国交省がマンション管理適正化など成果報告会
-
国土交通省は10月24日、マンションの管理適正化・再生推進事業成果報告会をオンラインで開催した。マンション管理組合をサポートする取り組みと、名古屋市や北九州市などの地方自治体による支援や管理の実態調査など9団体の担当者が、それぞれ約15分で報告。同省住宅局参事官付課長補佐・高野学氏は、「報告会は本年で2回目。課題を抱える管理組合をサポートする取り組みやマンション管理に関する事例収集、分析などを行う取り組みについて発表してもらう」と冒頭にあいさつした。
マンション管理士の継続関与が大事に
(一社)日本マンション管理士会連合会は、高経年マンションの終活支援と小規模マンションの管理・運営についての支援事例について報告した。まず、高経年マンションの終活支援については、合意形成に至るまでの手順を作成。課題解決の取り組みの1つとして、早期売却案と長期延命後の敷地売却案の2つの長期修繕計画案を提示し、「合意形成に丁寧で納得のいく説明と質疑応答が一番だと感じた」とまとめた。
また、小規模マンションの管理・運営支援では、理事会を設けず管理者と監事による少数運営とする管理者方式に対応した管理規約への改正、長期修繕計画の見直しなどを行った。「全国にもかなりあると思うので、マンション管理士が継続した支援を行うのが大事」とし、管理者管理方式を採用することが一案だと結論付けた。
名古屋市は、マンション管理組合への支援の取り組みを報告した。同市は、今後築40年以上のマンションが急増するとしており、2022年にマンション管理適正化条例を策定。管理組合や管理規約がないマンションに対して、助言指導と市から働きかけるプッシュ型支援を行っている。長期修繕計画がないマンションが19%と、全国平均(7%)より高いため、マンション管理士を派遣した計画作成支援が好評だという。また、市の住宅供給公社による無料相談については、セカンドオピニオン的な活用をする組合もあり、リピーターの利用も多いという。再生支援策はセミナー・相談会の実施、再生アドバイザーの派遣、補助金の3施策を開始。課題としては、市全体で建替え機運が低いことなどを挙げた。
埼玉県新座市と東京都板橋区、国立市、滋賀県栗東市では、それぞれ実態調査を報告した。まず新座市は、調査結果を分析した結果、約20%で修繕積立金が不足など、将来における適切な維持管理への懸念があることを確認できたとした。
板橋区の調査では、管理不全兆候のないマンションのうち65%が管理を委託し、管理不全兆候のあるマンションのうち73%が自主管理だったことがわかった。また、「高島平ハイツ」が管理計画認定の第1号となったことで、区内でも注目が集まり、認定取得の相談件数や問い合わせが増加したことなどのプラス効果があったことを報告した。
国立市は、管理組合への調査で防止対策や防犯対策といったソフト面での取り組み事例の少なさや行政が実施している事業などへの認知度が低いことがわかった。これを受けて、市の施策として進捗を把握する具体的な数値目標を設定するとしている。
栗東市では、アンケートの回答者が自身のマンションの管理状態を見直すことに加え、管理計画認定制度の知識の習得ができたと啓発効果があったと報告。管理計画認定の活用に向けたマニュアルを作成し、各管理組合へ配布している。
自主管理・運営のモデルケースに
北九州市は、23年11月から始めている伴走型支援事業の内容と実績について報告した。自主管理率の高い同市において、老朽化した分譲マンションの増加により、管理組合活動の維持が困難になることが懸念されており、管理組合に対して継続的な支援を実施。支援を行った3組合のうち、最大6回の支援を行ったのは管理計画認定取得に向けた支援を行った1組合のみ。また、マンションの終活に向けた支援を行ったマンション(築44年・8階建・24戸、自主管理)に対して、これまで4回実施した。その内容は、1回目で現状把握と目標設定、2回目と3回目で長期修繕計画作成・再生検討の必要性について、住民に向けて説明会を開催した。4回目では、一級建築士を交えて管理組合の「終活」について今後の方針協議だった。
このマンションへの支援の効果分析では、課題が明確になり再生検討に向けた方向性が示され、自主管理を行う管理組合の主体的な取り組みの促進につながったとし、自主的な管理・運営のモデルケースと結論づけた。今後の事業展開としては、現状の把握から、管理不全マンションに対する助言・指導を通じ、各支援事業につないでいく。そのことで、管理不全マンションの管理水準の底上げを行い、管理計画認定件数の拡大を図るとしている。
NPO法人マンションサポートネットは、京都市内のマンション3棟を対象に、解体除却を織り込んだ長期修繕計画を作成した。解体を視野に入れた長期修繕計画を今の管理組合員に理解・共有してもらい、それを引き継ぐ者に伝える“共有のつなぎ”が最も重要と強調。手順について一定のモデル化は可能だとし、今後も研究を続けていくとした。また、第三者管理者の現状や課題などを説明した。
群馬県では、マンション問題に対応してきた県住宅供給公社が県内マンションの実態調査で把握し、3つの課題を抽出。4棟のマンションに対して管理適正化のモデル支援を実施し、延命させる最低限の維持策の提案やこれに加えて管理規約策定・総会開催の支援、リゾートマンションに対しては区分所有者の名簿整備と建物保全の提案を行った。市町村が管理組合と連絡を取れる方法の構築や資産価値を維持するための負担が受け入れやすい提案をどう行うか、などを今後の課題に挙げた。
<プロフィール>
桑島良紀(くわじま・よしのり)
1967年生まれ。早稲田大学卒業後、大和証券入社。退職後、コンビニエンスストア専門紙記者、転職情報誌「type」編集部を経て、約25年間、住宅・不動産の専門紙に勤務。戸建住宅専門紙「住宅産業新聞」編集長、「住宅新報」執行役員編集長を歴任し2024年に退職。明海大学不動産学研究科博士課程に在籍中、工学修士(東京大学)。月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?
福岡のまちに関すること、再開発に関すること、建設・不動産業界に関することなどをテーマにオリジナル記事を執筆いただける方を募集しております。
記事の内容は、インタビュー、エリア紹介、業界の課題、統計情報の分析などです。詳しくは掲載実績をご参照ください。
企画から取材、写真撮影、執筆までできる方を募集しております。また、こちらから内容をオーダーすることもございます。報酬は1記事1万円程度から。現在、業界に身を置いている方や趣味で再開発に興味がある方なども大歓迎です。
ご応募いただける場合は、こちらまで。その際、あらかじめ執筆した記事を添付いただけるとスムーズです。不明点ございましたらお気軽にお問い合わせください。(返信にお時間いただく可能性がございます)関連キーワード
関連記事
2024年11月29日 14:302024年11月28日 12:102024年11月20日 12:302024年11月27日 11:302024年11月26日 15:302024年11月22日 15:302024年11月18日 18:02
最近の人気記事
まちかど風景
- 優良企業を集めた求人サイト
-
Premium Search 求人を探す