぎず、98%はほかの鉱物である。そして、リチウム濃度が6%になるまで濃度を高めた後、近郊の工場に運び、不純物を除いて最終製品である炭酸リチウムや水酸化リチウムを製造する。

 韓国の場合、リチウムは全量海外からの輸入に頼っている。とくに中国への依存度が高く、それが問題となっている。中国がリチウムを戦略物資化すると、韓国はその被害や影響をもろに受けることになるのだ。そのため、韓国もリチウムの8割が埋蔵されている南米に関心をもたざるを得なくなった。

 全世界のリチウムの約6割は南米の塩湖の下に潜んでいると見られている。米地質調査所によると、塩湖が点在するボリビア、アタカマ塩湖が位置するチリ、アルゼンチンの国境地帯は「リチウムトライアングル」と呼ばれ、世界の埋蔵量のおよそ6割が集中しているという。

 塩湖というが、湖と言っても表面に水がある場所は少なく、リチウムが溶け出した大量の地下水が塩湖の下に眠っているのだ。その地下水は組み上げられ、広大な人工池にためられる。その後、約1年かけて天日で水分を蒸発させて、リチウムを濃縮する。

 その後、精製工場で余分な物質を取り除く工程を経て、リチウムになる。加工されたリチウムの約50%は炭酸リチウムに、約16%が水酸化リチウムになる。炭酸リチウムはリン酸鉄電池に主に使われ、エネルギー密度が高ければ高いほど、水酸化リチウムに使われる。

 リチウムを精製する工場はリチウムを精製する際に水を大量に使うことになるが、環境汚染や毒性物質などが発生することが懸念されるため、先進国では精製工場はなくなり、中国が相当量のリチウムを精製するようになった。

 これが、リチウムの採掘や精製が一部の地域に偏っていることが大きな問題として指摘されている理由だ。米国の半導体規制の対抗措置として中国はリチウム資源を武器化しようとしている。

繰り広げられる争奪戦

 コバルトの場合、世界埋蔵量の6割~7割はコンゴ共和国にある。コンゴ共和国は政治が不安定な国だが、中国は鉄道や道路などインフラを整備する見返りとしてコバルト鉱山の権利を確保している。コンゴのコバルトの9割は中国で精錬されている。

 中国はアフリカだけでなく、世界各地で鉱物の確保に躍起になっている。米国や日本も世界のこのような動きに敏感になっている。日本は総合商社が先頭に立って、レアアースやリチウム鉱山への投資を積極的に行っている。

 一方、韓国の代表的な製鉄企業であるポスコホールディングスは、2010年からグループの未来成長エンジンとして「リチウム」に注目し、2018年に約3,000億ウォンを投資して、アルゼンチンのオムブレムエルト(Hombre Muerto) リチウム塩湖を買収した。

 この塩湖の長所はアルゼンチンの他の塩湖に比べてリチウムの濃度が高い一方、不純物の濃度が相対的に低く、世界最高水準の生産性をもっていることだ。ポスコはこれ以外にもインドネシアやオーストラリアの鉱山などに積極的に投資をしている。

 そこで採掘された鉱物の製錬から電池のリサイクルまで、電池産業の川上から川下までカバーできるようにしている。資源をめぐる各国の激しい争奪船が激しさを増していくのは間違いなさそうだ。

(了)

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