2024年12月23日( 月 )

高島屋ケーキ問題 繰り返されるトップの自爆会見~『常識』を侮るなかれ

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『常識』への対応の仕方

 高島屋のケーキ問題。事態はもう1段階、悪いステージに上がった。

 高島屋の横山和久・代表取締役専務営業本部長が27日、会見を行った。会見のなかで横山氏は、本件について消費者に対する責任はすべて高島屋にあることを認め、返金や商品交換に応じるとした一方で、原因の特定は不可能と結論付けた。問題発覚からわずか4日にしてはあまりにも早すぎる判断との印象を消費者に与えた会見だった。

 会見によると、冷凍ケーキは昨年も2,831個を販売した。今年は2,879個販売し、26日時時点で807件の破損を確認したとしている。また、今年はイチゴの入荷が遅れたため、ケーキの凍結時間を、昨年は2週間かけていたのを今回は20~25時間と大幅に短縮していたことも明らかにした。

 『常識』的に考えて、原因はそれだ。凍結時間を短縮したことによって、冷凍庫内の配置によってケーキの凍結にムラがあったことが原因に違いない。ところが、横山氏は当日と同じ状況で再現実験を行うことは難しいとして、「原因をピンポイントで特定することは不可能」と語り、今後、さらなる原因究明の調査も行わないという。

 高島屋としては早急に本件の幕引きを図りたい考えがあったのか分からない。今日明日に冷凍おせちが届くという消費者も少なくないであろうこの時分に、あまりにも拙速な高島屋の幕引き会見は、問題をもう1つ上のステージにあげてしまった。

危機管理のステージ

 潰れたケーキを見たときは、購入者はもちろん怒っただろう。それをSNSやニュースで見た野次馬も「これはひどい」と共感した。しかし、これはあくまでも製造上のミスだ。

 なぜ横山氏が、「凍結時間を短くしたことが原因であると思われる。早急な原因確定は難しいが、時間をかけて原因究明につくす」といえなかったのか不思議だ。

 上記で、『常識』と書いたが、もちろん常識により正しい判断ができるとは限らない。むしろ盲目的で無反省な常識的判断は誤った結論を導く場合すらある。しかし、『常識』を盾に厳しいバッシングが浴びせられる昨今、高島屋の会見は常識的な疑問に答える姿勢を放棄したという印象を与えた。一般消費者が顧客であり、ブランドが命の百貨店『高島屋』が、なぜこのようなスタンスで会見に臨んだのか、常識的疑問はますます膨らむ事態となった。

 筆者は今回の高島屋の会見が完全な失敗だったと断じるつもりはない。製造上のミスの問題を、会見で別の問題に引き上げてしまったように、今後の対応いかんでは軟着陸ができるかもしれない。それほど世論への印象を左右する謝罪会見は、今の時代大きな影響力をもっている。

 だが、状況は良くない。ケーキの製造と冷凍を受託した(株)ウィンズ・アーク(本社:埼玉県羽生市、小宮紀行代表)の対応は輪をかけてお粗末で、某テレビ局の取材班が製造元を訪ねたところ、責任者と思われる人物の対応の悪い音声がニュースで流れてしまった。

 図らずも、今回のトップ会見によって、もう1つ上の会社の危機管理問題をぶち上げた高島屋。これをうまく切り抜けることができるかどうか、年明け以降も注目の話題となる。

【寺村朋輝】

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