太陽光発電の設置率で目標設定 4月から戸建住宅事業者に
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国土交通省と経済産業省は、2025年4月から年間一定規模以上の戸建住宅を供給する事業者に対して設定する「住宅トップランナー基準」を見直す。新たに太陽光発電設備の設置目標を設定。新築注文住宅と新築建売住宅を合わせて、30年度までに太陽光発電の設置割合を60%とする。中間目標として、27年度までに新築注文住宅で87.5%、新築建売住宅で37.5%に引き上げる。年内にも見直し案を公表して一般からの意見募集を行う。事業者に努力義務がある目標値を設定し、22年度で31.4%にとどまっていた新築住宅全体の太陽光発電設置率を高める。
経産省と国交省 基準見直し案
10月29日、総合資源エネルギー調査会「建築物エネルギー消費性能基準等ワーキンググループ」(座長=田辺新一・早大創造理工学部教授)と社会資本整備審議会「建築物エネルギー消費性能基準等小委員会」(委員長=同)の合同会議が、国土交通省内で開催された。合同会議では、事務局が示した住宅トップランナー基準の見直し案を了承。2021年10月に策定された「第6次エネルギー基本計画」では、新築戸建住宅の6割に太陽光発電設備を設置することを掲げていた。住宅トップランナー基準には、太陽光発電設備の設置に関する目標値がなかったため、見直し案では太陽光発電の設置目標を設け、30年度に注文戸建住宅で80%、建売戸建住宅で60%、双方を合わせて供給量の60%を達成するとしている。
住宅の省エネについては、国が目標年度と省エネ基準を超える基準(トップランナー基準)を定めている。対象事業者は、トップランナー基準の達成に対する努力義務が課される。太陽光発電の設置に対する住宅トップランナー基準の対象となるのは、注文戸建住宅で年間300戸以上、建売戸建住宅で年間150戸以上を供給する事業者だ。国は、中小住宅供給事業者も含めた省エネ性能の底上げを図ることを目的としていることがわかる。事業者が目標値に達しない場合、国が事業者に対して勧告や公表、勧告などの対応をすることができるとしている。
現行の住宅トップランナー基準では、断熱性能については外皮基準を採用して省エネ基準への適合を求めている。また、冷暖房や給湯、照明など一次エネルギー消費量基準としては、注文住宅で省エネ基準よりも24年度までに25%削減、建売住宅で20年度までに15%削減を求めている。なお、賃貸アパートや分譲マンション(ともに年間1000戸以上供給)にも住宅トップランナー基準は適用されるが、太陽光発電の設置に関しては当面対象とならない。国土交通省などでは、実施状況を踏まえて対象に加えることも検討するとしている。
国土交通省によると、都心部でビルの影になる狭小地などの太陽光発電の設置が困難な場合を除くと、約8割の新築住宅が対象になると試算。この約8割の住宅を対象に、27年度までの目標値と30年度までの設置の目標値を設定している。
太陽光発電設置が困難な場合は、「北側斜線制限や多雪地帯などといった立地や地域性によって(太陽光発電の)設置が合理的でない」(国土交通省)と仮定している。これに対して、合同会議の委員からは、「設置が困難な場合に該当する住宅を具体的にわかりやすく示すこと」を求める意見があった。国土交通省などはこの意見に同意を示し、具体的な例示を示すことなどを検討するとした。
消費エネルギー最大3割削減へ
政府が太陽光発電の設置を促進するのは、年内にエネルギー基本計画の見直し議論が進んでいることや、開発が進んでいるペロブスカイト太陽電池など、次世代型太陽電池を早期に社会で活用することが背景にある。将来的に次世代型太陽電池についても、住宅トップランナー基準での取り扱いを検討する。
太陽光発電設備の導入状況(22年度)は、建売住宅で8%、注文住宅で58.4%、賃貸アパートで21.3%にとどまっている。30年度の目標である60%と比較すると、注文住宅以外は達成が困難な状況にある。そこで住宅トップランナー制度を活用して、太陽光発電の導入促進を図るため、設置目標値を設定することとした。
国土交通省は、戸建住宅において代表的なモデルを使った太陽光発電設置のメリットを試算した。それによると、年間エネルギー消費量の18.7%を太陽光発電で賄えることに加え、売電によってエネルギー消費量換算で名目上31.0%の削減効果があるとしている。
委員からは、「太陽光発電への一般消費者の関心高く、個人の負担軽減への配慮」を求める意見が挙がった。国土交通省などからは、太陽光発電設備を普及するために、設置や保守のコストをゼロにできるPPAモデルとともに、住宅金融支援機構の住宅ローン「フラット35」の金利優遇などの支援策を示した。これら以外にも太陽光発電の施工に関する情報提供について紹介した。
住宅トップランナー基準見直し案の全体像としては、太陽光発電設置のほか、断熱性能については省エネ基準から強化外皮基準への引き上げ、太陽光発電などの再エネ部分を除いた一次エネルギー消費量基準の強化を予定している。
<プロフィール>
桑島良紀(くわじま・よしのり)
1967年生まれ。早稲田大学卒業後、大和証券入社。退職後、コンビニエンスストア専門紙記者、転職情報誌「type」編集部を経て、約25年間、住宅・不動産の専門紙に勤務。戸建住宅専門紙「住宅産業新聞」編集長、「住宅新報」執行役員編集長を歴任し2024年に退職。明海大学不動産学研究科博士課程に在籍中、工学修士(東京大学)。月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?
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