都市の「余白」再開発(中)
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天神BB&博多Cで魅力的な公開空地が誕生(つづき)
福岡ビル、天神コア、天神ビブレの3棟のビルを1棟へと建て替える大型複合ビル「ONE FUKUOKA BLDG.」(略称:ワンビル/24年12月竣工予定)においても、「創造交差点」をコンセプトとして、さまざまな用途が混ざり合う様子を表現したシンボリックなビル外観に加え、渡辺通側の角地部分にはアートと一体となった大規模な壁面緑化が施された公開空地を整備。また、市役所側の角地部分にシンボルツリーとなる高さ14mのケヤキを植樹するなど、ビル利用者や歩行者が憩える広場・緑化空間を計画している。
さらに「天神ブリッククロス」(25年3月竣工予定)では、明治通りから昭和通りをつなぐ新たな都市計画道路天神通線と一体となったゆとりあるプロムナード(歩行者空間)を整備。プロムナード沿いに常緑並木や、地上から地下までつながる壁面緑化を配置し、来街者が憩い楽しめる空間を創出していくとしている。
博多コネクティッドによる再開発ビルでも、魅力的な公開空地が生まれている。
旧博多スターレーン跡地で再開発が進められた「博多イーストテラス」(22年8月竣工)では、筑紫口中央通りとつながる敷地南側に博多駅周辺地区最大級の広場(公開空地)を整備。四季の変化が楽しめる花や木を植栽し、広場に面してカフェやキッチンカー、ベンチなどを配置することで、来街者やオフィスワーカーが憩い、楽しめる空間をつくり出している。
福岡東総合庁舎敷地有効活用事業となる「コネクトスクエア博多」(24年3月竣工)では、三層ごとに分節した外観デザインが特徴的な建物南側の筑紫口中央通りに広く面して公開空地を整備。また、敷地外周や壁面を利用した緑化計画により、潤いのある歩行空間を創出している。
Park-PFIがトレンドの公共インフラ「都市公園」
このように再開発プロジェクトによる公開空地の確保により、都心部に新たな「余白」が次々と生まれているが、もう1つの「余白」である「都市公園」にも目を向けてみたい。
「都市公園」とは、都市公園法によって設置や管理に関する基準が定められ、国や地方公共団体が設置・管理を行う都市施設であり、公共インフラの1つでもある。「国営公園」と「地方公共団体が設置する都市公園」の2つに大別されるが、一般的に都市公園といえば後者を指すことが多いだろう。後者は用途・目的などによって「街区公園」「近隣公園」「地区公園」「総合公園」「運動公園」「広域公園」などさらに細かく分類されており、都市における人々のレクリエーションの空間としてのほか、良好な都市景観の形成、都市環境の改善、都市の防災性の向上、生物多様性の確保、豊かな地域づくりに資する交流の空間の提供など、多様な機能を有する都市の根幹的な施設としての役割を担っている。
そんな都市公園の整備箇所は23年3月現在で全国11万4,707カ所、総面積は約13万531haに上り、国民1人当たりの都市公園等面積は約10.8m2になる。22年3月現在と比較すると、1年間で箇所数は879カ所増、面積は約447ha増となっており、現在も年々増加している。国土交通省では防災や地域の活性化などの社会的要請に応えるためにも、今後も引き続き都市公園の整備を推進していく意向だ。
ちなみに福岡県全体では箇所数2,852カ所、面積約2,268ha、1人当たり公園面積9.3m2、福岡市では箇所数1,701カ所、面積1,362ha、1人当たり公園面積8.5m2となっており、1人当たり公園面積で見る限りは、県でも福岡市でも全国平均よりは低い水準となっている。
都市公園を「余白」として見ると、民間の公開空地に比べると、公共インフラとしてより公的な役割を期待されている。たとえば、公園として人々の憩いの場、活動や賑わいの受け皿としての役割はもちろんのこと、緑・自然が確保されていることによる環境負荷の低減効果や、良好な景観形成、周辺の居住環境の向上といったような役割などだ。さらに、災害発生時には避難場所や防災拠点としての役割も求められ、都市部におけるオープンスペースとして“空いていること”自体に価値があるとされている。
福岡市の都心部における代表的な都市公園を挙げると、天神エリアでいえば、天神中央公園や警固公園、須崎公園、長浜公園、博多駅周辺エリアでいえば、明治公園や出来町公園、音羽公園、中比恵公園などだろう。いずれも福岡都心におけるオアシス的な存在として、周辺のオフィスワーカーや来街者の憩いの場として活用されるほか、公開空地に比べるとまとまったオープンスペースを生かし、祭りやイベント開催の場としても重宝されている。
そして近年は、そんな都市公園の活用法における新たな潮流としてPark-PFI(公募設置管理制度)が登場。Park-PFIとは簡単にいえば、民間事業者に公園内での事業活動を許可する代わりに、その事業活動で得た収益を用いて公園の整備・管理・運営を任せ、民間活力によって公園の賑わい創出や魅力づくりにつなげていきたいというもので、都市公園に民間の優良な投資を誘導し、公園管理者の財政負担を軽減しつつ、都市公園の質の向上、公園利用者の利便の向上を図ることが期待されている。
本誌でも何度か取り上げてきたが、福岡市では最近、そのPark-PFIを利用した民間活力の活用に積極的で、市内複数の公園でPark-PFIによるリニューアル整備を進めている。なかでも今回取り上げたいのが、博多コネクティッドエリア内にある明治公園だ。
明治公園のPark-PFIでは、東京建物(株)を代表とし、(株)梓設計 九州支社、(株)ランドスケープむら、(株)旭工務店、木下緑化建設(株)で構成されるグループが優先交渉権者に決定。同グループが行った提案では、九州の陸の玄関口である博多駅前に“新たな顔”を創出するとして、公園敷地目いっぱいに広がる立体的・複合的な魅力あふれる空間デザインがなされており、施設内に張りめぐらされた「立体回廊」のほか、屋上部分には「5つの広場」などを配置。樹木と建築とが混然と一体になった新たなランドマークとなっていく計画だ。現在、すでに公園自体が閉鎖されてリニューアル整備が着工しており、今後25年春以降の順次供用開始を予定している。
福岡市では今後もPark-PFIの活用に積極的に取り組んでいく方針で、市内10公園で民間活力導入に向けたサウンディング型市場調査を実施。都心部の公園でいえば音羽公園や中比恵公園が選定されており、今後はこれらの公園でもPark-PFIによるリニューアル整備が進んでいく可能性はある。
(つづく)
【坂田憲治】
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