蜃気楼の如く消えたB案~新国立競技場
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2020年の東京オリンピック・パラリンピックのメインスタジアムとなる新国立競技場は、「木と緑」をテーマにしたA案(大成建設・建築家隈研吾氏)と、B案(竹中工務店・清水建設・大林組と建築家の伊東豊雄氏)が提案されていた。
事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)は22日、設計・施工の公募に応じたA案とB案を審査した結果、A案の採用を決めた。
首相官邸で同日午前開かれた関係閣僚会議(議長・遠藤利明五輪担当相)に、A案採用が報告され、了承された。迷走が続いた競技場の建設問題が決着した。JSCの審査委員会のメンバー7人による採点は、980点満点で、A案が610点、B案が602点。B案は維持管理費の抑制や構造・建築計画においてA案を上回ったが、業務の実施方針や工期短縮の面でA案が高く評価され、それが決め手となったという。
総工費が2,651億円に膨れあがったザハ・ハディド氏の旧デザインが7月に白紙撤回されるなど混迷を深めたが、この決定により遅れていた「大会のシンボル」である建設計画が前に進むことになった。両案とも完成時期は国際オリンピック委員会(IOC)が求める20年1月より早い19年11月。総工費もA案約1,490億円、B案約1,497億円と、政府が設定した上限1,550億円の条件をクリアしており、A案とB案の差はわずか8点だった。
なぜB案は敗れたのだろうか。その敗因は森喜郎東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員長の存在が大きかったといわれる。
森委員長はA案、B案が発表された14日、「外観だけを見ると、B案がいいと思う。いかにもスポーツという雰囲気が出ている」との発言や、A案を「お墓のようだ」との感想を漏らすなどの失言が、B案にとっては大きな失点につながったようだ。安倍首相は会議で「競技場を世界の人々に感動を与えられるメインスタジアムとして、次世代に誇れるレガシー(遺産)にする」と述べたという。
その言葉の裏には、「森さんや小泉さんのおかげで首相になりましたが、今は立場が違います。A案の採用こそがその証です」との言葉が秘められている。
老いてもなお、自民党内に隠然たる影響力を持つといわれる森元首相(78歳)だが、その力もかげりが見えてきており、B案はまさに蜃気楼(森喜郎)の如く消え失せたといえよう。【北山 譲】
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