2024年11月24日( 日 )

人手不足の改善狙い、「担い手3法」が可決成立(3)

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鉄筋業界トップ「法改正で期待」、
適正価格の受注で職人の待遇改善へ

九州鉄筋工事業団体連合会 会長 全国鉄筋工事業協会 副会長 宮村博良(みやむら・ひろよし)    この先、職人不足はますます加速していくでしょう。10年後には鉄筋工事業従事者は4割減ってしまうという試算もありますが、入職希望者数の低迷や職人の高齢化を考えると、私は4割どころではなく減ってしまうのではないかと思っており、非常に危機感を抱いています。

 そうしたなかで今回、改正建設業法が成立したことは、とても喜ばしく思っています。賃金引き上げなどによる労働者の処遇改善や、資材高騰による労務費へのしわ寄せに対する対策などは、これまで団体として何度も提言してきたことです。ようやく法律が成立したことで、標準労務費が定められるほか、労務費へのしわ寄せ防止など、国交省も担い手確保への対応に本気で取り組み出してくれたと感じています。

 しかし一方で、鉄筋業界自体のレベルはまだまだ低いのが現状です。たとえば、今なお日給月給制や、社会保険未加入の企業も多く存在します。社会保険未加入の企業は経費をかけない分、安値受注が可能で、一部の元請企業は安値優先でそこに発注しているような状況があります。全体で見れば、労務単価の引き下げ圧力となっており、適正価格にはまだほど遠いのが現状です。また、資材が高騰した分を労務単価の引き下げにより調整しているケースもあります。

 今回の改正では、元請および下請企業による著しく低い材料等の見積もり・見積もり依頼の禁止や、下請企業による原価割れ契約の禁止が盛り込まれており、非常に期待するところです。職人不足や資材高騰による影響を、元請企業だけでなく発注者にもご理解いただきたいと思っております。

 建設Gメンにも期待しており、鉄筋業界にもどんどん調査にきてほしいと思っています。もちろん、当社や当団体にも、です。なかには、法律に沿いながらも取り組み不足のところもあるでしょう。そこを改善しながら前に進んでいけば、自ずと健全で力のある企業が残っていくはずです。

 これは私の持論ですが、鉄筋工事業界への入職者を増やすためには、所得の大幅アップが何よりも必要です。高齢化により今後は職人不足にさらに拍車がかかっていくことから、本気で職人不足問題に向き合おうとするのならば、若手入職者を急増させていかなければ対応できません。

イメージ    専門工事のなかでも、とび・土工工事や型枠などと違い、我々鉄筋工事はなかなか目に付く仕事ではありません。夏は炎天下のなかで、冬は屋外の寒いなかでの作業になります。しかし、鉄筋工事はビルや橋梁、ダムなど構造物にはなくてはならない重要な業務です。一人前の職人になるにも早くて3~5年はかかるほど、技術や知識を習得しなければなりません。この業界では新卒の採用もここ5、6年ゼロという企業がほとんどです。少子化が進み、さまざまな業種から鉄筋工事を選んでもらうためには、目で見えるかたちでのアピールが本当に必要となります。この改正建設業法成立を機に、業界全体の地位向上につなげていきたいと思います。

九州鉄筋工事業団体連合会 会長
全国鉄筋工事業協会 副会長
宮村博良(みやむら・ひろよし)

(つづく)

【田中直輝】

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