2024年09月17日( 火 )

同業他社はライバルじゃない 自分たちが闘うべき相手は“時代”

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ
法人情報へ

(株)電究社

直塚和知代表 (株)電究社
直塚和知代表

 (株)電究社は今年9月に設立30年周年を迎える。1983年の創業から数えれば、すでに41年の歴史を有する電気設備工事の専門企業だ。「全従業員とその家族の物心両面の幸福を追求し、地域社会の繁栄に貢献すること」。この言葉を経営理念に、順調に業績を伸ばす。業務の幅は広く、ビル・マンション・ホテル・商業施設店舗・各種施設、注文住宅など幅広く手がけている。

イメージするものを確実に仕上げる社員たち

 自分たちが闘う相手は、“時代”。そう語るのは(株)電究社の若きトップ、直塚和知氏だ。社長に就任したのは、ちょうど10年前の2014年。まだ48歳ではあるが、社長として同社の歴史の3分の1を歩んできたことになる。直塚氏は大学で産業デザインを学んだ後、グラフィックデザイナーとしてDTPの最前線で活躍していたが、先代社長の父親から手伝ってくれと言われ、電究社に入社する。

 「『うちも同じものづくりの世界だ。きっと面白いぞ』。その言葉にクリエイティブの新世界を期待して飛び込んでみたもの、実際はあまりにも時代遅れの職場だったことに愕然としました」。設計図面もドラフターを使った手作業、パソコンは3世代以前のものがわずか1台置かれていただけだったという。最先端の機材を駆使していたかつての職場との落差に失望しつつも、「当初は上司から言われるままに動いていました」と当時の自分を振り返る。

 しかし、3年ほど経ったころから直塚氏にはこの仕事の醍醐味が見えてくる。一番大きかったのは、自分の思い描いたイメージをチームで確実に仕上げてくれる現場スタッフたちの存在だ。彼らとの強い仲間意識を感じたことをキッカケに、以前の仕事とは違う面白さを体感していくことになる。

 「何度体験しても緊張する瞬間は、新築物件が完成し照明を点灯する時です。一気に建物全体が明るくなる瞬間に成功を実感するのですが、この喜びは何事にも変えられません」。職場環境が違っても仕事を楽しくできるかは自分次第。当初は心のスイッチを入れることに懸命だったと語る直塚氏だが、本物の電源スイッチを入れることが面白さになったわけだ。

業務のデジタル化がコロナ禍を乗り切る力に

昨年4月に新社屋へ移転 (株)電究社
昨年4月に新社屋へ移転

    もちろん仕事は楽しいことばかりではない。リーマン・ショックでは営業として心底厳しい時期も味わった。九州全県、中国や四国まで飛び回り、赤字覚悟で仕事を取っていた毎日。社長になってからはコロナ禍というまったく予想することもなかった事態に直面する。しかし、ここではDTP時代の経験が生かされたという。

 「業界のなかでいち早くデジタル化を進めていました。だから業務が停滞するということはありませんでした。たとえば現場との図面のやり取りをすべてメールで行うことなど、今では当たり前になったことをすでに15年以上前から実行していましたから、問題なく仕事を進められたわけです」。

 もちろん関係者との接触が制限されてしまったことの弊害はあった。現地でしか得られないリアルな情報、実際に人と会うことでしか感じ取ることのできない機微の情報。これらを得る機会は激減してしまったというが、それはおそらくどの業界、どの企業も同じだ。

世の中の動きを見据え、少しでもその先をいく

 直塚氏が社長になって最初に取り組んだことがある。それは就業規則のつくり直しだ。残業することが当然と思われていた業界において、いち早く交代制を取り入れ休暇が取れる体制に変えた。後に働き方改革ということで法制化されたが、その以前から同社はその体制づくりを準備していたことになる。考えるキッカケは妻から「働き過ぎ」と言われたことだった。「周りの社員のことも考えなさい」というひと言に即座に反応したわけだが、今ではその成果が数字にも表れている。社員の有給休暇取得率は、この業界にあってなんと100%だ。

 冒頭の“時代”と闘うという言葉は、直塚氏が奮闘してきたなかで生み出した経営哲学にほかならない。デジタル化しかり、働き方改革しかり。世の中の動きを捉え、常にその先をいく。これができればどんな荒波がきても対処できるというのだ。そのため、情報収集にはひたすら注力するという直塚氏。常にアンテナを伸ばし、フットワーク軽くさまざまな場所に出ていく。これこそが自身の強みの1つだと語る。

若手が活躍する職場
若手が活躍する職場

    現在の総社員数は12名。20代が4名、30代も同じく4名と若手が活躍する職場だ。昨年4月には社屋を移転し、社内の雰囲気も一新し、空間と光を演出する企業に相応しいオフィスにした。これも手伝って新卒採用も順調だ。社長就任時は売上高約4億円だったものを23年は5億1,000万円に伸ばし、順調な右肩上がりの業績を築いているが、何よりもこの10年間で確実に財務体質の改善を図ってきたことは大きい。

 さて、これから直塚氏は時代とどう向き合い、そして闘っていくのか。常に先を見越して動くと語る同氏らしく、社長就任時から次世代に引き継ぐことを考えているという。さらなる10年後、20年後に電究社がどんな姿を見せてくれるのか、期待しよう。


<COMPANY INFORMATION>
代 表:直塚和知
所在地:福岡市南区寺塚1-16-9
設 立:1994年8月
資本金:1,000万円
TEL:092-511-7773
URL:https://www.denkyusha.co.jp

関連キーワード

関連記事