2024年08月01日( 木 )

福岡・主要5河川と都市排水の整備に「流域治水」(中)

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河川整備が順調に進む、
福岡市内の主要5河川(つづき)

 福岡市内を流れる主要5河川のそれぞれの河川整備状況などは、以下の通り。

多々良川

多々良川
多々良川

 多々良川は、砥石山(宇美町、飯塚市)を水源とし、上流域において支川・鳴渕川を合わせて篠栗町を貫流し、中流域で支川・猪野川、下流域で支川・宇美川と合流して博多湾に注ぐ、幹川流路延長約17.8km、流域面積約171.8㎞2の二級河川である。本川に直接流入する一次支川は宇美川、猪野川、鳴渕川の3河川で、一次支川に流入する二次支川、二次支川流入の三次支川を合わせて、14河川で多々良川水系を構成している。

 流域では過去、1953年、63年、73年、99年、03年、09年に浸水被害が発生しており、これまで都市河川改修事業、災害復旧事業、鉱害復旧事業、開発就労事業、局部改良事業などで改修を実施してきた。多々良川本川では、河口からJR香椎線までの区間を83年度から97年度まで広域河川改修事業で、98年度からは広域基幹河川改修事業で、10年度からは社会資本整備総合交付金で、19年度からは大規模特定河川事業で整備を実施。さらに、今後も洪水に対する安全性の向上を目指して治水施設の整備を進めていく必要があるとして、21年9月に「多々良川水系河川整備計画」を策定し、河川整備事業を継続している。

 同河川整備計画の対象となる区間は多々良川水系における県管理の14河川で、対象期間は計画策定時から概ね30年間。このうち、河川工事の施行区間は多々良川の河口~上川原堰までの約6.8kmで、築堤や河道の拡幅、掘削、井堰や橋梁の改築によって整備計画目標流量を目標水位以下で流下できる対策を図るとともに、下流部においては高潮対策による高潮堤防の整備を行っていく。

御笠川

御笠川
御笠川

 御笠川は、宝満山(太宰府市、筑紫野市)を水源とし、鷺田川、大佐野川、牛頸川、諸岡川、上牟田川などの支川を合わせて博多湾に注ぐ、幹川流路延長約24km、流域面積約94㎞2の二級河川である。

 御笠川においては、前述したように99年と03年の2度にわたって大規模な氾濫が発生。これを受けて、御笠川では「河川激甚災害対策特別緊急事業(激特事業)」「河川災害復旧等関連緊急事業(復緊事業)」「河川災害復旧助成事業(助成事業)」の3つの災害対策事業を実施した。このうち激特事業では、河口から山田橋までの10.5kmの区間で護岸や掘削、橋梁改築等13橋、堰改築5基などを実施。激特事業の事業費は約404億円で、事業期間は99年度から07年度まで。一方の復緊事業および助成事業では、白鳥橋~都府楼西鉄橋までの3.0kmの区間で、護岸や掘削、橋梁改築2橋、堰改築2基などを実施。事業費は約38億円で、事業期間は03年度から05年度まで。

御笠川河川激甚災害対策特別緊急事業 概要図(提供:福岡県県土整備部河川整備課)
御笠川河川激甚災害対策特別緊急事業 概要図
(提供:福岡県県土整備部河川整備課)

 これらの3つの事業は08年までに完了し、御笠川本川における治水安全度は向上しているものの、09年7月洪水や10年7月洪水、12年7月洪水、14年8月洪水では、支川において家屋浸水被害等が発生。そのため、今後も治水対策を継続的に進めていく必要があるとして、15年3月に「御笠川水系河川整備計画」を変更し、概ね30年間で整備を実施していく計画としている。この計画のうち河川工事については、整備目標流量を安全に流下させることを目的として、河床掘削・河道拡幅や分水路等の新規河川管理施設の構築、河川横断構造物の改築などを実施。これにより、河道水位の低下や浸水被害の軽減を図っていくとしている。施行区間は御笠川本川の河口~五条橋までの約17.4kmと、支川・鷺田川の赤岸堰~支川・高尾川の西鉄橋梁下流までの約2.1km。

那珂川

那珂川
那珂川

 那珂川は、福岡県と佐賀県の境にある脊振山を水源とし、佐賀県の大野川と福岡県の梶原川、若久川、薬院新川等の支川を合わせて博多湾に注ぐ幹川流路延長約35km、流域面積約124㎞2の二級河川。福岡市、春日市、那珂川市、佐賀県吉野ヶ里町の3市1町および福岡県と佐賀県の2県にまたがっているが、流域の大部分は福岡県である。

 過去に数度の浸水被害が発生したことのある那珂川だが、近年では09年7月の「平成21年7月中国・九州北部豪雨」で甚大な浸水被害が発生。流域では床上浸水93戸、床下浸水208戸の計301戸が浸水したほか、那珂川町役場(当時)や国道385号の浸水などで、都市機能が著しく低下する事態となった。この浸水被害を受けて、福岡県では10年度より床上浸水対策特別緊急事業に着手。事業費約136億円をかけて10年度から14年度の5年間の事業期間で、灘の川橋~橋本橋の区間14.3kmにおいて河道掘削や護岸工事、築堤工事のほか、堰改築4基、橋梁架替5橋、橋梁補強9橋などを実施。現在は広域河川改修事業で河道掘削等を実施している。

 なお、那珂川においては03年7月に「那珂川水系河川整備計画」を策定。同河川整備計画は整備目標流量(基準地点南大橋760m3/秒)を安全に流下させることを目的として、河床掘削・河道拡幅、ダム建設等を行い、河道水位の低下、浸水被害の軽減を図るもので、対象期間は概ね30年。ダム建設については、洪水調節、新規水道用水の開発、既得取水の安定化および河川環境の保全等のために必要な流量の確保、渇水対策を目的として、「五ケ山ダム」(18年3月竣工、21年1月供用開始)が建設された。

樋井川

樋井川
樋井川

 樋井川は、城南区と南区の区界である油山付近を水源とし、糠塚川、駄ヶ原川、一本松川、七隈川などの支川を合わせて博多湾に注ぐ、幹川流路延長約12.9km、流域面積約29.1㎞2の二級河川である。

 樋井川流域では、流域面積が小さく糠塚川合流点より上流の河床勾配が急勾配であることから水位の上昇が激しく、過去に幾度となく台風や大雨による洪水被害に見舞われてきた経緯がある。近年では09年7月の「平成21年7月中国・九州北部豪雨」で床上浸水172戸、床下浸水238戸の計410戸、浸水面積28.5haの甚大な浸水被害が発生。これを受けて、10年度から14年度の事業期間で事業費約36億円をかけて「樋井川床上浸水対策特別緊急事業」を実施。ふれあい橋から駄ヶ原川合流までの区間5.9kmにおいて、河道掘削や護岸補強などが行われた。

 一方で、14年5月には「樋井川水系河川整備計画」が策定。このうち河川工事では、整備計画の目標流量を安全に流下させることができるよう、河床の掘削や、護岸整備等の河川改修、洪水調節施設の整備、流域対策などによる流出量の抑制を行っている。対象期間は概ね30年。

(つづく)

【坂田憲治】

(前)

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